文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
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BMW「F 900 XR」インプレ(宮崎敬一郎)

BMW
F 900 XR
2025年モデル
総排気量:894cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:820mm
車両重量:228kg
発売日:2025年2月5日
税込価格:153万7000円〜158万7000円
トータルバランスに優れスポーツも旅も楽しめる
BMWの「XR」シリーズはパワー、スポーツ性能、快適性などを全て携えた上でロングランに対応したツーリングスポーツ。オンロード性能に特化したアドベンチャーともいえるが、あくまでも舗装路適応が基準。特にこの数年はそんな傾向が強いキャラクターになっている。
前後のホイールトラベルも170/172mmと、並みのオンロードスポーツより30~40mmほど多めなものの、アドベンチャー系より30~40mm少なめ。一概には言えないが、これが悪路での踏破ポテンシャルのバロメーターになる。
この足まわりにちょっと強めのバネを上手くフィッティングすることで、F900XRはかなりワンパクな走りも出来るようになってる。強力な旋回性や、敏捷でキレのいいフットワークを求められても困るが、イメージ的に言うと100点中75点くらいのスポーツ性は持っている。
だがスゴいのはここから。
F900XRは乗り心地が硬くてロングランが辛い……ということはなく、むしろアスファルトの掘れたところや、激しいウネリのあるところではなかなかの衝撃吸収力を発揮してくれる。踏破力にもなかなかの重きを置いていて、これがいい。
鋪装の傷んだ田舎道や鋪装林道は日本にも多い。そうしたところも気持ちよく走れるのだ。実際にそんな道を選んで走ってみたが、GSシリーズほどの快適さはないものの、簡単に突き上げられることはほとんどない。

もうひとつ。F900シリーズのツインエンジンは使い勝手がよく、そこそこパワフルなのだが、これまでは少々ノイジーというイメージがあった。だが、XRはカウル装備のおかげか、今回はそれを感じなくなっている。パワーフィールの特徴としては、モリモリとしたトルクがコシの強いダッシュ力を生む実用的な魅力を満載したエンジンだと思う。
一発一発の爆発がハッキリしているので、マフラーをスポーティなリプレイスのものに換えると小気味の良いパルスも生むはずだ。ツーリングのいいBGMになると思う。
ハンドリングはクセがなく、ツーリングモデルにしてはかなり軽快な手応えで身を翻す。エンジンも実用的な低中域でのパンチがあって使い勝手がいい上に回せば元気だ。
万能性を重んじるキャラクターだが、BMWのツーリングモデルらしく、突き抜けた性能、トゲやスパイスこそないが、トータルでのバランスや、ひとつひとつのサジ加減がすばらしい。ツーリングマシンと構える必要はなく、コミューターとしても不自由なく使える、扱いやすさの光るバイクなのだ。
背の高いアドベンチャーでツーリングをしてみたいが、取り回しが……と考えるなら、このF900XRに一度試乗してみることをお勧めする。ずっと気楽に取り回せて、実用性は互角に張り合っている。