1932年の誕生以来、伝統を紡いできたロイヤルエンフィールド「ブリット」が、ついに650cc並列2気筒エンジンを獲得した。手描きのピンストライプやピーシューター・サイレンサーなど、往年の意匠を色濃く残しながら力強い走りを手に入れた「ブリット650」の魅力を紹介する。

文:小川 勤 写真:南 孝幸
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ロイヤルエンフィールド「ブリット650」インプレ(小川 勤)

画像: ROYAL ENFIELD BULLET 650 2026年モデル 総排気量:648cc エンジン形式:空冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒 シート高:795mm 車両重量:242kg 価格:98万100円~99万5500円(税込)

ROYAL ENFIELD
BULLET 650
2026年モデル

総排気量:648cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:795mm
車両重量:242kg

価格:98万100円~99万5500円(税込)

クラシック650よりもクラシカルなブリット650

ロイヤルエンフィールドファンの多くが思い描き、憧れるのが、古き良き時代の英国クラシックスタイルである。そのカテゴリーに当てはまる新たなる1台が上陸。それがブリット650だ。650シリーズにはすでにクラシックがあるが、ブリットが加わることでその選択肢はさらに拡大。面白いのは、ブリット650はクラシック650よりもクラシカルなポジションにいることだ。

ブリットの車名は1932年に250、350、500cc単気筒エンジンを搭載したフラッグシップモデルとして初めて採用され、1930〜50年代にマン島TTレースやISDT(インターナショナル・シックスデイ・トライアル) で活躍。ブリットは、そこから途切れることなく続く、ロイヤルエンフィールドが90年以上にわたって育み続けているアイコンである。

近年では現行のブリット350が2023年に登場。350と650シリーズともに、クラシックをベースとするブリットをラインナップする。直感的にクラシックよりもブリットの方がオーセンティックなクラシックスタイルに感じるのは、ここ数年でメーカーがブリットを大切に育んでいることを筆者が理解してきたからかもしれない。ロイヤルエンフィールドの開発陣は、ブリットに高い誇りと敬意を持っているのだ。

また、インドでは親子代々にわたってブリットに乗る一家があったり、ロイヤルエンフィールドのことをブリットカンパニーと呼ぶことがあるほど、ブリットという名前は特別な存在なのだ。

重厚感を醸し出すクラシカルなディテール

ブリット650は、クラシック650、スーパーメテオ650、ショットガン650と共通のクルーザープラットフォームを採用。特にクラシックとはシートやフェンダー、ハンドルなどの意匠が異なるものの、多くの共通パーツを採用する。現代のバイクとしてはプラスチックパーツが極端に少なく、それが重厚感だけでなく高級感を醸し出す。

前輪に19インチ、後輪に18インチを採用する車体は、648ccのバイクとは思えないほど大柄。これが良い佇まいを見せる一方で、引き起こしや取り回し時の挙動は重めで、ここはコツやキャリアが必要となるだろう。

画像1: ロイヤルエンフィールド「ブリット650」インプレ(小川 勤)

エンジンは、深いフィンと大きなクランクケースが特徴的な空冷648ccパラレルツイン。フィンの奥に見える景色が現代のバイクにはない、懐かしさを感じさせる。サイドカバーに寄り添うフレームも妥協せずにデザインされ、クラシカルなフォルムを強調。メッキが美しいピーシューター(豆鉄砲)サイレンサーは、左右2本出しで、左右どちらから見ても絵になりやすい。

空冷648ccツインの鼓動とビートに浸る贅沢

画像2: ロイヤルエンフィールド「ブリット650」インプレ(小川 勤)

乗り味は、クルーザーフォーマットに準じた、ライダーを急かさないおおらかさに溢れている。堂々と、ゆったりとした走りが頼もしい。エンジンの下側にフレームを持たない低重心が生み出すハンドリングはとても素直で、ライダーの操作に正確に反応。

クラシック650と似ているが、ポジションやシートが変わるとフィーリングが変わり、ブリット650らしい乗り味を確立。クラシック650よりも背筋が伸びるようなポジションがブリット650らしさを伝え、この違いは350シリーズにも通じる、クラシックとブリットのキャラクターの違いだ。

270度の位相クランクを採用するエンジンは不等間隔爆発で、それが独特のトルク感と回転が上昇していく際のビート感を両立。スペックを見ると最高出力は47PS。その数値は決して大きくないものの、走り出すとスペックでは語れない趣がある。「数値でなく、ライダーにどのようなフィーリングを伝えるか?」そんな目には見えない感性の作り込みを徹底している。

画像3: ロイヤルエンフィールド「ブリット650」インプレ(小川 勤)

発進した直後に矢継ぎ早にギアを上げ、トルクの立ち上がる回転域で走ると、スロットルを開けた際の、『後輪が路面を掴む=トラクションをライダーが生み出す』空冷の味わいが訪れ、それは理屈抜きの気持ち良さを約束。生命力すら感じさせるその鼓動と音は、近年のエンジンが忘れがちなバイクと密に対話する贅沢な時間を届けてくれる。

高速道路巡航も想像以上に得意で、100km/hはもちろん120km/hも余裕で対応。エンジンの回転が上がった際のストレスが少なく、これは走行距離を伸ばすほどに各部が馴染んで良いフィーリングへと変わっていくこともお伝えしておこう。

90年以上続くブリットにロイヤルエンフィールドの原点を感じる

ブリット650の楽しみは、佇まいにもある。市街地からワインディングを駆ける道中で様々なシーンに溶け込ませてみる。常に絵になるのがブリット650だ。

ディテールに目を向けると、ユニークかつトラディショナルさを感じるのが燃料タンク、サイドカバー、フェンダーにある手書きのラインだ。そのラインは均一ではないものの、世界に同じ物は2つとないディテールとなっており、ロイヤルエンフィールドのクラフトマンシップが宿る部分。

また、メッキパーツを多用しているのもポイント。大きなパーツだけでなく、例えばスイッチボックスやキーシリンダーにも採用。全てをペイントで仕上げればコストは下がるだろう。しかし、ロイヤルエンフィールドはクラシック感と高級感にどこまでもこだわった。

実はブリットの90年以上の歴史の中で、ツインエンジンを搭載したのはブリット650が初となる。ブリット650は、まさに記念すべき1台であり、ブリットのフラッグシップなのである。

画像4: ロイヤルエンフィールド「ブリット650」インプレ(小川 勤)

クラシック650は昔ながらの英国スタイルを現代風に解釈したレトロモダン。ブリット650はブランドの原点を現代風に解釈した特別な存在だ。1901年から続くロイヤルエンフィールドの歴史やイギリスのバイク文化、またブランドがインドに渡ってからの経緯などを知ると、その違いがより鮮明になっていく。

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