マルク・マルケスがスプリントの雪辱を果たしタイトルに大手

極上の高速バトルを展開したマルク・マルケスとマルコ・ベッツェッキ。
日曜日は雲が多くなるも天候は晴れ。気温26度、路面温度29度のドライコンディションのなか、27周の決勝レースが行われた。
サイティングラップではホルヘ・マルティン(Aprilia Racing)のマシンがトラブルでストップ。マシンを乗り換えたことにより、決勝ではダブルロングラップペナルティを受けることになってしまった。
27周の決勝がスタートすると、ポールシッターのベッツェッキがトップを守り、マルク・マルケスが2番手に上がるというスプリント同様のスタートとなる。
その後方ではジョアン・ミル(Honda HRC Castrol)とヨハン・ザルコ(CASTROL Honda LCR)が接触し転倒。揃ってリタイアとなってしまった。
マルク・マルケスが序盤から果敢に仕掛けていくも、ベッツェッキはトップの座を譲らない。4番手を走行しているクアルタラロはペースが上がらず、後続のマシンに抜かれていく厳しい展開を強いられてしまう。
決勝では転倒者やトラブルが相次いだ。3周目には小椋がターン14で転倒を喫すると、クアルタラロを攻略し4番手に浮上したペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)は8周目にチェーンが切れてしまいリタイア。
今回も8番手と不調を脱せずにいたフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)やマーベリック・ビニャーレス(Red Bull KTM Tech3)も姿を消した。
トップ争いはベッツェッキとマルク・マルケスの一騎打ちに。序盤はマルク・マルケスを抑え込んでいたベッツェッキだったが、12周目のターン8でブレーキングをミスしてしまいマルク・マルケスがトップに浮上する。
トップに立ったマルク・マルケスはペースを上げ逃げにかかるも、ベッツェッキのペースも良く、両者の差は0.3~0.5秒の僅差で推移していく。
残り5周になると互いの意地が激突。マルク・マルケスがファステストラップを記録すると、ベッツェッキがファステストラップを奪い返す息を呑むバトルを展開した。
しかしベッツェッキは仕掛けるまでには持ち込むことができず、マルク・マルケスが0.5秒差でトップチェッカーを受けた。
2位にベッツェッキ、3位にはアレックス・マルケスが表彰台を獲得している。
スプリントの転倒がマルク・マルケスに火をつけた
スプリントではまさかの転倒を喫したマルク・マルケス。勝利を逃したことだけではなく、一部のファンからは歓声があがるなど、いつも以上に悔しい結果となった。しかし、このリスペクトに欠けるイタリアのファンのアクションはマルク・マルケスの心の炎を燃え上がらせるには十分だった。
決勝では好調だったベッツェッキとの一騎打ちとなり、互いにファステストラップを更新しあうハイレベルなバトルを展開。結果的にベッツェッキの一つのミスが勝敗を分けた。
レース後にはスプリントの結果とイタリアのファンから受けた言葉を燃料にしたと明かしたマルク・マルケス。そして表彰台でツナギを脱ぎ、ファンに向けて掲げてみせた。

「お前ら黙れ」と言わんばかりにツナギを掲げるマルク・マルケス。
これはマルク・マルケスがロールモデルとして尊敬しているサッカー界のスーパースター、リオネル・メッシのオマージュ。試合中にファンからブーイングを浴びたメッシは、凄まじい活躍で大逆転勝利を達成した際に、抜いだユニフォームの背中を無言で示したことがある。つまり、マルク・マルケスはアスリートとしてパフォーマンスでファンを黙らせたのだ。
命をかけて戦っているライダーが転倒してしまった時、歓声をあげるなんてもってのほかだが、リスペクトに欠ける声があったのは今大会の舞台がイタリアだったことも大きいだろう。
そんななか、好調のベッツェッキとのバトルを制した現役最強ライダーは2019年以来の栄冠に王手をかけた。
次戦は9月26日から28日にかけて行われる日本GP。アレックス・マルケスよりも3ポイント以上多く稼げば今シーズンのタイトルが決定する。
最高峰クラス7度目、キャリア通算9度目のタイトル確定の瞬間が目の前で見られるかもしれない。
2025 MotoGP 第16戦サンマリノGP 決勝結果


レポート:河村大志