※本企画は『Heritage&Legends』2026年5号に掲載された記事を再編集したものです。
ドラッグレース参加は取り立てて難しいことではない?!
日本国内でなら1/4マイル(約402m)、あるいは1/8マイル(約201m)の直線をいかに速く走りきるかを競うドラッグレース(※ドラッグレースの本場・アメリカでは近年、特にトップフューエルバイクのクラスなどでは終速=ゴール地点での速度の危険性を緩和しようと、1000ft.(約305m)をゴールとするケースもある)。
ここでは茨城県城里町にあるJARI(日本自動車研究所)を会場に開かれるJD-STERシリーズにスポットを当て解説しよう。
ドラッグレースに参加したことのないライダーの中には未だ『直線を走るだけの競技の、いったい何が面白いの?』というライダーも多いはずだ。また、見た目のアクションなどですぐにそのすごさが分かるロードレースやモトクロスと違い、ただ真っ直ぐ走っているだけに見えたり、長いスイングアームや他のレースではなかなか目にすることのないNOS(ナイトロオキサイド)やスーパーチャージャー、ターボなどの補器を使う参戦車を見るだけでは、壁が高く感じられるかもしれない。
けれど、少なくともここJD-STERではそれはトップカテゴリーを競うバイク、よほどドラッグレースに魅了されたライダーたちの車両で、大半は街乗りバイクで楽しんでいるケースが多いのだ。
そんなドラッグレースの魅力を、今回はたまたま各クラスのチャンピオンたちに伺ったが、そんな彼らも街乗りバイクで参加し、ハマって今に至っている。次項以降、そんな皆さんのナマの声を掲載しているから、気になる人はぜひ参考として読んでほしい。
JD-STERドラッグレース、2025年最終戦でのエントラント集合写真。国内ではまだドラッグレースの認知が低いゆえ、パドックでの情報交換はそれぞれのスキルアップ、マシン・セッティングの方向づけにも大きな武器になる。自然とそんなエントラント同士の結びつきが強くなるのも、このモータースポーツの特徴なのだ。

▲JD-STERドラッグレース、2025年最終戦でのエントラント集合写真。国内ではまだドラッグレースの認知が低いゆえ、パドックでの情報交換はそれぞれのスキルアップ、マシン・セッティングの方向づけにも大きな武器になる。自然とそんなエントラント同士の結びつきが強くなるのも、このモータースポーツの特徴なのだ。
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2025シーズン各クラスチャンピオンに聞く! ドラッグレース、どう楽しんでいるの?
バイクライフをより深く楽しみたいならお勧めだ
さて、今回のインタビューを通して皆が口をそろえて話すのは、『一度走ってみるとその楽しさ、難しさが分かる』こと、その一方で『ケガのリスクが他のモータースポーツに比べて低いこと』だ。
まず前者は、コースで体験しなければ誰もが約400mの直線路をスロットル全開で走ることなどないだろうし(そもそもスロットルをストッパーに当たるまで全開にする機会はよほど熟練したライダーでない限り公道ではあり得ないのではないか)、後者についてはコーナリングやジャンプなどのアクションが加わらない分、比較的安全と言えるから。
もちろん転倒はゼロではないし、ハイチューンを重ねればバイクを壊すことだってある。あくまで比較論の話だ。
ともあれ、ケガのリスクが少ない=年齢を重ねても続けやすいモータースポーツだということ。むしろ長いことレースに出続けることでスキルも上がり、より楽しめるという寸法。JD-STERでは71歳の山本敏博選手がH-Dクラスに参戦中だ。
そして他の2輪モータースポーツ経験のないライダーがドラッグレースの門をくぐるケースが多いことも加えたい。バイクライフをより深く楽しむ手段のひとつに、ぜひドラッグレースを勧めたい。
PRO OPEN(プロオープン)クラス
プロオープンはJD-STERのトップクラス。エンジンや車体に改造制限はなく、矢嶋さんのZX-14Rのような市販車改、ドラッグ専用ローリングシャシー車が頂点を争うさま、ドラッグレースならではの爆音に観客は酔いしれる。

■2025シリーズチャンピオン 矢嶋晴也さん(#2 ZX-14R)
JD-STERの花形クラス、トップカテゴリーのプロオープンでチャンピオンとなった矢嶋さんは、イベントの黎明期となる’06年から参加する古株でもある。最初は当時通っていたショップに誘われての参加。「その1回目のオープントーナメントで優勝しちゃったんです(笑)。そこからはもうズブズブ」と。ドラッグレースは「スタート時のアドレナリンが沸き立つ感じが好き!」とも。ボケ防止にもなりますよ、と言うけれどご本人は55歳。まだまだドラッグレースならご活躍が期待できる年齢ですよ!
VSB OUTLAW(VSBアウトロー)クラス
VSB(ビンテージ・スーパーバイク)のトップカテゴリー。ローリングシャシーや15/16インチのドラッグスリックの使用は不可(18インチはOK)だが、純正フレーム、クランクケースを使えば改造範囲は広範だ。

■2025シリーズチャンピオン 神田佳治さん(#203 Z1-R)
1980年代空冷エンジン+鉄フレーム車が主役のVSBで’23年に開設されたアウトロー。同クラスで3年連続チャンピオンと無双を誇ったのが神田さん。59歳。きっかけは’08年にツーリング中に大ケガを負ったこと。飛ばしたければやはり専用コースと。「ドラッグレースは車体も自分もすべてがキマった時の爽快感が楽しいです。愛車の性能を試すならケガのリスクも考えてドラッグレースは良い遊び場です。会社に迷惑かけられない立場の方や自営業の方に本当にお勧めかな」と。
CRAZY8(クレイジー8)クラス
クレイジー8はオープントーナメント(OT)の予選で8位以内となったライダーが別枠で争うクラス。OTの決勝トーナメントではタイム上限8.9秒(越えると失格)だが、クレイジー8では8.8秒に緩和される。

■2025シリーズチャンピオン 石森秀樹さん(#60 ZX-14R)
2&4輪趣味にどっぷり浸かる石森さんは’09年型GSX-R1000入手時に、若き日に親しんだロードレースをもう一度と考えたが、出入りするクラスフォー・横田さんに誘われJD-STERに参加。「女の人や子供も出てるって聞いて気楽に始めたけど、奥が深いし勝てば嬉しい(’24/’25連続チャンプ)。まずはストックのバイクで来て大丈夫。経験を積むほどにバイク作りの方向も見えてきますよ」とも。
VSB PRO STREET(VSBプロストリート)クラス
3クラスに分かれるVSBでは車両規則的には真ん中のクラス。下段で解説するストリートクラスの10.7秒の上限を越えるスキルのライダー&マシンが競う。前後18インチ車によるが17インチ車も街乗りバイクならOKだ(レーサー不可)。

■2025シリーズチャンピオン 小岩井則洋さん(#205 Z1000Mk.II)
「初参加時、まわりはオジサンばかりだったのでこれは楽勝! と始めたんですが、コテンパンにやられて悔しかったですから(笑)」とドラッグレースを続ける理由を小岩井さん。初参戦は2018年で現在43歳。以後、自身でバイクショップを開き今は若いお客さんたちと楽しむ、頼もしい兄貴。「若い人ほど最初は上手くいかなくてもどんどん伸びていきますよね」と。
VSB STREET(VSBストリート)クラス
Zやカタナ、CB-Fなどで気軽に始められるVSBストリートクラス。プロストリートとの違いは上限タイムだが「プロストリートを走るなら専用にマシンが要る」(五十嵐さん)という壁が両者にあるようだ。

■2025シリーズチャンピオン 五十嵐数馬さん(#230 Z1)
JD-STERに出て「40歳を越えてバイクライフが180度変わりました」と五十嵐さん。それまではツーリングを楽しんでいたが、2022年最終戦を走ったら楽しくて、早速そのシーズンオフからバイクを仕立て直し始めたそうだ。「MG-NESTさんに面倒を見てもらいましたが、自分のエンジン
のばらし組みを手伝わせてもらったのも、良い経験になりました」とも。ドラッグレースが気になるライダーは、レース日に開かれるオープントラックデー(練習を兼ねた走行会イベント)から試してみては? とアドバイスをくれた。
OPEN TOURNAMENT(オープントーナメント)クラス
JD-STERの主幹クラス。午前中の予選を上位から8台ずつに分け各グループで決勝トーナメントを競う(予選落ちはない。それぞれのグループで表彰式もある)。シリーズチャンプは各戦で得た各々のポイント合計で競う。

■2025シリーズチャンピオン 佐々田雅己さん(#105 TRX850)
「スタッフ、エントラントの皆さんとも、新規の参加者を本当にウェルカムな雰囲気で迎えてくれるのがいいですよね」とJD-STERの魅力を語ってくれた佐々田さん。初エントリーは会場がJARIへと移った2021年から。当初はストリートE.T.を走ったが、今季は本格的にオープントーナメントへ参戦。見事にチャンピオンの座を射止めた。「雰囲気はユルいけど走りはアツいんですよ!」と、JD-STERの特徴をひと言で表現。
H-D(ハーレー)クラス
ハーレーダビッドソンによるワンメイククラス。車両の性能差を埋めるため、対戦する左右レーンの両者が各レース前に自身のタイムを申告し合い、スタートをずらす『申告タイム制』を採用している。

■2025シリーズチャンピオン 米城寿弥さん(#188 XL1200S)
2024年の最終戦でJD-STERデビュー、2025年に本格参加した米城さんは54歳。この’25年シーズンは優勝こそないもののポイントを積み上げ、チャンピオンとなった人。仲間内に出ている人がいてJD-STERを観戦し、「公道では味わえないスピード感と爆音に魅了されました。スタートとシフトアップに集中できて思い通りのタイムが出るのが面白い」とのことで、次なる目標はやっぱり表彰台の頂点だったりする。
STREET E.T.(ストリートET)クラス
上記のH-D同様にタイム申告制で競うクラス。両レーンを走る2者が申告通りに走れればゴール地点で同着となる仕組みだが、その通りのレースになることは稀。申告とのタイム差で勝敗を決める、ウデがモノをいうクラス。小排気量車がビッグバイクを倒す、ジャイアントキリングも頻発して盛り上がるクラスでもある。

■2025シリーズチャンピオン 永田健一さん(#62 TZM80R)
永田さんがJD-STERに参加したのは2021年。きっかけは愛車のYZF-R1Mでサーキット走行会を走るうちに何度か転倒したこと。リスクを避けようにも、ほかに200PSを堪能する場所もないと思っていたところでドラッグレースと出会った。「TZMでのダブルエントリーは、ストリートE.T.ならこの車両も楽しめると気付いて」(永田さん)。R1Mもいいけれど、大きな身体をまるめてTZMを駆る姿を会場で目にすれば、ドラッグレースを存分に楽しむ様子が分かるはずだ。
JD-STER代表理事のレッドモーター・中村圭志さんにも聞いた
2026年は第1戦が9月20日、第2戦は11月1日(日)に開催!
2輪のみで2004年にスタートしたJD-STER(当初は走行会を名乗った)は20年超の歴史を持つドラッグレースイベントだ。仙台ハイランド内の専用コースでスタートしたが、’11年に起きた東日本大震災の影響で同コースが閉鎖されて以来、会場を変えながら継続。’21年からは現在の、日本自動車研究所(JARI)城里テストセンターで開かれるようになり、関東圏の地の利もあって新規エントラントが増加、盛況を得ている。
「まだ認知も低いですが、ドラッグレースは意外と参加への壁は低く老若男女を問わず気軽に始められるモータースポーツ
です。我々もそんな長所をもっと知ってほしくて、まずは見に来ていただける、1日楽しめるイベント作りを意識しています。

▲地元との協力姿勢を一貫してとり続けるのもJD-STERイベントが長く続くキモのひとつ。写真はJARIのある城里町・上遠野町長(左)と代表理事の中村さん(右)。
こ2026年はJARIさんによるコース内の安全管理規定見直しなどがあって、レースは9月20日が第1戦、そして11月1日(日)に第2戦という日程になりました。準備期間もありますから、2026年はこれから始めたい方にも絶好の機会。ぜひドラッグレースの魅力に触れてください」とJD-STER代表理事のレッドモーターの中村圭志さん。詳細はイベントHPで!






