80年代のタイヤと現在のタイヤとでは、性能や見た目も大きく異なる。では80年代のバイクに最新タイヤを履かせた時の相性は? という疑問をFZR750で検証しながら、80年代に登場したラジアルタイヤの黎明期を振り返る。
以下、文:太田安治/写真:南 孝幸、関野 温

時代はバイアスからラジアル……そしてハイグリップタイヤへ

画像1: 時代はバイアスからラジアル……そしてハイグリップタイヤへ

現在のロードモデル用タイヤは、レース用、スポーツ走行向き、ツーリング向き、ストリート向きといったように特性の異なる製品がラインアップされている。だが80年代序盤までは明確な区別がなく、スポーツ志向のライダーはミシュランやピレリ、エイボンといったヨーロッパブランドか、国産のダンロップTT100やK300に設定されていた「GPコンパウンド」を履かせることが多かった。

「ハイグリップ」と呼ばれるタイヤが日本のライダーに認知されたのは、83年に発売されたBS(ブリヂストン)のバトラックスBT-01からだろう。当時乗っていたVF400Fに装着レポートしたときは、ネッチリと路面を掴む感じが伝わってくるのでVFのフロント16インチタイヤがコーナーで内側に巻き込んで転ぶ不安が消え、筑波サーキットでもプロダクションレースの予選通過タイムがあっさり出た。タイヤの性能差を思い知ったのはこのときが最初。ただし減りは速かった。飛ばして走ると3000kmほどでスリップサインが出てしまうから、サイフには厳しかったね。

ブリヂストンのBT-01がユーザーに高く評価されたこともあり、ダンロップ、ヨコハマ、IRCもハイグリップタイヤ戦線に加わった。マシン差の少ないプロダクションレースではタイヤ性能がラップタイムに大きく影響するとあって各メーカーは毎年のように新型ハイグリップタイヤを投入。全体のレベルはどんどん上がっていった。僕はSPレースでダンロップ、BSの順にサポートを受けていたけれど、ヨコハマのスタッフが「秘密で試して」と持ってきたタイヤを履かせたら、SUGOのタイムがポンと1秒縮んだのには驚いたな。

画像2: 時代はバイアスからラジアル……そしてハイグリップタイヤへ

もう一つの革命がラジアルタイヤの登場。国産市販車では83年のヤマハXJ750D-IIが前後ともダンロップのラジアルタイヤを標準装備した。ただ、XJはツアラー的なモデルだったから、市街地や峠道を流すような走り方では特に利点を感じなかった。荷物満載+タンデムで高速走行を続けるヨーロッパのツーリングライダーに向けて作ったのだと思う。

当初、ラジアルタイヤは車重が重くてパワーのある大型モデルや高い荷重を受けるレーサーレプリカモデルの後輪だけ、次いで前後に装着されるようになり、86年のFZR400は400ccで初めて前後ラジアルを標準装備。89年にはTZR、NSR、RGV-Γといった250レプリカ達もラジアルが標準になったので、タイヤメーカーの開発スタッフは「テスト漬けの毎日です……」とこぼしていたなあ。

400クラス初の前後ラジアルを標準装着したヤマハのFZR400

画像: ヤマハ「FZR400」(1986年)

ヤマハ「FZR400」(1986年)

80年代後半はレーサーレプリカが先鋭化。でもヤマハは公道での乗りやすさを失わないバイク作りに拘った。ライバル車を集めた取材の移動区間ではライダーがFZRを奪い合ったほど快適で乗りやすいオートバイだった。

2ストレーサーレプリカもついにラジアルタイヤを装着

画像1: 最新タイヤと絶版車の相性は? ヤマハ「FZR750」・ホンダ「MVX250F」にブリヂストンを履かせて検証|80年代のラジアルタイヤ黎明期を振り返る

140/60-R18のリアタイヤに初めてラジアルが採用されたNSR250RのMC18型。シート下の配線を1本抜いて60馬力、チャンバーを着けて70馬力と言われるほど速かった。でも個人的はMC21型が最高のNSRだと思う。

ブリヂストン製タイヤは絶版車もしっかりサポート!

▶ブリヂストン「バトラックス スポーツ ツーリング T32」

画像: ヤマハ「FZR750」(1987年)/タイヤサイズ 前・後:120/70-17・160/60-18

ヤマハ「FZR750」(1987年)/タイヤサイズ 前・後:120/70-17・160/60-18

水流の魔術師 「パルスグルーブ」が水を切り裂く

今回試乗したFZR750が装着していたのはブリヂストンの「スポーツツーリングT32」。ルーツのBT-023から後継モデルのT30、T31、T32と全部テストしてきたけど、ハンドリングがナチュラルで、どんな車種に装着しても相性問題が出ない。

冷間時から不足のないグリップを発揮して、ウエット路面での排水性もいいし、1000ccクラスのスポーツツアラーモデルに履かせても1万km以上は保つのも、タイヤ代が高騰している現在では見逃せない利点。

FZRの装備重量は220kgを超えているはずだけど、160幅という細めのリアタイヤとT32のプロファイルがマッチしてロール方向の動きが軽い。T32はフロントが17から19インチ、リアは17と18インチがあるから、70~80年代の重量車にお勧めできる。


▶ブリヂストン「バトラックス BT46」

画像: ホンダ「MVX250F」 (1983年)/タイヤサイズ 前・後:100/90-16・110/80-18

ホンダ「MVX250F」 (1983年)/タイヤサイズ 前・後:100/90-16・110/80-18

バイアスタイヤのパイオニアであり続ける

バイアスタイヤも格段に進化していて、中でもブリヂストンのBT46はグリップ、ハンドリング、ライフのバランスが素晴らしく、指名買いするリピーターが多い。

僕は前モデルのBT45をスパーダとエストレヤに履かせていたけど、何の不満もなかった。サイズ展開が抜群に豊富だから、旧車から現行車までに対応できるのもBT46の特徴だ。

文:太田安治/写真:南 孝幸、関野 温

This article is a sponsored article by
''.