1958年に創業し、二輪用部品の企画開発から卸売までを手がける総合パーツメーカー『KIJIMA』。時代の移り変わりによる市場変化に対応しながら、細やかなニーズに応える豊富なラインアップで、二輪ユーザーの信頼を勝ち得てきたキジマが目指す未来について、二代目社長の木嶋孝一さんに聞いた。
文:齋藤春子/写真:松川 忍

膨大な商品開発の歴史がまた新たなパーツを生み出す

──大きな流行が起こりにくい現在の商品開発は、どう進めているのでしょうか。

「先ほど言った、ひとつのヒットで全体をカバーできた時代と異なり、今はある程度、売り切ることを見越した商品開発が必要です。そのうえ、売れる商品にはたくさんのライバルがすぐに参入してくる。3Dスキャナーの進化もあり、いまや1週間もあればコピー商品が出回りますから、先行商品を出す優位性が年々なくなっているんです。値段の面では“壊れたら買い換えればいい”という発想の海外コピー商品には敵いません」

──以前にはなかった苦労がまたあるわけですね。

「だからこそキジマの商品は、お客様に『KIJIMAなら大丈夫』と感じていただける信頼や、安全・安心がなくてはいけないと考えています。日本で作っていると、どうしても海外製品との価格ギャップの問題は出てきますが、それ以外の面でユーザー様に選んでいただけるように様々な優位性を考えることが大事です。やはりキジマがやるべきことは、例えば自分のバイクにキャリアが欲しいなとユーザーが思った時に、手に届く価格で、安心してしっかりと使える品質のものを供給することだと思うんです。
オイルシールやオーリングなど消耗品の製造から始まったメーカーですから、メンテナンスに必要なリプレイス部品といった基盤を守りつつ、例えば、足つきが悪い、積載を増やしたい、倒しても車輌が壊れないようにしたい…そういったさまざまな不安の声を拾い上げ、その解答となるようなラインアップを充実させようというのが、社員の中でも一致している現在の意向ですね。それプラス、遊び心や工夫を残した商品開発も忘れたくない。単に消費を煽るのではなく、“買わなければいけない必需品”と“買いたくなる商品”を押さえた商品開発が必要だと考えています」

──ユーザーのニーズや意見は、どのようにリサーチしているのですか?

「うちはイベントへの参加が多いので、イベントや販売店からのフィードバックはやはり大きいですね。あとはインターネットやSNSで話題になっているキーワードを気にかけています」

──キジマとしてのSNSでの発信にも積極的に取り組んでいますよね。

「業界内ではある程度KIJIMAというブランドを知っていただいている思うのですが、新規ライダーの方や、これからバイクに乗りたいという方にもキジマの情報をお届けしたいので、SNSでのつながりも大切にしています。MFJ CUP JP250へ参戦中のKISSレーシングのレース活動なども、レースに興味がないライダーが多いとよく言われますが、それでもSNSで若いライダー(※2025シーズンは高校2年生の齊藤太陽がチームライダー)が勝った負けたの報告をすると、ちゃんとリアクションを返してくれるんですよ。その記憶が後でレースへの興味へつながるかもしれないし、いざ自分がバイクに乗ろうとしたときに『そういえばKIJIMAって聞いたことあるな』って思い出すことにつながるかもしれない。そういう、地道な強みを育てていきたいとは意識はしています。あとは、やはり安全に乗るための商品情報ですとか、メンテナンスの必要性ですとか、エントリーユーザーがなかなかリーチしにくい情報の発信も重要だと考えていますね」

──KIJIMAブランドの信頼を守る、品質管理への取り組みもお聞かせください。

「デジタル解析の積極的な取り入れもそうですし、これだけ長い商品開発の歴史があると、強度や精度を上げるための膨大なデータとノウハウの蓄積があるんです。あとは、クレームに対する検証をきちんとすることも重要ですね。ひとつひとつのクレームを放置せず、原因をしっかり検証し、それをまた製品にフィードバックしています」

──お話を伺っているとあらためて、キジマさんは一般ライダーの味方であり、「KIJIMAならあるはず」という期待に応えてくれるメーカーなんだな、と感じます。

「商売なので、採算を考えればどこかで見切りをつけなくてはいけないことも多いですし、その見極めは非常に難しい。ですがお客様から『KIJIMAでしか作っていない車種展開やパーツがあるんだ』というお声をいただくことは多いので、今後もできる限り期待に応えたいと思っています。
正直『KIJIMAじゃなくちゃいけない』パーツは少ないかもしれない。でも必要なものを買った時に『あ、気づいたらKIJIMAだった』と自然に選んでいただける商品づくりを、これからも大切にしていきたいです」

文:齋藤春子/写真:松川 忍

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