文:齋藤春子/写真:松川 忍、南 孝幸
TSR/TECHNICAL SPORTS RACING

三重県鈴鹿市住吉町6786
三重県鈴鹿市に本拠地を置くモーターサイクル用パーツメーカーおよびレーシングチーム。日本人若手ライダーを起用しながら全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐、ロードレース世界選手権に挑戦。2016年からレース活動の舞台をFIM世界耐久選手権(EWC)に移して、「F.C.C. TSR Honda France」としてフル参戦を続けている。2022年にTSRの運営母体であるホンダワールドと三重スーパーカブ販売がグループ会社となり企業活動を行っていくことを発表した。
TSR/TECHNICAL SPORTS RACING 会長取締役
藤井正和さん

1961年千葉県生まれ。F.C.C. TSR Honda France 総監督。日本のモータースポーツ黎明期からホンダのワークスライダーとして活躍した父の璋美氏が、ライダー引退後に立ち上げ、若手ライダーの育成に尽力したテクニカルスポーツ(現TSR)を1984年に受け継いだ。以降、全日本ロードレース、鈴鹿8耐、世界グランプリなどへの挑戦を通じて多数の優秀なライダーを輩出。現在は鈴鹿とスペインの2拠点生活を送りながらチームのレース活動の指揮をとり、「世界で最もサーキットにいる時間が長い男」の異名を持つ。好物はみたらし団子。
TSR/TECHNICAL SPORTS RACING 代表取締役社長
酒匂好規さん

1966年奈良県生まれ。中学時代より父親の影響でバイクに憧れる(父は現在86歳ながらハーレーに乗る現役ライダー)。「三ない運動」の時代を経てもバイクへの情熱は変わらず、大学卒業後も“好きなことを仕事に”との思いで、1989年にホンダ二輪奈良(現 株式会社ホンダモーターサイクルジャパンの前身)に入社。以後、ホンダドリーム京都伏見 店長/ホンダドリーム中部 社長/ホンダドリーム東京 社長/HMJ営業部営業部長 執行役員などを歴任した後、2020年に三重スーパーカブ販売に。2022年TSRとの合弁を機にTSR代表取締役社長に就任。
レースをやるからには勝ちたいし、努力は惜しまない
顔見知り程度の関係から5秒で社長と会長の仲に
──日本のモーターサイクルスポーツ黎明期から活躍されてきたTSRさんは、日本を代表する名門ロードレースチームです。運営母体のホンダワールド株式会社を藤井正和さんの父である藤井璋美さんが1964年に創立され、現在も藤井さんが「F.C.C.TSR・ホンダ・フランス」の総監督としてレース活動を率いていますが、数年前にTSR社長を退き、会長に就任。後任として、酒匂好規さんがTSR社長に就任されました。今回はその経緯から教えていただけますか?
酒匂「現在の形になったのは2022年6月ですが、もともと私はホンダドリーム鈴鹿・四日市・松阪などを運営する、三重スーパーカブ販売株式会社に在籍していまして、最初は、TSRさんと何かコラボレーションがしたいなと思ったんですよ。それで藤井さんに『相談に乗ってもらえませんか』と声をかけたのが始まりです」
藤井「それまでほとんどまともに喋ったことなかったよね。もちろん同じ二輪業界だから、顔と名前は知ってたけど」
酒匂「同じ場で何度か酒を飲んだことがある、くらいの関係性でしたね」
──その状態で「一緒にやりたいです」と言われて、戸惑いませんでしたか?
藤井「いや全然?『うん、いいよ』って言って終わり。話は5秒だったね」
酒匂「そこで固い握手を交わしました。じつは後から分かったんですが、二人とも任侠映画が好きという共通点があって(笑)。今でも藤井さんは、そういう世界の〝義理と人情〟の精神を胸に、チームを動かしているところはありますね」
──とはいえ、「5秒」の即決はなかなかできないと思います…(笑)。
藤井「だってそんな話を言ってくるやつ初めてだったから。あなたはうちを名門チームと言ってくれたけど、そんな気は全然なくてね。ただ目の前のできることに全力で取り組んできて、現状に至っただけなんですよ。しかもその現状もいつか必ず終わりが来るし、変わっていく。これまで我々がやってきたこと、いま取り組んでいること、いかに次に渡していくかだと、以前から考えていたんです。だから会社を譲る話も5秒で決まったし、三重スーパーカブの社長だった酒匂に、TSRの社長をやれって話をした。そうやって人生、なるべくしてなるんじゃないかと思うよ」
酒匂「藤井さんの代わりに僕が勝手に補足しますが(笑)、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐、ロードレース世界選手権などさまざまなレースへの挑戦を経て、2016年からはFIM世界耐久選手権(EWC)を舞台にチームを率いる藤井監督は、かつては『打倒HRC、打倒ホンダ』という強い反骨精神を胸に、ここまで歩んできた人だと思います。世界への挑戦を始めた当時はまだ、異国の地で日本人は珍しく、常識をひっくり返すために『大きな組織にはできない小さなチームだからこそできる挑戦』を模索し続けてきた。その積み重ねの結果が、現在のTSRを築き上げたと言えるし、自分自身、そんな藤井さんの生きざまに強く感銘を受けました。だからこそ一緒に何かをやりたいと思い、TSRと三重スーパーカブ販売がグループ会社となることで、車両販売と世界に挑むレース活動といったお互いの強みを生かして、新しい企業価値を生み出していくことができるのではないかと考えたことが、現在の形になった経緯ですね」
2016年からFIM世界耐久選手権でトップ争いを繰り広げる名門チーム

2016年からフル参戦を続けているFIM世界耐久選手権(EWC)は、2017/2018年に参戦3年目にして日本国籍チーム初となる世界チャンピオンを獲得した後、2022年にもタイトルを獲得。2025年は第2戦のスパ8時間耐久ロードレースで勝利を収めたものの、鈴鹿8耐とボルドール24時間でリタイアとなり、ランキング10位でシーズンを終えた。


1978年の第一回大会から連続参戦している鈴鹿8時間耐久ロードレースはTSRにとって特別なレース。2006年に#778「F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team」(当時)で参戦19年目にして悲願の優勝を達成。2011年、2012年は連覇を成し遂げた。2025年はエンジントラブルにより、スタートから1時間10分でリタイアを余儀なくされたが、挑戦は続く。


毎年好評のサーキット走行会を開催



ブリヂストンが後援し、日本各地で年3回開催される人気のサーキット走行会「BATTLAX FUN & RIDE MEETING」の特別追加開催として、2025年11月2日に鈴鹿ツインサーキットで行われた「BATTLAX FUN&RIDE MEETING With TSR」。ライダーレベル毎の走行タイムの合間には藤井監督のトークショーも行われ、軽妙なトークに参加者から笑いと拍手が送られた。
