文:丸山淳大、オートバイ編集部 写真:松川 忍、関野 温、南 孝幸
Q11.ブレーキパッドの評価軸には効きや、コントロール性、ライフ以外にどんなものがありますか?
A.多岐にわたる評価軸の中で開発しています
ブレーキパッドの性能は、初期制動と立ち上がり特性、冷間〜高温域でのμ安定性、耐フェード性、雨天・湿潤時の効力の立ち上がり、鳴き、振動(NVH :騒音(Noise)、振動(Vibration)、荒々しさ(Harshness))、ダスト量・色・付着性、ディスクへの当たりの作りやすさ、レバー入力に対するリリース性(戻りの気持ちよさ)など多岐にわたる要素で評価が行われている。
Q12.今後のパッドの進化として予測されるものを教えて下さい
A. 環境規制や電動化への対応が予想されます
今後、銅の使用制限や禁止、ブレーキダスト低減など環境規制への対応が想定される。また、バイクの進化として車体の大型化や装備の高度化、電動化の流れにより、車両重量や制動負荷が増えることが予想される。
それにより、ブレーキダスト低減と性能の両立、長寿命化による交換サイクル低減(メンテナンス負担・廃材/ダスト総量の低減)、高μ・耐熱性の確保と、ローターへの優しさの最適化、生産時のCO₂排出量削減(工程改善・省エネ化)などが求められていくことになる。
Q13.1970〜80年代以前はアスベストを含むパッドがありましたが現在は使用禁止に。代替材料はなんですか?
A. 複合的な材料を組み合わせて性能を作り込んでいます
アスベストは耐熱性・耐摩耗性・繊維補強としての安定性に優れ、当時は扱いやすい材料だった。その代替としてはアラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、各種無機充填材などを組み合わせて性能を作り込む方向に進化。
ベスラは1987年頃から業界の先駆けとしてアスベストフリーの材質に切り替えを行っている。なお、アスベストを含んだ時代の旧車用パッドは、現代の素材を用いると鳴きが発生しやすいという難点を抱えていた。ベスラでは鳴きを抑えた旧車用ブレーキパッドを約5年の歳月をかけて開発中で、今後近い時期にいよいよ発売される予定だ。

Q14.減るパッドほど効きがよいですか?
A.良く減るパッド=効きが良いとはかぎりません
その製品のコンセプトによって、当たりの出やすさや初期制動を重視するために、あえて摩耗が早い配合にする可能性があるかもしれないが、一概に「減りやすい=効きが良い」というわけではない。ブレーキング時、ローター表面では皮膜の形成と除去が繰り返されている。
この皮膜こそが摩擦係数の安定化とローターおよびパッドの摩耗抑制に大きく影響しているのだ。また、パッドの摩耗は温度域やローター材質、制動時の面圧、速度、雨天走行の頻度など、走行条件にも大きく左右される。

Q15.ブレーキダストの量が多いほど減りが早いパッドと判断できますか?
A.ダストが少なくても減りが早い場合もあります
ブレーキダストの量は摩耗量の目安にはなるものの、ブレーキダストには摩擦材だけでなくローター摩耗粉も含まれている場合もある。ダストの色や粒度、付着性は摩擦材の配合によっても変化するし、ブレーキまわりにダストの付着が少ないケースもあるので「ダストが多い=摩耗が早い」とは限らない。

Q16.小排気両車であっても上級メタル系パッドを選んだほうが良いですか?
A.ご自身の好みや使用環境に合わせて選んでください
パッドはメタル系が必ずしもすべての面で優れているというわけではなく、メーカーや銘柄によってフィーリングや特性は千差万別。レジン系パッドは減りが早く制動力が劣ると思われがちだが、ベスラのレジンパッドSDシリーズは高いμを確保しつつ、制動力が穏やかに立ち上がるのが特長。
低温時からしっかり効く配合により、ローター温度が上がりにくい冬場でも安心だ。さらに耐久性も高く、ローターへの攻撃性も低く設計されておりコスト的にも優れている。よって、より強い制動力や高温域での安定性を重視したいなら、一段上のグレードとしてJLを選ぶのがおすすめだ。
Q17.軽量小排気量車と大排気量ツアラーでブレーキパッドに求められる特性の違いはある?
A. 車両重量と走行シーンが異なるためブレーキパッドに求められる特性も変わります
軽量小排気量車はブレーキにかかる熱量も比較的小さいため、低温域からの扱いやすさやコントロール性、素直な立ち上がりといったフィーリングが重視される傾向がある。
一方、重量級のツアラーは車重が重い上に積載、タンデムすることも想定されるし、高速巡航からの減速などで制動エネルギーが大きくなるため、耐フェード性や温度変化に対する安定性、ロングライフ性、ローター摩耗や鳴きまで含めたバランスが重要になる。

Q18.フロントとリアでパッドの銘柄を変えるのはアリですか?
A.目的が明確であれば、有効な選択となります
フロントは制動の主体となるため、制動力や耐熱性、安定性を重視した特性が求められる。一方、リアは車体姿勢のコントロールに使われる場面が多く、コントロール性が重要になる。このように前後のブレーキでは役割が異なるため、用途や目的に応じてパッドの特性を調整していくことが、安全で扱いやすいブレーキセッティングに繋げることができる。
ベスラでもそこに着目しており、レース専用として効きではなく“調整する感覚”に軸足を置いたリア用パッド「XDシリーズ」をラインアップ。また、オフロード向けではしっかり効かせたいライダー向け「KXシリーズ」、穏やかな効力でコントロール性を重視した「DXシリーズ」を展開。
その中でもフロント用「DXシリーズ」はしっかり効く特性となっており、同じ銘柄でも前後で求められる役割に合わせた設計のパッドとなっている。


Q19.レース用パッドに求められる条件とはどのようなものですか?
A. 高温、高負荷下での制動安定性が重視されています
サーキット走行メインのレース用パッドは、高温域でも摩擦係数(μ)が安定していることや制動熱熱によるガスの発生や摩擦面の変質が起きにくい材料設計が求められる。また、バックプレートや接着部が高温でも安定していることも重要な条件だ。パッドの中でもレジン系は300〜350度くらいまで、レース用メタルパッドは800度近くの高温が想定されて開発されている。
Q20.サーキット走行後にそのまま公道走行しても大丈夫?
A.使用したパッドの種類と走行後の状態によります
ストリート向けのパッドをレーシングスピードで想定以上の高温域まで使用すると、摩擦材の変質(焼けやガラス化)、クラック、偏摩耗などが起こり、効きやフィーリングに影響が出る場合がある。
一方、レース専用パッドは高温域での性能を重視しているため、低温域では摩擦係数が安定せず、公道では本来の性能が発揮できないことがあるため、公道使用はNGだ。自走で走行会に参加するユーザーは、公道での扱いやすさも考慮したベスラのストリート対応高性能パッドの「ZD-CTシリーズ」や「PXシリーズ」の使用が安心。
「ブレーキパッドの疑問・質問20連発」写真
文:丸山淳大、オートバイ編集部 写真:松川 忍、関野 温、南 孝幸

