今年4月にリニューアルされたHondaの純正オイル、その名も「Pro Honda」。変わったのは名前だけでなく、諸々アップデートされているようだ。そこで今回は開発陣の方々に直撃! Hondaが手掛ける新たなるオイルの全貌に迫っていく。
文:丸山淳大/写真:松川 忍 取材協力:Honda

ホンダ純正オイル「Pro Honda」とエンジンオイルに関する16の質問・疑問

Q1.オイル交換して体感できる変化はどんなものがある?

画像: Q1.オイル交換して体感できる変化はどんなものがある?

A. クラッチやシフトの操作感、エンジンフィールに着目!

オイルがフレッシュになるとクラッチの繋がりや切れが良くなる他、シフトフィールの向上も体感できるはずだ。また、スロットルを開けたときのトルクの出方もスムーズになる。逆に言えば、これらが体感できなくなった時にはオイルが劣化してきたことが推察できる。


Q2.Honda車以外にPro Hondaのエンジンオイルを使ってもOK?

画像: Q2.Honda車以外にPro Hondaのエンジンオイルを使ってもOK?

A. 積極的におすすめはできない……。

Pro Hondaのエンジンオイル粘度は5種中4つのオイルで高温側の粘度が30となっている。他メーカーでは高温側粘度40のオイルが指定されているケースもあり、その場合、厳密に言うと適合外になってしまう。まずは車両メーカーのオーナーズマニュアルで指定するエンジンオイル粘度を確認したい。


Q3.旧車にPro Hondaを使ってもOK?

A. 全く問題なし! むしろ積極的におすすめできる

初代CB750FourやCB750Fなどの“旧車”と分類されるようなマシンにPro Hondaのオイルを使う場合、そのマッチングが心配になるが、結論から言えばデメリットは皆無。むしろメリットがある。

当時のオイルよりも潤滑性能が大幅に向上していることに加え、ゴム製オイルシールや樹脂パーツに悪影響が出ないことがテスト・検証されており安心して使用可能。なお、空冷エンジンにオススメなのは高温側の粘度が高い「SPORTS 10W-40」だ。


Q4.車種指定のオイル量はどのように決定するの?

画像: Q4.車種指定のオイル量はどのように決定するの?

A. 車両ごとのエンジンとその搭載位置によって決まっている

オイルの下限量(ロアレベル)はオイルポンプからの油圧が十分に確保できるオイル量と、上限量(アッパーレベル)はメカフリクションが増えないようにオイルレベルを決めている。このように機種ごとの設定されているため、キリの良いオイル量にはなっていないのだ。


Q5.夏場の気温が上がっているけれど油温的に大丈夫?

A. 140℃を超える油温で耐久テストを実施している

市街地走行での理想の油温は85~100℃くらいとされており、120℃を超えるとかなり高い印象がある。外気温40℃超えも珍しくなくなってきた夏場には油温も心配になってくるが、Pro Hondaのオイルテストでは140℃を超える油温で耐久テストが行われており、高油温下での潤滑性がしっかり確保されている。

したがって外気温に応じてオイル粘度を変更する必要もなく、真夏に「RACING(0W-30)」を使っても全く問題はない。


Q6.高性能オイルの代名詞である「PAO」や「エステル」はベースオイルに使われてないの?

画像: ※写真:https://si-racing.com/

※写真:https://si-racing.com/

A. 「RACING」と「PREMIUM SPORTS」のベースオイルに「PAO」を使っている

Pro Hondaの中でも上位2つに位置する「RACING」と「PREMIUM SPORTS」は「PAO」をベースオイルとしている。PAOをベースとしている理由は、エステルよりも耐熱性に優れ、劣化が少ないため。オイル交換サイクルの長い街乗り車では、レース1回の潤滑性よりも安定した性能の維持がより重要なのだ。

なおPro Honda「RACING」は伊藤真一監督率いる「Astemo Pro Honda SI Racing」のマシンに実際に使われており、そのフィードバックがオイル開発に反映されている。


Q7.昔よりも指定のオイルの交換サイクルが延びていますがその理由とは?

A. エンジンとオイルの両方の進化によるもの

オイル性能の向上により、ライフが長くなっている部分もあるが、エンジン構成部品の材質、加工や組み立て精度、表面処理技術などや冷却性能の向上などエンジン側の進化により、オイルの交換サイクルが延びている面もある。


Q8.低粘度のオイルはオイル消費が激しい印象があるけど大丈夫?

A. むしろ高粘度鉱物油よりオイル消費は抑えられている

低温から柔らかい低粘度オイルは減りやすい印象があるが、実際のオイル消費は一昔前の鉱物油に比べて現代の低粘度オイルの方が圧倒的に少ない。ちなみにオイル消費に関してもテストが行われており、Pro Hondaのオイルはすべて定められた基準をクリアしている。


Q9.昔よりもオイルが低粘度化しているがエンジン保護的には心配ない?

画像: Q9.昔よりもオイルが低粘度化しているがエンジン保護的には心配ない?

A. 昔のオイルよりも潤滑性能は向上している

エンジンオイルの“キモ”となるのがベースオイルに加える性能添加剤だ。過去にはオイル性能を“粘度”に頼っていた時代もあったが、現在は性能添加剤がオイル性能の鍵を握っている。

Pro Hondaでは既存の性能添加剤をブレンドするのではなく、世界各地の気温や使用環境に耐えるスペックのものをオリジナルで開発。それにより、低粘度でも高い性能を得ることに成功している。なお、このオイルの低粘度化により性能面でメリットがある他、クラッチの接続(つながり)フィーリングは向上する。


Q10.エンジンオイルの温度が上がるまで暖機したほうがよい?

A. Pro Hondaのオイルは低温から潤滑性を発揮するので不要

Pro Hondaのオイルは常温でも潤滑性を発揮することができるので、オイルに関して言えば暖機運転の必要は無い。キャブ車のように始動直後のエンストの心配が無いFI車ならエンジン始動してファーストアイドルの回転数が落ち着いた時点で走り出して問題はない。


Q11.良いオイルを長く使うのと、性能の低い安いオイルをこまめに交換するのとどっちが良い?

A. 車種指定以下のグレードのオイルを使うのはおすすめできない

オーナーズマニュアルで指定されている以下のグレードのオイルを使った場合、十分に性能を発揮できなかったり、エンジンのダメージを招くことも想定される。指定グレードまたはそれ以上のオイルを定められたタイミングよりも早く交換する分には全く問題はない。


Q12.オイルの劣化要因は?

画像: Q12.オイルの劣化要因は?

A. 熱と圧力、スラッジなどによる

オイル劣化の要因としてまず挙げられるのが、エンジンの熱により促進される酸化だ。また、エンジン内のミッションやベアリングでオイルの成分が分子レベルでせん断されることによっても劣化が進んでいく。

さらに、燃焼によるカーボンや部品の摩耗による金属粉を取り込むことによって、スラッジと呼ばれる粘性の汚れが発生することもある。このような劣化を見越した上でオイルの交換タイミングが設定されている。


Q13.オイル交換したばかりだけど、もうオイルが汚れているように見えるけど大丈夫?

画像: Q13.オイル交換したばかりだけど、もうオイルが汚れているように見えるけど大丈夫?

A. オイルが汚れるのは正常!

エンジンオイルが果たす重要な役割のひとつとして“エンジン内の清浄”がある。オイルの汚れはその役割が果たされている証拠。交換してすぐにオイルが汚れているように見えても性能的に問題はない。

オイルの汚れや匂い、触った感じの粘度などで劣化具合を判断するのは一般ユーザーには難しいため、あくまで交換時期はオーナーズマニュアルの指定を目安にするのが正解だ。


Q14.オイルに水分が混入して白く変色する乳化って大丈夫ですか?

画像: Q14.オイルに水分が混入して白く変色する乳化って大丈夫ですか?

A. 多少の混入は全く問題なし!

API規格に水分混入時の乳化性能規定があり、全オイルでAPIのSLグレードに適合するPro Hondaのオイルはその規定をクリアしている。オイル乳化の原因として多いのがクランクケース内の結露による水分混入だが、オイルが変色していたとしても、結露程度であれば性能的には問題ない。ただしオイルの劣化は早まるので、早めに交換することをお勧めする。


Q15.オイルの添加剤って使っても大丈夫?

A. 後入れのオイル添加剤はおすすめできません

Pro Hondaのオイルは性能添加剤が精密な配合でブレンドされている。そこに未知の添加剤を加えると、添加剤同士の相性により最悪のケースではスラッジの発生を招く可能性がある。また、フリクションを下げる成分を含む添加剤は、クラッチ滑りの原因となることも。


Q16.開封したオイルの使用期限はある?

A. 明確な期限は指定されていないが、保管に注意して早めに使うことを推奨

開封したオイルの使用期限は、Pro Hondaだけでなくオイル全般に関して明確な規定は無い。オイル交換時に余剰が出た場合は、高温多湿な場所を避けて蓋をしっかり締めた状態で保管し、次回オイル交換のタイミングで使用するようにしたい。

文:丸山淳大/写真:松川 忍 取材協力:Honda

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