18インチの乗り味を残し気持ちよく走れるように
数あるグリーンモンスターバイクの中でも筆頭格なのが“ローソンレプリカ”Z1000R。エディ・ローソン仕様Z1000J改の’81年AMAスーパーバイクチャンピオンを記念して仕立てられ、北米仕様で丸タンクだったJ純正から新たに換えられた角タンクとそこに施されたライムグリーンカラー、ビキニカウル&角型ヘッドライトにKERKER4-1マフラーといった装備も特別感を生んで、大きな注目と価値を持ち続けている。
この車両は’82年にローソンが2年連続チャンピオンを獲得(引き続きZ1000J改。北米での車名表記は一貫してKZ1000)した記念の’83年型Z1000R2。トリニティガレージナカガワに持ち込まれ、第1段階と言える作業が済んだ状態だが、その内容と今後の計画は、往時のグリーンモンスターの楽しみ方の濃い参考になる。

「ノーマル状態の車両でしたので、今後のことをオーナーさんと相談して先に車体に手を入れています。オーナーさんは当社でNinjaのTGN#1078仕様を作り、それを10年近く楽しんでいらっしゃるので狙うところも明確です。それでこの車両は現状ではフレームの曲がりを直してしっかりさせて、手の入るところはひと通りのメニューを施しています。
ビトーさんのステムでKYBΦ38mmフォークをクランプしてスイングアームはパイプ追加補強。ホイールは鍛造のゲイルスピードで前後18インチ、Z1000R純正に合わせたゴールドを選んでいます。ピボットと前後アクスルシャフトはクロモリにという具合です。
エンジンはノーマルなんですけどPAMSコイルと当社のHIRユニットで点火系を構成、オイルクーラーもビトー10段にしています。
18インチの味を少し残しながら気持ちよく車体が動くので、感覚はローソンレプリカそのままより、今のネイキッドに近くなっててスリムな感じかなと思います。乗り味はすごくいい状態と言えます」
TGナカガワ・中川さんはこの状態の仕上がりをこう言う。純然たるZ1000Rの乗り味もいいけれど、車両の登場から40年以上経った今、乗ることを楽しむのならという仕様。乗るための不安を取り除き、特別なことなく往年のモンスターを味わう車体が出来ている。
ところで先にはこれを「第1段階」と記したが、となるとその先があるはず。そこには何が考えられているのだろう。普通に考えれば、現状ノーマルのエンジンがターゲットになるはずだが。
「S1のエンジンを積みます。もうユニットそのものはあります」

S1とは、KZ1000S1。’82KZ1000Rと同時に作られた市販レーサーで、Z1000J/Rに’81ローソン車(J改)のスペックを投影したものだ。コンプリートで30台、キットパーツで200台分ほどが世に出ている。
「このユニットは本物だとは分かっています。手は入っていないので、S1エンジン自体の数値、ボア×ストロークに始まってカムプロファイルほかを測定して知るところから手を付けます。ベース車(J/R)と異なる特別な部分も多いですから、PAMSさんなど詳しい方々の力添えも得ながら進めます。それで1度リセットした状態から作業を進めていきます」
ベーススペックを知ってからの再構築。どんな仕様になるかも興味が湧くが、今から作る空冷Z系エンジン、しかも希少なものに対しての配慮=長寿化路線も加わってくる。TGナカガワ独自の表面処理加工、R-Shot#Mはその筆頭だ。
「このS1エンジンには、可動部分にはフルにR-Shot#M処理するよう依頼を受けています。その分だけで200万円の予算も組まれています」
GPZ900Rなど水冷車では既に多くオーダーがあり、浸透が進む表面加工。空冷車でも多くのユニットで依頼実績がある。処理対象物の表面強度が上がり、耐摩耗性は高められ摺動抵抗は減る。寸法が維持される(減りにくい)ことも合わせて、長く使える。
新品パーツだけでなく中古パーツでも寸法等を測定して使用許容範囲内にあればR-Shot#M処理後に新品同様に使える利点もある。施工する初期コストこそかかるが、後々の多大なメリットを考えればリーズナブルだ。既にR-Shot#M処理済み&チューニングエンジンを使い続けている複数の車両オーナーからも、エンジン作動のスムーズさやレスポンスの向上等と、体感の良さも聞いてきた。次に積まれるS1エンジンにもそれが反映される。完成・換装のあかつきにはそのフィーリングを改めて聞いてみたい。
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Detailed Description 詳細説明

ビキニカウルはZ1000R純正。JBパワーのステムでオフセットを純正50mmから40mmに変更し、メーターにはヨシムラPRO-GRESS1テンプメーターを追加。フロントマスターはゲイルスピードVRC、クラッチホルダーはゲイルスピードに換装と、操作系もきちんと構築される。

角型の燃料タンクやテールカウル、サイドカバーなどの外装はカラーリング含めてZ1000R2純正のままだ。

ライダーのホールド感を高める段付きタイプのタックロールシートもZ1000R2純正品を使う。

ステップはウッドストック製でスイングアームピボットシャフトおよび前後アクスルシャフトはJBパワー・クロモリに換装。排気系はPMC S1-TYPEメガホンエキゾーストだ。

ドライブチェーンはRKの530XXWとして現代化しフリクションロスを減らしている。

フレームはチェック後に曲がり等を修正していて、今積まれるエンジンはZ1000R2ノーマルの998cc仕様で点火系をPAMSコイル+TGナカガワH.I.R.ユニットに変更、オイルクーラーもJBパワー10段とた。

キャブレターはFCRΦ35mmのブラック仕様で燃料コックはピンゲル。

フロントフォークはZ1000R純正同径のKYBΦ38mmで、フロントブレーキは当時らしいデザインのAP・CP2696キャリパーを純正ディスクへセットする。キャリパーのワイヤリングにも保護チューブが被せられる。

リヤブレーキは上止めのキャリパー/ディスクとも純正で、リヤサスは純正鋼管スイングアーム下にパイプを足して補強したものにYSS・RG362ショックを組み合わせた。

ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-Nで純正1.85-19/2.50-18サイズから3.00-18/4.50-18サイズと前後18インチに換えている。