4輪メカのオーナーが作った好適車両の良さを伸ばす
兄弟機RZ250の初期’80年型が純正でまとっていたニューヤマハブラックで仕上げられた車両。ベースは’81年に登場した排気量拡大版、RZ350だ。
「元々同業、4輪のメカニックを務めるオーナーさんがご自身の仕事の合間や終業後に手を入れて作った車両でした。ペイントもご自身でされています。私はパーツの調達や要所作業のお付き合いをしました」
こうメローズ・中川さんは当初の経緯を言う。それで一度組み上がった車両だが、トラブルからエンジンが焼き付いてしばらく眠ることになった。その後どうなったか。

「ご依頼をいただいて、お任せで直すことになりました。一度まとまっていたものですが、製作される間には制約もあったでしょうし、そのあたりを見直してみるという考えで組み直しを行いました。フレームは防振ダンパーロッドを加えてスイングアームとともにパウダーコートで仕上げ、フロントフォークも当初使っていたXJR400用から3MA(後方排気TZR250)用に換えた上で内部改修し、ハードさを抑えました」
一度いい路線でまとまっていた車両だからこそ、オーナー(今回は同時に製作者でもあった)の考えを汲み、より良く機能を発揮できるように配慮して組んでいく。中川さんの丁寧さも窺えるが、それはエンジンにも見えてくる。
「焼き付いてクランクケースもぐちゃぐちゃになっていて手に負えない状態でした。そこで以前から“RZならここ”と考えていたトシテックの佐藤さんにどうしてもと、パーツ検品から加工、組み立てをお願いしました。途中でショップにお邪魔して佐藤さんの組みの精緻さも見たり、考え方を教えていただいたりしました」

そのエンジンを同じくトシテックのスチールクロスチャンバー、PWMキャブとともに組んでセットアップを施す。オーナーこだわりのシビエ凸レンズライト等の仕様はそのままに、安心の1台となって甦った。
一度いい路線で出来ていたものを再構築するのは、手間もかかるもの。それをオーナーの意思を汲み、信頼できる(しかもエンジンは極上レベル)ものを用意して実現する。その目利きと向かい合いがあれば、今後も安心と言える。希少になってきたモデル。そして容易と考えられがちな2スト車だからこそ、この車両に向けられたような丁寧さと向かい合いはより大事になっている。
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Detailed Description 詳細説明

トップブリッジセンターにキーホールを置くトップブリッジ&ステムはXJR400でハンドルは他機種用のハリケーン製セパレート、メーターは純正。フロントマスターはニッシンラジアルでレバーおよびクラッチホルダーはアコサット。ブレーキラインはカーボン被覆のフレンチューボを使う。

シートは張り替え加工。その下には2スト車でほしい予備プラグ&プラグレンチホルダーが置かれている。

シートを外したところ。2本(3本も可)の予備プラグとプラグレンチがちょうど入るサイズで、工具不要で着脱できるホルダーはワンオフ品だ。こうした配慮やスペース活用にも注目したい。ハーネスはハイサイド製を使う。

初期型RZ250純正カラーの外装はオーナーが塗装したもので、タンク内コーティングも行われた。


吸気はPWKφ28mmキャブレター・パワーフィルター仕様だ。

フロントフォークはXJR400用φ41mm(RZ純正はφ32mm)からTZR250(3MA)用に再換装しインナーを加工しリバランスした。ブレーキディスクのフローティングピンはプラスμでワンオフしている。

リヤサスはRZのモノクロスを基本に、XJR400(4HM)加工スイングアームにブラケット等の加工を加えてナイトロンR2リアショックをセットした。ブレーキまわりもXJR400。

排気系はトシテック・スチールクロスチャンバーという選択。スタップはHOT&COOL製を使っている。なおホイールはXJR400の3.00-17/4.00-17サイズを特殊パウダーコートによってゴールド仕上げして装着している。