文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
▶▶▶写真はこちら|「X-ADV」2025年モデルの全体・各部・走行シーン(18枚)
ホンダ「X-ADV」インプレ(太田安治)

Honda
X-ADV
2025年モデル
総排気量:745cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:790mm
車両重量:237kg
発売日:2024年12月12日(木)
税込価格:143万8800円(イエローは147万1800円)
熟成の進んだDCTと余裕たっぷりの動力性能
X-ADVはアドベンチャー的デザインを取り入れた大型スクーター風の外観だが、ダイヤモンド型フレームに倒立フォーク、アルミスイングアームで構成される車体は剛性バランスに拘った作りで、フラットダートでの走破性を確保するため、前17、後15インチの大径ホイールにはブロックパターンタイヤが装着されている。
エンジンはロードスポーツモデルのNC750系と同じ並列2気筒で、スクーターの常識となっているCVT(コンティニアスリー・バリアブル・トランスミッション)ではなく、マニュアルミッションをベースにオートマチック変速としたDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を採用。
変速操作不要のイージーさと、スイッチによるマニュアル変速によって得られるスポーティさを併せ持っている。世界的に見ても貴重なキャラクターのオートバイだ。
これまでホンダのDCT車にすべて試乗しているが、個人的にはこのX-ADVのDCTがベストだと感じている。クラッチ制御が洗練されているため停止状態からの動き出しが穏やかで、10km/h以下の微速でのコントロールもしやすく、変速時のショックや音も気にならないレベルに抑え込まれている。
DCTが初めて搭載されたのは2010年のVFR1200Fだが、それから15年の間にDCTは劇的と言っていいほど進化しているのだ。

装備重量237kgの車体に58PSのエンジンというスペックからモッサリとした動力性能を想像するかもしれないが、4750回転で発生する最大トルクを活かした変速設定になっていて、スロットル全開での発進加速は「おおっ!」と声が出てしまうほど強力。
体感的にはこれまで乗ってきた国内外のスクータータイプの中でも最速だ。それでいて市街地では唐突な反応を見せることがなく、エンジン回転を抑えたジェントルな走りも得意。このエンジン特性とクラッチ制御、変速制御の緻密さで、誰でもどこでも扱いやすい動力性能に仕上げられている。
ハンドリングはスクーター風のルックスと前後タイヤ径からイメージするよりも安定志向で、ロール方向の動きに一定の手応えがあって扱いやすい。引き換えに連続したコーナーでのヒラヒラ感は薄いが、贅沢とさえ言える前後の足まわりが高い路面追従性を発揮してくれるから、積極的にハンドルを操作すれば峠道でロードスポーツモデルに後れを取ることはないだろう。
クルージングの快適さも魅力。6速・100km/h時は約3000回転で、不快な振動もノイズもなく、120km/h区間だろうが、登り坂や向かい風だろうが余裕たっぷり。高さ5段階調整式のウインドスクリーンを最も高くすれば走行風はヘルメット上部をかすめるだけで、風切り音も減る。「スマート&エキサイティング」という開発コンセプトを実感できる仕上がりだ。