新ブランドの立ち上げと新たな市場への挑戦
──一昨年は、新ブランド「SPICERR(スパイサー)」が誕生。第1弾のポケッタブル高圧洗浄機、第2弾のポケッタブルジェットファンはどちらも各種メディアにも取り上げられ、バイク業界を越えたヒット商品となりました。
「ポケッタブル高圧洗浄機は、ある日、スタッフに『オートバイってどう洗ってますか?』と聞かれたんですよ。『普通に家で洗ってる』と答えたけど、外に水道がないし、近所のコイン洗車場はバイク禁止だし、どうすればいいのかと言うんです。『他の洗車場に行けよ』と返しましたが(笑)、後から考えたら、同じことで困っているライダーは多いだろうなと。それで調べてみると、洗車場にあるような一般的な高圧洗浄機は圧力が高すぎて、車体やパーツにダメージを与える可能性があり、オートバイへの使用はNGなんですね。だったら圧力の弱い高圧洗浄機を作ればいいじゃないか、というところからスタートした商品です。見た目の面も従来にない感じにしたかったので、スマートなデザインと、折りたためるコンパクトな形状にもこだわりました」
──リリースされた時、まさに「なぜ今までなかったのだろう」と思いました。
「あのデザインとサイズ感にしたことで、オートバイに乗らない女性にも買っていただける商品になったんですね。当時は家の中で使える高圧洗浄機が珍しかったので、業者を呼ぶほどじゃないけど普通に洗っても落ちない、家庭の汚れ落としにズバッとハマりました。さらにキャンプやサーフィンといった遊びの場で使われたり、スイッチのオン/オフがなく、圧力が弱いので、子供やご年配の方も安心して使えるという、想定していなかったメリットもありました。また、これは手放しで喜べないのですが、2024年の山形県北部豪雨災害で被害に合った町にスパイサーの高圧洗浄機を送ったところ、泥かき後のボランティアさん達が泥を落とすのに非常に役立ったそうです。そしてジェットファンについては、それこそお客さんからの『高圧洗浄機で洗ったものを乾かしたい』という声に応えたものです。同様の商品はすでに多数あったのですが、品質はピンキリで、特に安価なものはすぐに壊れるという声が多かったんですね。なので品質と耐久性を保証できる商品を、うちが作ろうとなりました」
──スパイサーというブランドは、今後どのように展開していく予定ですか?
「洗車から生まれたブランドですので、オートバイに関連がありつつもライフスタイルに役立つ商品を突き詰めていきたいなと。さまざまな挑戦ができると思いますので、いろいろ試しながら、ラインアップを増やしていきたいと思います」
ライダーも嬉しいアイデアを日常に
ライフスタイルブランド「SPICERR」
2024年に誕生した新ブランド「SPICERR(スパイサー)」は、オートバイ乗りが、自身のバイクライフにも使えるアイデアをプラスした、個性的でちょっと気になるアイテムを展開中。オートバイのみならず、車や自転車、アウトドアレジャー、家庭のお掃除からガーデンライフまで幅広いシーンで使える、「ありそうでなかった」お役立ちアイテムが人気となっている。
ポケッタブル高圧洗浄機
SPICERRブランドの第1弾。ポケットサイズで軽量、電源や水栓を必要とせず、毎日気軽に使えるというコンセプトが幅広い層に受け、“ハンディ高圧洗浄機”という新ジャンルを開拓。家電メディアなどの家電企画で3つの賞を受賞した。


ジェットファンシリーズ
2025年11月に登場したSPICERRブランドの第2弾。バイクや車の洗車後の水滴飛ばしだげでなく、家庭のホコリ取り、浮き輪の空気入れ、焚き火の火起こしなど、さまざまなシーンで活用可能で、ジャンボ・ポケッタブル・ミニの3機種を展開。

ジェットファンシリーズは3種類。左から「ミニジェットファン」「ポケッタブルジェットファン」「ジャンボジェットファン」。

洗車後の水滴とばし、スパークプラグ点検前のホコリ飛ばしなど用途は広い。
より良き商品を届けるために挑戦する場所を拡げたい
──では最後に、サイン・ハウスさんとしての今後の展望もお聞かせください。
「僕達はユーザーさんに『買って良かった』、『また買いたい』と思ってもらえる商品を作り続けていかないと、企業として継続できないと思っています。オートバイは趣味の世界でもあり、僕達も含め、オートバイが大好きだから乗ってる方が多いですよね。だから楽しさの面でも、安全性でも、自分たちが使って良いと思えるものを作ることが、ユーザーさんのためにつながるし、これからも自分達が『これ、すげぇだろ!』って自慢できる商品を作っていきたいです。そして同時に、今後は二輪業界と違う業界にも、積極的に展開していきたいと考えています」
──それは例えばどんな業界ですか?
「バイク用に開発したB+COMは、高速走行中など会話をしたり、音を聞くのに適さない環境でも、自然な会話ができ、良い音で音楽を聞くことができますが、2010年からはその通話性能が認められ、高速道路の安全を守るNEXCO中日本をはじめとするハイウェイ・パトロールの通話ツールに正式採用されています。あと面白いところでは、和歌山・奈良・三重の3県合同の林業プロジェクトにもB+COMが使われているんです。というのも林業では、チェーンソーを使って伐採作業をしている間、その半径100m以内に他の作業員は入ってはいけないルールがあるんですね。だから不慮の事故が起きたときに、チェーンソーの作業音と距離の遠さに阻まれ、周囲が気づくまでにかなり時間がかかるそうです。でもB+COMならば、伐採作業中に、100m以上離れた作業員同士で容易にコミュニケーションが取れる。最新モデルの7Xシリーズではオンラインが採用され、通信距離の制限がなくなるので、こうした異業種現場でのB+COMの可能性は、積極的に広げていきたいです」
──初代モデルから追求してきた音質の良さが、活躍する場は多そうですね。
「また、もうひとつ希望をいえば、いままでとは全く異なるジャンルの商品開発に挑戦するのも面白いと考えています。たとえば、世界的フィルムメーカーの富士フイルムさんは、写真フィルム市場の衰退を機に新規事業を立ち上げ、成功を収めていますよね。一般的には、写真フィルムで培ったナノテクノロジー技術を応用した化粧品開発がよく知られていますが、現在の収益の柱は、ナノ技術を活用した医療機器や医薬品を開発する医療分野のB to Bです。もちろん、この話がうちにそのまま当てはまるわけではありませんが、B+COMの初代と最新モデルを比較するとわかるように、商品としての要件も、性能もまったくの別物だし、製造における行程やチェック項目は桁違いに増えています。当然、開発にかかるコストは数倍、数十倍どころか、数百倍にもなる。でもそれはより良き商品をお客さんに届け、しっかりサポートしていくために必要な変化です。だからこそ僕は、二輪業界でやりたいものを作り続けるためには、これまでとは違うジャンルにも挑戦し、いままで知らなかった業界にもうちの商品を知ってもらうことで、会社を成長させることが必要だと考えているんですね。こういうことを言うと、すぐに『二輪商品をやめるんですか』と誤解されてしまうのですが(笑)、まったく違うんですよ。これからも、サインハウスにとってオートバイ商品は変わらずに重要なものですし、もっともっと頑張って良いものを作っていきますから、楽しみにしていただければと思っています」
高品質通話を異なる業種向けに提供している「B+COM for WORK」
B+COMは騒音下でもノイズキャンセルを駆使し、正確なコミュニケーションを取ることが可能。NEXCO東日本・中日本・西日本グルーブの高速道路パトロール隊や、二輪教習所の教習、官公庁、農業、林業など、騒音下でのコミュニケーションが必要なさまざまな業種で、トランシーバー(無線機)の代わり役として導入されています。


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