文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
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ハーレーダビッドソン「ブレイクアウト」インプレ(宮崎敬一郎)

HARLEY-DAVIDSON
BREAKOUT
2025年モデル
総排気量:1923cc
エンジン形式:空冷4ストOHV4バルブV型2気筒
シート高:665mm
車両重量:309kg
発売日:2025年7月3日
税込価格:345万1800円~
レスポンスの角を取ったまろやかな力量感が光る
ブレイクアウトは、豪華絢爛にドレスアップされたファクトリーチョッパー。240サイズの極太リアタイヤをはじめ、長くて低い大きな車体はそれだけで誰もが振り返るほどの迫力を醸し出している。しかも、造りがいい。タンク、フェンダーの上質な塗装、手の込んだホイールのフィニッシュなど、メーカー仕立てのカスタムとは思えないほどの豪華さ。相変わらずその存在感は強烈だ。
今回新型になって変わったのは、外観ではヘッドライトやメーターの意匠。メカ的には、電子制御の見直しなどによって、エンジンの性格がずっと紳士的に変更されている。
1923ccエンジンのレブリミットは5700回転あたり。メカノイズは少々大きめで、ちょっと粗い回り方をするが、ライディングモードを最も勇ましい「S」モードにしていてもリミッターまでフラットに吹ける。トルキーでパワフルなダッシュに変わりはないが、レスポンスがこれまでより柔軟で、トルクの立ち上がリ方がマイルドになっている。非力になったのではなく、硬かったレスポンスの角を取った感じだ。

6速だと100km/hは2200回転、120km/hだと2660回転。ダッシュにはパンチがあるし、鼓動も強烈。だが、FIの制御が丁寧で、3速以下なら1300回転から、4・5速なら1600回転からでも、よどみやノッキングなしに流せるし、クルーザーらしいダッシュもする。巨大排気量のVツインとは思えない粘りとスムーズさだ。荒っぽさを抑えたことで、じつに使い勝手のいいエンジンに仕上がっていた。
外観上のアクセントになっている極太のリアタイヤは、ちょっと予想外だがクセがない。少しごろりとした応答をするだけで、タチが強かったり、舵角がリーンにシンクロしなかったリ…というクセがないのだ。まあ、普通のどっしり型クルーザーの感触だ。
車体が低く、リアサスも短めなので、路面の荒れに対する衝撃吸収力はそれなり。良路を流すような走りでは快適だが、速度を乗せてアスファルトの大きなわだちを横切ったり、うねりを越えた時はかなり衝撃を伝えてくる。ただ、ホイールベースが長いので、ピッチングを伴うような振幅の緩やかなうねりでは、減衰されてゆったりした動きになる。
ブレイクアウトは豪華にデコレートされたクルーザーだが、外観の魅力だけでなく、得意とする走りもある。独特のパルスを発しつつ、田舎道をゆったり流したり、ハイウェイを風圧に抗う必要の無い120km/h以下でどこまでも走る…という使い方が楽しい。
ただ、そんなペースで流していても、スロットルをひと捻りした瞬間に、強烈な瞬発力で他車を引き離せる。この巨大なクルーザーは、見た目に反して、図太いトルクにで全てをねじ伏せて自在に加速することができる。瞬間的にスーパースポーツすら置き去りにできる力強さを持っていることが何よりの魅力だ。
