文/webオートバイ編集部、写真/石神 邦比古
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『バリ伝』の聖地、筑波サーキットでの決断




朝6時。日の出から間もない時間にもかかわらず、筑波サーキット(コース2000)のピットでは、すでに撮影が始まっていました。
現場には、「これから走るぞ!」と言わんばかりに工具やツナギ、ヘルメットがセットされ、バイク王が主人公・巨摩グンの愛車をイメージして製作したCB750Fの姿も。
しかし、ピットに実車が用意されているにもかかわらず、実際にエンジンがかかることはなく、早朝の静かな空気の中でカメラが回っていました。

クリエイティブディレクターの松井一紘さん(株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND
今回筑波サーキットを貸し切りながらあえてバイクを走らせない決断をした理由として、クリエイティブディレクターの松井さんは「走るものをカメラで撮ることはできるけれど、それでは第三者が『新しいバイクが出たよ』と映している映像になってしまう」と語ります。
対象物を見せずに心の中の風景を撮った方がライダーの心とリンクできると考え、「日本画のように『描かずして描く』ことを追求した」とのこと。

今回の裏テーマは「リアリティの追求」です。舞台となった「筑波2000」は、原作第2巻でグンがレースの厳しさを味わった言わば“聖地”。
「スケジュールの都合で最初は筑波1000という案もありました。でもやっぱりここは妥協できないなと思い、うちの制作部が綿密な交渉を重ねて実現できました」と、ロケーションへのこだわりを明かす松井さん。

バイク王・菊田さん
バイク王側の担当・菊田さんは「2月のバリ伝CMがすごく好評だったので、『新バージョンを作るにあたって、同じようなアプローチだと視聴者も面白くない。新しい切り口で広げてほしい』」とサーキットという提案をしたそう。


現場を訪れたアートディレクターのトミタタカシさんも、「抜け感や、コーナーのバイクのタイヤ痕を見るだけで『どういうライディングをしたのかな』と想像できてしまうくらい、痕自体が生き物みたいで、普通に感動しました」と、サーキットの空気に圧倒されたそうです。
アスファルトが主役? 想像力を刺激する「引き算の演出」

松井さんによれば、今回の主役はバイクではなく「サーキットの道やアスファルト」。「ビールなら一番飲みたくなるシズル感が水滴にあるように、バイクのシズル感は道やサーキットにあるのではないか」と考えたそう。
トミタタカシさんも「コピーの”バイク愛”のような感情は、見えるようで見えないものですよね。バイク愛について思うことはバイカーさんによって違うので、あえて実物のバイクを出さないと判断した方が、色々記憶が乗っかっていくではないか」と語ります。

アートディレクターのトミタタカシさん
さらにトミタさんは、「今後はZ世代など新しい層にも『バイクって意外にいいかもね』と伝えていきたい」と語り、既存のファンだけでなく新たな視聴者への広がりも意識しているといいます。
極限まで情報を削ぎ落としたことについて、「足すことが足し算じゃないなと。引いた方がプラスになることがたくさんある」と、映像の余白に込めた想いを明かしてくれました。

松井さんも、「バイクが動いているのを撮ることに集中していたら、全体的な空気感などにこだわれなかったのではないかと思います。1枚1枚が勝負だと思っているので、完成されている絵がこの限られた時間でこだわって撮れるのは非常に大事なことです」と、引き算の演出だからこその成果を振り返ります。
撮影の際には三脚で固定するだけでなく、手持ちで撮影する場面が見られました。
これは「心象風景のリアリティ」を映像の揺れで表現する工夫だそう。

「心象風景を描くということなので、固定か固定に近い方がリアリティが出ると思いました。ですが完全に固定すると心が乗らず、ただの風景に見えてしまう可能性があり、少し揺れている方が、心理的な揺れや感情に近いところにいけるのかな」と松井さん。
後からデジタルで加工するのではなく、撮影段階から計算して実写で作る「チーム・アナログ」を追求しており、第一弾CMでも採用された原画を回転させる手法はもちろん、映像内のテキストすらすべて現物を用意して撮影したそうです。
さらに、漫画作品と実写が自然に繋がる接点を作るため、映像はあえてモノクロを基調として構成。

松井さんはモノクロにした意図について、「有名なIPと実写を組み合わせる手段を取っていますが、分断した世界だと本当に意味がないということにこだわっています。実写とIPが繋がる接点があるのではないかということでモノクロにしました」と解説。
トミタさんも、「モノクロは影も主役になってくるんですよね。影は日回りで当日しか分からないこともあるので、アングルをこっちの方がいいんじゃないかみたいなことは現場でありました」と、現場の光と影を緻密に計算したアナログならではのこだわりを語ってくれました。

そして、今回の「あえてバイクを走らせない」「対象物を見せずに心の中の風景を撮る」という思い切った引き算の演出や、実写と漫画の世界観を繋ぐためのモノクロ表現には、ディレクターの牧鉄馬氏の存在が大きく関わっているそう。
松井さんやトミタさんが元々目指していた「ない世界」の表現について、牧監督から「引いた方がプラスになる」「分断した世界だと意味がない」と明確なビジョンによる提案があり、これによって制作陣の目指す方向性がカチッと定まったといいます。
「サポート役と言いながら、我々の軌道修正をしてくれた」と語るように、実写とIPを違和感なく繋ぎ合わせるためのアイデアは、牧監督との熱い議論の中から生まれたそうです。


また、現場では第一弾のCMでも採用された、原画を回転させる手法を用いた撮影も行われ、コンピューター内での編集に頼らず、地道に撮影する工程に、本物のアナログ感を出す秘訣が垣間見えました。
音へのこだわりと、新たな層へのアプローチ

バイクの姿を極限まで隠す演出で、タイヤ痕や影、揺れる視界を通してライダーの心象風景を描き出す。
前回の「バイク愛と」というメッセージをさらに拡張し、バイクブームを知らないZ世代などにも「バイクって意外にいいかも」と感じさせる新しい見せ方に挑戦した本作。
なお、極限まで「引いた」映像に対し、「音」へのこだわりも並々ならぬものがあります。
映像ではあえてバイクを走らせない「引き算の演出」を採用した一方、CMを彩る「音(エキゾーストノート)」には、異常なほどのこだわりが詰め込まれています。
収録には全日本ロードレース選手権で活躍した加賀山就臣氏が協力し、加賀山氏が経営するカスタムショップ「ライドウィン」のシャーシダイナモを使用。

加賀山加賀山就臣氏とKENZSPORT制作「RG500 ガンマ」
※写真提供:バイク王
使用されたのは、東京モーターサイクルショーのバイク王ブースでお披露目された巨摩グンの愛車を再現した「CB750F」と、埼玉県のKENZSPORTSが製作した「RG500ガンマ」。
特にRG500ガンマは、80年代後半のWGPでケビン・シュワンツがチャンピオンを獲得したペプシカラーのモデルを再現したもので、2ストローク500ccのレーシングチャンバーから放たれる大迫力のサウンドが収録されています。

※写真提供:バイク王
エキゾーストノートの収録は、加賀山氏が担当。走行シーンに応じた絶妙なアクセルワークを再現し、映像には直接映らない「音」の部分にまで、熱量が注ぎ込まれています。
気になる完成した新CMは本日からYouTubeで公開されています。果たしてCBは映像の中に登場するのか? ぜひ下のリンクからご自身の目で確かめてみてください!
バイク王×バリバリ伝説新CMはこちら
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