速く、そして安全に走るために、エンジンパワー以上に重要なのがブレーキだ。ライダーの意のままに減速・停止でさせることはもちろん、車体姿勢の制御を担ううえでも欠かせない存在である。そんなブレーキシステムの中でも、ブレーキのタッチや効き、コントロール性などに最も大きな影響をあたえるものがブレーキパッドだ。そこで今回は、ブレーキパッドに関する疑問を専門メーカー「Vesrah(ベスラ)」に伺った。
文:丸山淳大、オートバイ編集部 写真:松川 忍、関野 温、南 孝幸
  1. ブレーキパッドに関する20の質問・疑問

Vesrah(ベスラ)

1950年創業のブレーキパッドメーカーVesrah(ベスラ)。商品開発から生産、品質管理までを自社で一貫して行い、日本製にこだわった製品づくりを続けている。国産車から輸入車まで、現行モデルから旧車までを網羅する豊富なラインアップを誇り、ストリート向けはもちろん、レース用パッドも多数展開している。

画像: タカラ株式会社 代表取締役会長 田村昭人氏

タカラ株式会社
代表取締役会長
田村昭人氏

画像1: 教えてマイスター!|「Vesrah(ベスラ)」タカラ株式会社・田村昭人社長に訊く! ブレーキパッドの疑問・質問20連発!

ベスラのブレーキパッドを知っておこう!

専門機関による厳しいテストを受けた逸品!

SDシリーズをはじめとするベスラのストリート向けパッドの摩擦材は、自動車部品認証・登録を行うアメリカの機関「AMECA」にて摩擦係数評価コード「HH」の最高評価を受けており、バックプレートにはその刻印が入っている。

グレードを示す刻印は純正パッドであれば必ず入っているが、アフターマーケット品はないものが多い。アルファベットは、左が常温時、右が高温時の摩擦係数を示し、文字が後になるほど摩擦係数は高くなる。

画像: ベスラのブレーキパッドを知っておこう!

AMECAの試験で使われる摩擦材のテストピース。ベスラでは認定を受けた証明書(右下写真)の数々が大切に保管されている。

画像2: 教えてマイスター!|「Vesrah(ベスラ)」タカラ株式会社・田村昭人社長に訊く! ブレーキパッドの疑問・質問20連発!

ニーズに合わせた専用品を開発!

ベスラはバイク用ブレーキパッドの開発から製造、販売まで一括で手掛ける世界でも稀有なメーカーであり、製品の品質を担保するため国内製造にこだわっている。こうした同社だからこそ、ユーザーの細かなニーズに合わせたスピーディな製品開発が可能。ニーズに合わせた独自配合を行いニッチなユーザーにも応える製品開発をしている。

画像: 3月に発売されたばかりのカワサキ車専用パッド「KZ」(写真左)は、グリーンカラーが目印。写真中は近年盛り上がりを見せるジムカーナ用、右はミニバイク専用と細分化するニーズに合わせた商品開発も得意とする。

3月に発売されたばかりのカワサキ車専用パッド「KZ」(写真左)は、グリーンカラーが目印。写真中は近年盛り上がりを見せるジムカーナ用、右はミニバイク専用と細分化するニーズに合わせた商品開発も得意とする。

レース・エンデューロ用パッドも豊富にラインアップ!

2000年頃よりスズキの協力を得て「Vesrah Suzuki レーシングチーム」として、アメリカのデイトナ200マイルやAMAのレースに参戦。また、国内では社内チームがもて耐に挑戦している。そんなレースにも積極的なベスラは、レース専用パッドも多彩なラインアップを誇る。“効き”よりも“コントロール性”を重視したあえて効かないリア専用の「WIN」など同社ならではの珍しい商品も!

画像: ベスラは社内チームも有しており、250cc以下のバイクを使用した耐久レース〝もて耐〟にも出場。これまで4度の優勝を経験している名門チームだ。

ベスラは社内チームも有しており、250cc以下のバイクを使用した耐久レース〝もて耐〟にも出場。これまで4度の優勝を経験している名門チームだ。

画像: オンロードはもちろん、オフロード向けレース専用パッドなど、ジャンルに合わせ幅広くラインアップしている。

オンロードはもちろん、オフロード向けレース専用パッドなど、ジャンルに合わせ幅広くラインアップしている。

ブレーキパッドに関する20の質問・疑問

Q1.ブレーキパッドって、どんな種類があるの?

A.市販車用ブレーキパッドは大きく分けて2種類があります

ブレーキパッドは「レジン系」と「メタル系」に大別できる。レジン系はアラミド繊維を主原料に、樹脂(レジン)を結合材として約230度ほどで焼き固めたものでコストに優れるのが特徴。ベスラでは「SD」シリーズがレジン系にあたる。低温時から制動力がしっかり立ち上がるので、小排気量車や街乗りメインのバイクに適している。

一方のメタル系は銅を主原料とし、その他カーボンやセラミックなどが配合される。高温域での高い制動力やコントロール性の良さが特徴。雨天時でも制動力の低下しづらいのも大きなメリットだ。ベスラでは「VD-JL」や「ZD-CT」シリーズがストリート向けメタルパッドの主力商品となる。

画像: ベスラの中でも市販車向け主力3モデル。写真左の「VD-JL」と「ZD-CT」はメタル系、右の「SD」はレジン系となる。

ベスラの中でも市販車向け主力3モデル。写真左の「VD-JL」と「ZD-CT」はメタル系、右の「SD」はレジン系となる。


Q2.ブレーキパッドの使用期限はありますか?

A.保管状況により使用できなくなる場合もあります

明確な〝使用期限〟は設けられていないが、摩擦材とバックプレートの接着部が劣化して剥がれかけている場合、サビや反りなどの変形がある場合、摩擦材の変質など異常がある場合は使用厳禁だ。未使用のパッケージの状態で、直射日光や高温多湿を避けた場所なら長期保管が可能だ。


Q3.パッドの寿命の見分け方を教えて

A. 摩耗状態とブレーキフィールに着目してください

ブレーキパッドの残量は摩擦材の厚みが2mm以下になった時点で交換するのが目安となる。パッドによりインジケーターとなる溝が設けられているタイプやバックプレートがローターに接して音で残量を警告するタイプなどもある。残量以外にも、制動力が低下したり、タッチの悪化、異音や偏摩耗症状があった場合は交換を検討したい。

画像: 写真上が残量2mmとなった交換時期にある状態。下は残量ゼロmmでローターとバックプレートが接触してしまう非常に危険な状態だ。

写真上が残量2mmとなった交換時期にある状態。下は残量ゼロmmでローターとバックプレートが接触してしまう非常に危険な状態だ。


Q4.ブレーキ鳴きの原因はなんですか? 対策法があれば教えてください

A. 音を発する部位は多岐にわたりますが主な原因は制動時の振動によるものです

ブレーキの“鳴き”は、制動時に発生する微小な振動がキャリパーやローター、フォーク、ホイールなどの周辺部品と共振することで発生する。

振動の要因は、ローター表面の皮膜ムラや油・水などの異物付着による摩擦の不均一、パッドとローターの接触ムラ、ローターの歪みや厚みムラ、キャリパーやピストンの作動不良、パッドピンやスプリングなどの摩耗、さらに高負荷走行によるバックプレートの変形などが挙げられる。

このように“鳴き”の原因や発生部位は様々。そのため、鳴きの発生を止めるのは一朝一夕で済まない場合が多い。

画像: バックプレートがたわむとパッドの当たりは不均一になる。上級バックプレートは硬度を高めて高負荷下でも安定したブレーキフィールを持続させている。

バックプレートがたわむとパッドの当たりは不均一になる。上級バックプレートは硬度を高めて高負荷下でも安定したブレーキフィールを持続させている。


Q5.バックプレートへのパッドグリスの塗布は必要ですか?

A. サービスマニュアルに準じてください

パッドグリスの役割は微振動を抑えて、制動時の鳴きを抑制することにある。マニュアルで指定されていないければ、塗布する必要はない。使用する際は、キャリパーピストンとバックプレートの接触面にごく薄く専用パッドグリスを塗布する。塗りすぎると飛散してローターに付着したり、砂利や汚れを吸着したりするので、気をつけたい。

画像: Q5.バックプレートへのパッドグリスの塗布は必要ですか?

Q6.純正パッドに付属するシムや断熱材は新品パッドに移植した方が良いですか?

A.基本的に移植することを推奨します

純正パッドには鳴き、振動対策や断熱(制動熱をゴムシールやフルードに伝えないように)する目的で、シムや断熱材がセットされていることが多い。純正装着されている部品は装着目的のある機能部品なので、純正パッド→社外パッドへの交換時は、これを移植するのが一般的。

ただし、変形や腐食、剥離があればそのまま移植せず、純正新品部品を用意の上で交換するようにしたい。ベスラのパッドセットに同梱される種類もあるので、付属する場合は純正を移植する必要はない。


Q7.パッドの面取りはしたほうが良いですか?

A. ローターの状態が良ければ必ずしも必要ではありません

ブレーキローターはブレーキパッド形状にならって摩耗していく。もし、交換後の新しいパッドとの当たりが変わって、引っ掛かり感などが出る場合、馴染みを良くする目的で面取りが有効となる場合がある。ただ、やすりを当てる時はバックプレートの塗装を剥がさないように注意したい。

画像: Q7.パッドの面取りはしたほうが良いですか?

Q8.新品パッドの慣らしは必要ですか?

A. 基本的に必要となります

新しいパッドに交換した直後は、パッドとローターとの当たり面を整えて、摩擦材によって形成された被膜(トランスファーフィルム)を安定させることで、鳴きやジャダー、効きムラを抑えることにつながる。新品交換直後は制動性を確かめつつ急制動を避けて、低〜中制動を何度か行うことでブレーキの当たりが出てくるはずだ。

なお、ストリート向けパッドは冷間時からの制動安定性が考慮されているので、特別なウォーミングアップを行う必要はない。ただし、サーキット向けのパッドは一定の温度に達してから性能が出るように設計されているものもある。その場合、走り始めに段階的に制動を行い、ブレーキの温度を上げることで制動力が安定する。


Q9.ブレーキパッドのメンテナンス方法はありますか?

A.中性洗剤での洗浄がおすすめです

ブレーキダストの除去や付着したブレーキフルードを洗い流す際は、中性洗剤(食器用洗剤やカーシャンプー)を利用したい。有機溶剤はゴムシール類に悪影響を与えることもある。また、高圧洗浄機を使用する際は、キャリパーシールなどに強く当てるのはNG。可動部のグリスが流れ出てしまうので、スライドピンやパットピン部のグリスアップが必要となることも。


Q10.摩擦材にブレーキフルードやフォークオイルが付着した場合、洗って再使用しても大丈夫ですか?

A. 内部に浸透してしまった場合は新品交換が確実です

付着後すぐに洗い流せば問題ない場合もあるが、付着したブレーキフルードやフォークオイルが摩擦材に浸透してしまうと、効きが悪化する可能性がある。表面を洗浄して改善したように思えても、残留した油分が制動熱で滲み出し、再び効きが不安定になることも。

安全面を考慮するとパッドを新品交換するのが安心だ。なお、ブレーキフルードは、バイクの塗装を侵すので万がいち付着した場合は、なるべく早く水洗いする。

また、フルード以外の油分はキャリパーシールやマスターシリンダーのシール類を膨潤させる原因となる。フルードへの混入や付着などに注意したい。

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