良好18インチで同世代車がライバルとなるクラスを走る

角型スタイルのボディにライムグリーンはやはりきれいだなと思える1台。「(JD-STERドラッグレースが)現在の(茨城県)城里町での開催になってからは、仕事の都合がある時以外はほぼ全部走られていると思いますよ」。こう教えてくれるのは、ZAPレーシングサービスの長谷川さんだ。長谷川さんは長年多くのバイク、特にZ系のサポートを行っていて、JD-STERドラッグレースではVSB=ビンテージスーパーバイク各クラスを走る車両のチューニングやメンテナンスを多く請け負っている。

そのうちVSBストリートクラスはZ系を中心とした空冷4気筒車で18インチや17インチ(要セルスタート)の車両が参戦できて、SS0→1/4マイル(約402.1m)のタイム10.70秒を上限として勝ち抜きトーナメントで競う。この車両はそのVSBストリートで#226を付けてK&Mレーシングから参加する上森さんのものだ。

画像1: 良好18インチで同世代車がライバルとなるクラスを走る

「もう15~20年乗っていると思います。Z1000Jをベースにローソンレプリカ仕様にしているもので、ウチに来た時にはほぼ今の仕様でした。それからずっとメンテナンスをお願いされています」

ほとんど変わらないといいつつもきれいな状態だから、各部にきちんと目が行き届いていることも分かってくる。主な内容はというと、まず外装の変更(そもそもローソンレプリカ=Z1000RがZ1000Jを元に外装と一部装着品の変更を行ったもので、両車は極めて近い)と前後18インチ仕様。ホイールはハイポイント製モーリスで、PMC製アルミ角型スイングアームに往時を思わせるワークスパフォーマンスショックを組み合わせている。

純正φ38mmフォークにマウントされるAP・CP2696キャリパーやCRスペシャルキャブレターにKERKERエキゾーストと、ローソンレプリカらしいルックス、そしてストリートを走るのにほしい機能が盛り込まれていた。なるほど、これなら往年の空冷モデルのストリートスタイルカスタムでドラッグレースの楽しさを掴んでほしいというVSBストリートクラスにもしっかり合っている。

画像2: 良好18インチで同世代車がライバルとなるクラスを走る

では芯になる部分、エンジンやフレームの仕様はどうだろう。

「最初に来た時にφ72mmで圧縮比10.25:1のワイセコ鍛造ピストンが入った1075cc仕様になっていて、その基本は変えていません。定期的に様子を見ながら、ヘッドまわりをアップグレードしていったという感じです。
バルブは純正ですがバルブスプリングをキブルホワイト(高精度なバルブまわりパーツを主にエンジンパーツを送り出すアメリカの老舗メーカー。KPMIとも)にしてカムはAPE特注の“420”です。ヘッド面研は1.8mmと、この辺の加工は’24年シーズンを前にやって、125PSあたり出ています」

J系だとこのくらいの数値に落ち着きますねとも長谷川さんは言うが、エンジンに無理をさせずにオーソドックスな手法を使って安定した出力を引き出している点にも注目できる。フレームもJ系のウィークポイントとして挙がるエンジンリヤ左マウント部のリジッド化のみ。こちらもバランスの取れた仕様で、単にひとつの車両として見た時にも、このJ改は魅力的でさえある。

そうした手が入っているからこそ、普段は街乗りで快活に走り、ドラッグレースではその性能を存分に体感する。’24年は緒戦でET(1/4マイル区間タイム)11.100秒をベストとして11秒台をコンスタントにマークしているし、そんな上限が分かれば普段の余裕にもつながる。その上で、仕様のプラスマイナスも分かる人物(この車両ではZAP長谷川さん)がいる。そんな環境を含めた仕様にも、注目しておきたい。

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ステムやメーターはZ1000J純正でヨシムラ・デジタルテンプメーターを追加、ハンドルはZパーツ・ハンドルバーに、またフロントマスターはNISSIN・ラジアルポンプに変更。

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北米仕様では丸タンクが標準のZ1000Jをベースとして角タンクを載せ、Z1000Rのカラーを施す。

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シートはJのものだがR/Jで形状はほぼ同じ(表皮は異なる)。シートカウルに開いている小さな穴はレース時にゼッケンプレートを装着するためのものだ。

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シンプルなルックスのステップはスピードショップイトウ製。

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スプロケットカバーはアメリカD&G CHASSIS製で、カバーに組み込まれたベアリングでスプロケット軸(アウトプットシャフト)を外からも支持して軸部の曲がりを抑えリヤホイールからの引っ張り力に対しての安定性を高めるアウトボードベアリングサポート。このプレートの上のフレーム側ボルトが入る部分=左リヤエンジンマウント部はリヤからの引っ張りで曲がったりヒビが入ったりすることも多く、まっすぐ後ろにバーを入れるようにしてZAPで補強している。

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エンジンは最初の車両入庫時点でのワイセコφ72mm鍛造ピストン/1070cc仕様で、シリンダーヘッドは'24年にWEB420特注カム(クラスフォーさんの協力もあって、と長谷川さん)やキブルホワイト製バルブスプリングを組んで面研し、120PSを発揮する。既にMTCロックアップクラッチ(整備アクセスがしやすい新型)も組まれているが、このロックアップクラッチは、クラッチに組まれた同芯のプレート周部に可動式のおもりがいくつか付き、回転上昇に合わせておもりが動いてプレートはクラッチプレートを圧着するようになり、クラッチ滑りを抑えて出力の伝達ロスを避ける、ドラッグレースならではの機構だ。おもりの作動回転の調整もできるものだ。

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ほかにエンジンまわりではアールズオイルクーラーやウオタニSP-2コイルキット等を使っている。オーソドックスながら信頼性の高い構成や組み合わせには好感が持てる。

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吸排気系はまさにローソンレプリカ標準と言えるCRスペシャルキャブレターφ33mmにKERKER 4-1エキゾーストを組み合わせたものだ。

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フロントフォークは純正φ38mmで、フロントブレーキはキャリパーを対向2ピストンのAP・CP2696に換装し、ディスクもフローティングタイプに変更している。

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リヤブレーキもにキャリパーを対向2ピストンのAP・CP2696に換装する。リヤサスはPMCモノコック角型スイングアームTYPE-1にワークスパフォーマンスショックの組み合わせ。

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前後ホイールはアルミキャストのハイポイント・モーリスでサイズは純正の1.85-19/2.50-18から2.75-18/4.00-18としている。ドライブチェーンはD.I.Dの50VM(530相当)を使う。

取材協力:ZAPレーシングサービス

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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