レポート:河村大志
ドラマティックレイン!マルク・マルケスが大逆転でスプリント優勝

中東情勢により約1ヶ月ぶりの開催となった今大会はヨーロッパラウンドの開幕戦でもあり、MotoGPは熱狂の地ヘレスにやってきた。
ウエットコンディションのなか行われた予選では母国戦となるマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)がポールポジションを獲得。2番手にヨハン・ザルコ(Castrol Honda LCR)、3番手にはファビオ・ディ・ジャナントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)が続いた。
スプリント開始時にはコンディションが回復し、路面もドライに。しかし、上空には分厚い雲が覆っていた。
12周のスプリントレースは、ポールシッターのマルク・マルケスがホールショットを奪う。2番手のザルコの後ろには、5番グリッドからポジションを上げたアレックス・マルケス(BK8 Gresini Racing MotoGP)、ホルヘ・マルティン(Aprilia Racing)らが続いた。
今季に入り好調のマルティンはポジションを上げていくかに思われたが、2周目のターン1でマシンにトラブルが発生しリタイア。一方、3番手のアレックス・マルケスがザルコを抜き2番手に浮上した。
3周目に入ると小雨が降り出し、ホワイトフラッグが掲示される。昨年同地で優勝を飾り、初日にトップタイムを出したアレックス・マルケスが兄に迫っていく。
トップとの差を詰めていったアレックス・マルケスは、7周目のターン8でマルク・マルケスをオーバーテイク。その背後にはスタートでポジションを落とすも、挽回してきたディ・ジャナントニオが接近する。
そして8周目の最終13コーナーでマルク・マルケスが転倒。雨が強まり出したタイミングでもあり、各社ウエットタイヤを装着したマシンに乗り換えるためにピットに入る。マルク・マルケスは転倒した後、コースと芝生を横切ってピットイン。レイン用マシンへと乗り換えた。
トップを走るアレックス・マルケスはステイアウトし9周目に突入。しかし、雨が急激に強まり大きくペースを落とさざるを得ない状況になってしまう。慎重にマシンを走らせていたアレックス・マルケスだったが、スリックタイヤでの走行が限界だったのか転倒。同じくステイアウトしたディ・ジャナントニオはなんとかピットに戻りマシンチェンジを行うも、1周前にピットに入る判断を下したライバル勢にアドバンテージがあり、4番手に後退してしまった。
ほとんどのライダーがマシンチェンジを行うなか、フェルミン・アルデゲル(BK8 Gresini Racing MotoGP)がスリックのまま走行しトップに浮上。しかし、レインタイヤを履くライバル勢とのスピード差は歴然で、交換組のトップのフランチェスコ・バニャイアとマルク・マルケスが一気に抜き去っていった。
ドゥカティワークスのワンツー体制となり、今季初のスプリント優勝を狙うバニャイアだったが、10周目のターン8の飛び込みでマルク・マルケスが鋭い突っ込みを見せオーバーテイク。転倒を喫するも、最終コーナーでの転倒ということもあり、抜群のタイミングでマシンチェンジを行うことができたマルク・マルケスが一躍トップに躍り出たのだ。
その後は危なげない走りを披露したマルク・マルケスがトップチェッカー。ドラマティックなレースを制し、母国のファンを盛り上げてみせた。

2位にバニャイア、3位にはフランコ・モルビデリ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)が入り、ドゥカティ勢が今季初となる表彰台を独占する結果となった。
ポイントリーダーのベッツェッキは残り3周で転倒。チームメイトのマルティンはトラブルと、アプリリアにとって厳しい結果に終わってしまった。
小椋藍(Trackhouse MotoGP Team)は波乱のレースを走り切るも、マシンチェンジすることなく走行を続けたこともあり15位フィニッシュ。入賞を逃す結果に終わっている。
2026 MotoGP 第4戦スペインGP スプリント結果


マルク・マルケスにペナルティが科されなかった理由は?

13コーナーで転倒したマルク・マルケスはコースとピットレーンの外側の芝生を横切ってピットに入った。
スプリントの8周目にターン13で転倒を喫したものの、見事優勝を飾って見せたマルク・マルケス。しかし、転倒したあと、コースと芝生を横切ってピットに入ったため、多くの視聴者がマルク・マルケスにペナルティが科されるのではないかと疑問に思ったはずだ。なぜならF1をはじめとする他の世界選手権ではピットに関するレギュレーションは厳格に定められており、これらのカテゴリで同じ入り方をすると問答無用でペナルティが科される。
しかし、当該事案に関わる部分をMotoGPの規則を確認すると、「ピットレーン入口の内側の実線白線を守る必要がある」としか明記されていない。今回マルク・マルケスが跨いだのはピット入り口の外側で、さらにトラックリミットを示すペイント部分ではなく、芝生の上を走行している。
つまり、ピットレーンの入り口で超えてはいけないのは内側のラインのみであり、外側のラインは違反には抵触しないということだ。
また、マルク・マルケスは後続車が全車過ぎ去るのを待ち、安全も確保していることから、ペナルティが出ることはなかった。
最高峰クラスで7度のタイトルを獲得したマルク・マルケスはその圧倒的なライディングスキルに注目が集まるが、容赦のない勝利への執念こそが真の強みといえる。
昨年のアメリカズGPでは、マルク・マルケスがフォーメーションラップ直前にマシンを乗り換えるという事例があるが、今回のピットインに関しても、レギュレーションの細部まで理解していないと行動に移すことはできない。
勝つためにできることはなんでもやる。今回のレースもマルク・マルケスの冷静な判断が結果に結びついた結果といえよう。
とはいえ、マルク・マルケスがグレーゾーンを利用しただけであり、今のレギュレーションに問題があることは間違いない。今後、ピット入り口に関するレギュレーションに関して改定が行われるかもしれない。
アレックス・マルケスが2年連続母国GP制覇
雨に翻弄された前日から一転、決勝日は晴天に恵まれ、気温23度、路面温度37度のレース日和となった。

大観衆が見守るなか、レースがスタート!
25周の決勝レースは、マルク・マルケスがホールショットを奪うなか、4番グリッドからベッツェッキが好スタートを決め2番手に浮上した。以下、アレックス・マルケス、マルティン、ディ・ジャナントニオと続く。
ベッツェッキに先行されたアレックス・マルケスだったが、初日から速さを見せており、この日のペースも好調。早々にベッツェッキを抜くと、2周目のバックストレートエンドで兄を抜きトップに浮上する。
弟に抜かれたマルク・マルケスだったが、ペースの良いアレックス・マルケスについて行こうとしたターン11でフロントが切れ込み転倒。スプリントで劇的な優勝を果たしたが、決勝では2周目で姿を消すことになってしまった。
先頭に立ったアレックス・マルケスはベッツェッキを寄せ付けない走りを披露。レースが終盤に入っても、付け入る隙を与えなかった。
ベッツェッキはアレックス・マルケスとの距離こそ詰められなかったものの、マルティンを攻略したディ・ジャナントニオの追撃は許さず、2番手の座を確実のものにしていった。
上位勢に動きがないなか、レースを盛り上げたのが小椋だった。11番グリッドからスタートした小椋はオープニングラップを10番手で通過。周回を重ねるごとにペースをつかんでいき、次々に前方のライダーを攻略していく。
終盤には6番手までポジションを上げると、ファイナルラップにはチームメイトのラウル・フェルナンデスも抜き去り、5ポジションを上げ5番手でフィニッシュして見せた。
レースはアレックス・マルケスが独走で今季初優勝。昨年最高峰クラス初優勝を挙げた思い出の地で、今年も母国のファンを熱狂の渦に巻き込んだ。
2位にベッツェッキが続き、これで連勝は5でストップ。しかし、タイトル争いにおいて大きな2位表彰台を獲得してみせた。3位にはディ・ジャナントニオが入っている。
次戦はゴールデンウィーク明けの5月8日から10日にかけて行われるフランスGP。思い起こせば昨年のフランスは雨がドラマを生み、地元のヨハン・ザルコが感動的な優勝を果たした。ドゥカティが今季初優勝を挙げ、アプリリア、ベッツェッキの連勝が止まった今大会。フランスではベッツェッキの巻き返しがあるのか、またはドゥカティが勢いに乗るのか、ヨーロッパラウンドに入ったGPは目が離せない。
2026 MotoGP 第4戦スペインGP 決勝結果



