文:ノア セレン/写真:南 孝幸/モデル:平嶋夏海
ショーワ「SHOWAEERA Gen2 + HEIGHTFLEX」とは?

Gen2への進化でスクーターにも電制サス!?
ショーワによるライドハイト機能はすでに実用化されているが、今回はフロントフォークにギヤポンプ駆動式の精密な機構を採用したことで制御技術が大進化したのがトピック。そしてEERA Gen2の何が凄いかと言えば、前後サスに独立した小型のECUが備わっていることだ。
これにより車体本体側に電子制御サス用のECUを載せる必要がないため、スペース的な制約をはじめ、最小限なコストで実現できるメリットがある。
CAN通信から車速や回転数、加速度や走行モード等の情報さえ得られればサス単体でプログラミングができるため後付けもしやすいし、さらにはアクティブサスではなくシンプルな減衰力調整サスならコスト制約のある小排気量、またはスクーターや実用車にまで展開が可能になる。
Gen2は高度な技術と制御により次世代の最高級サスを提案しただけでなく、減衰力制御バルブの部品点数削減などコスト面でも確実に進化している。ハイエンドモデルから通勤スクーターまで、電子制御サスが大きく普及する日は近いだろう。

〈標準のシート高〉試乗車のムルティストラーダは標準シート高では足つきに苦労する人も多い。身長154cmの平嶋夏海さんにとっては5㎝の厚底ブーツで片足のつま先がつく状態のため、乗り降りはかなり苦労する。

〈前後サス全下げ状態〉前後とも最も低い位置まで下げた状態ならば足つきはだいぶ改善された。リアだけでなくフロントも下がったことでバランスが良いし、ライトもハイビーム気味にならない。
ショーワ「SHOWA EERA Gen2 + HEIGHTFLEX」の特長
1.小型バイクにも搭載可能な電子サス
2.減衰力を可変するECUをサス本体に搭載
3.リアサスだけでなく、フロントフォークも車高調整可能

フォーク本体に小型ECUを搭載! これが「第二世代」
フロントフォーク上部についているこの小さな制御基板は、リアサスにも同じものが使われている。スカイフックという高度なサス制御プログラミングでもこれまでのように車体側ECUを設ける必要がなく、独立して装着できる。
車体に6軸IMUが搭載されていない車両でも、この基盤に内蔵できるのだ。車体からの各種情報はCANシステムから入手できるのだが、この情報は診断機能を搭載している近代的なバイクなら診断用カプラーからアクセスできる。時代の進化を見せつけられた。

写真はリアサス用の「ギヤポンプ駆動スプリングアジャスター」の透視図。超小型のポンプで内部のオイルを瞬時に移動させ、高頻度/高速での動作を実現している。

フロントフォークに内蔵される小型のギヤポンプにより、フォーク外部の油圧配管やセンサーなどが不要となる。一度はめたら抜けなくなるほど精密で、内部部品もミクロ単位で設計されるほどの高価なパーツだ。
ショーワ「SHOWAEERA Gen2 + HEIGHTFLEX」装着で実際に走行

各モードで車体の性格が変わるのは既存のアクティブサスと似た感触で、スポーティなモードにすれば車体がシャキッとしてエンジンもスポーツモードに入れたくなるし、柔らかいモードにしておけば雨の中、しかも意地悪な凸凹のあるテストコースでも上手にいなすというお手本のような動きを見せた。
最も感動的だったのはスムーズなライドハイト機能「HIGHTFLEX」だ。走り出すと本当にわからないぐらいナチュラルにスルスルと車高が上がり、車速が落ちるとこれまた軟着陸するように車高が下がる。


さすがAstemo、というかショーワ、そのナチュラルさには「まるで純正!」と感動させられた。しかも渋滞路を想定してわざと低速走行と停止を繰り返しても不自然さは皆無。緻密な制御ももちろんだが、前後が同時に上下する恩恵を実感できた。
\豆知識/
スズキ「GSX-S1000GX」の「S.A.E.S.」はSHOWAが開発!

SUZUKI GSX-S1000GX
ショーワのEERAという名前はまだ聞き慣れないかもしれないが、スズキが初めて電子制御サスを搭載したGSX-S1000GXにも採用されている。
IMUも用いたアクティブサスにより路面の変化に対応した「スズキフローティングライドコントロール」を搭載。実はカワサキ ヴェルシス1100にも同様のサスが採用されている。


文:ノア セレン/写真:南 孝幸/モデル:平嶋夏海