デザインの方向性はまったく異なる2台だが、乗り味は信じられないくらい瓜二つのよう。2台とも甲乙つけ難いほどのハイレベルな仕上がりで評価に困ったみたいだが、ちゃんと2台の違いを見つけたようだ。
以下、文:ノア セレン/写真:関野 温

スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| 比較インプレ

画像: SUZUKI GSX-S1000GT 総排気量:998cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:810mm 車両重量:226kg 税込価格:159万5000円

SUZUKI GSX-S1000GT

総排気量:998cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:226kg

税込価格:159万5000円

画像: Kawasaki Ninja 1000SX 総排気量:1043cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:820mm 車両重量:236kg 税込価格:159万5000円

Kawasaki Ninja 1000SX

総排気量:1043cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:820mm
車両重量:236kg

税込価格:159万5000円

たまにメーターを見ないとどっちに乗ってるかわからない

ホントに驚いた! こんなに似ているバイクってある? ってなくらい、2台はソックリだ。ツーリングペースで走っていると本当にどっちに乗ってるのかわからなくなるほどで、「前を走る横田さんがスズキに乗ってるからこっちはカワサキか」とか、あるいはメーターに視線を落として「あ、スズキか」とか確認するほどそっくりだ。

しかし、生い立ちを見るとこのニンジャ1000SXは歴史あるブランドで積み重ねてきたものがあるのに対し、GSX-S1000GTは新規モデル。それなのに価格も全く同じに設定するなど、スズキとしては本気でブツケてきたんでしょう。すっかり浸透したニンジャブランドに、一発目からしっかり対等に戦う、あわよくば食ってやろう! という気概が、価格や車重、パワーなどの各種設定からヒシヒシと伝わりロマンも感じる。

画像1: スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| 比較インプレ

さて一般道のツーリングペースでは、ジャーナリストの責任を放棄して、「もう同じです」。家の近くにあるのがスズキのディーラーなのか、カワサキのディーラーなのか、あるいは見た目だけで選んでもOK。嘘みたいなほんとの話。

ただ高速道路でペースを上げると違いが出た。速度域が上がるほどにGTはビタリと路面に張り付き、高い速度域でのレーンチェンジも思いのままビシビシッ! とこなす。エンジンも高回転域がものすごい元気なので確かにGSX-Rの血筋を感じさせてくれる。幅広スクリーンのおかげで長身でも防風性は高い、さらに振動をうまく打ち消していてどの回転域でも快適だった。

対するニンジャはペースが上がるほどに手や足に微振動が伝わり、スクリーンの角度は変えられるもののサイズそのものが小さくもっと意識的にカウルに潜り込む必要があった。エンジンもGTに比べるとトルク型で、高回転を使ってキビキビ操るというよりは6速のままで走る印象。高い速度域の安定性でもGTにちょっと譲るかもしれない。

ところがワインディングに入るとその印象が逆転するから面白い。ニンジャはGTよりも10kgも重いためワインディングではGTのスポーティさが光るかと思いきや、しなやかなサスペンションやドシッと地面に押し付けられている感覚の強い重心の低さ、そしてブリヂストンS22を純正装着しているおかげか、先が見通せない荒れたコーナーといった難しいシチュエーションになればなるほど高い包容力が感じられた。

画像2: スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| 比較インプレ

常に前輪が路面を捕えてくれていて、ギャップや浮き砂があってもお構いなしに狙ったラインを忠実になぞっていく。フレームもまるで鉄フレームのようにしなやかで、回り込んだコーナーでも一定のバンク角を保持しやすく常に安心感がある。

対するGTは路面状況に左右される。とくに難しい場面になってくると全体的な硬さが気になることもあってスポーツツアラーと言うよりは、どちらかと言えばスーパースポーツ寄り。ライダーが気をゆるめてもハイペースが維持できるニンジャに対して、GTはライダーも常に集中して積極的な入力をしないと「おい! しっかりしろ」とバイクに叱咤される感じ。「ハイすみません、ちゃんとやります!」なんてね。

でもそれぞれの特徴は本当に微々たる違いであり、低重心で扱いやすく、十分以上に快適でしかも荷物も載せられるなど、スポーツツアラーとしての資質はどちらもトップレベル。むしろニンジャの牙城にGTはよくぞここまで食い込んで、肩を並べたもんだと感心した。

そして快適性がありつつもアドベンチャーと違って高いレベルのスポーツ走行が可能なのも魅力だな、と改めて感じさせられた。ニンジャは完熟の域、GTはまだ進化するだろう。これに新たなライバルも加わってくれば、ますます楽しいカテゴリーになるな!

画像: (左)Ninja 1000SX|(右)GSX-S1000GT

(左)Ninja 1000SX|(右)GSX-S1000GT

あれ? 10kg違うはずだけど、あまり変わらない?

どちらのモデルもハンドル位置は高めでシート位置は低めだから、腕でしっかりと支えつつ腰をシートに当てることができ取り回しは良好。ヘンにふらついたりすることもない。

GTは10kg軽いはずだけど、押し歩きした感じではそんなに違いを感じなかったのは不思議。ハンドル切れ角は同等と言ったところ。ただUターンなどはキャスターが立ってるニンジャの方がしやすかったかな?

画像: 路面状況が荒れるほどに高い包容力を発揮する 車重は重いはずなのに、路面状況が安定しない細かいワインディングになるほど強さを発揮したニンジャ1000SX。どんな状況でも淡々とハイペースを刻み続けることができ、しかも疲れないのにはブランドの歴史を感じた。

路面状況が荒れるほどに高い包容力を発揮する

車重は重いはずなのに、路面状況が安定しない細かいワインディングになるほど強さを発揮したニンジャ1000SX。どんな状況でも淡々とハイペースを刻み続けることができ、しかも疲れないのにはブランドの歴史を感じた。

画像: ビシリと筋の通った、ハイペース仕様 高速道路での圧倒的な安定性と動力性能に舌を巻いたGSX-S1000GTは、舗装林道的な路面ではちょっと硬さを感じるので要サスセッティングという感じ。高速走行多い人はGT有利かな。

ビシリと筋の通った、ハイペース仕様

高速道路での圧倒的な安定性と動力性能に舌を巻いたGSX-S1000GTは、舗装林道的な路面ではちょっと硬さを感じるので要サスセッティングという感じ。高速走行多い人はGT有利かな。

スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| 深掘りチェック

1.空力性能

画像1: GSX-S1000GT

GSX-S1000GT

画像: (左)GSX-S1000GT|(右)Ninja 1000SX

(左)GSX-S1000GT|(右)Ninja 1000SX

路面に張り付くのは車体だけじゃなくて空力だ!

GTが高速域で路面に張り付くのは大きくスラントする顔つきがもたらす空力効果も大きいだろう。高速域の安定性は素晴らしい。ヘッドライトはロービームで両側点灯するニンジャの方がツーリング向きかも。明るさだけでなく配光の広さや被視認性など、2灯のメリットは大きい。GTはHi/Lo左右独立。


2.リアサスペンション

画像2: GSX-S1000GT

GSX-S1000GT

画像1: Ninja 1000SX

Ninja 1000SX

プリロードアジャスターはツアラーらしい装備だが?

リアサスは両車とも伸び側の減衰力調整とプリロード調整という設定ながら、ニンジャは工具なしで調整できるリモートプリロードアジャスターを備える。

ただプリロードもしょっちゅう変えないだろうと考えると、軽量に仕上げる選択をしたGTの意図もわかる。なおフロントはニンジャがΦ41mm、GTがΦ43mmの倒立フルアジャスタブルフォークという設定となっている。

ノアセレンが選ぶ2台の “極品” ポイント

画像3: GSX-S1000GT

GSX-S1000GT

コンパクト&スマートでも音はド迫力!

腹下にチャンバーを持つのはニンジャ 1000SXと同じ構造ながら、サイレンサー部は格段にコンパクトでカッコいいGSX-S1000GTの排気系。ただニンジャより排気音は大きめかな?


画像2: Ninja 1000SX

Ninja 1000SX

コレってちょっとZX-9R的? 古いか!?

GSX-S1000GTはGSX-Rを感じさせるのに対して、ニンジャ1000SXのエンジンはキャブのZX-9R的な懐かしさも感じさせる。ツアラーとしては正解でしょ。

スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| 総合評価

画像: このカテゴリーはこれから「来る」ぞ! GSX-S1000GTに1票!

このカテゴリーはこれから「来る」ぞ! GSX-S1000GTに1票!

「一日の長」VS「一発目から超優秀」もうあとは好みで!

本当に2台とも同じような構成なんだけど、改めてそれぞれの強みを整理。

ニンジャ1000SX:しなやかでどんな路面もOK。いつでもドシッと安定。グリップヒーター純正装備は快適なだけじゃなくて安全でもある。

GSX-S1000GT:高速域でビシッとしてる。大型スクリーンで空力がイイ。振動の少なさは大きな魅力。う〜ん、ジャッジが難しい!

スポーツツアラーという意味ではニンジャはさすがに一日の長があるよね。路面が悪かろうが冷たい雨が降ろうが夜間だろうが、淡々と目的地に向かうならコッチ。でもGTのスポーティな感じも魅力だし、振動の少なさなどはニンジャよりもモダンに感じる。ちょっと硬質な感じはタイヤ銘柄変更で変わりそうな気もするしね。新機種投入への感謝と今後の熟成に期待してGTに1票!

画像: SUZUKI GSX-S1000GT

SUZUKI GSX-S1000GT

エンジンは扱いやすいし、高回転域で弾けるパワーは本当に爽快だ。ただハンドリングは路面が悪くなると硬質さが目立ちニンジャほどの許容度はない。防風性や振動の少なさなど快適性は高いけど、このクラスならグリップヒーターは標準装備してほしい。ETC車載器は両車標準装備。


画像: Kawasaki Ninja 1000SX

Kawasaki Ninja 1000SX

全体的にまろやかなニンジャは爽快感やパワーという意味ではそんなに目立たない、むしろツアラーらしい淡々とした感じが魅力。ワインディングでのハンドリングは最高で、転ぶ気がしない。快適性はグリップヒーターは良いけど防風性はもうひとつ。振動が多いのも惜しいなあ。

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    GSX-S1000GT
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    Ninja 1000SX
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    GSX-S1000GT
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スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| スペック・価格・燃費・製造国

SUZUKI GSX-S1000GTKawasaki Ninja 1000SX
全長×全幅×全高2140×825×1215mm2100×830×1190(1225)mm※( )内はハイポジション
ホイールベース1460mm1440mm
最低地上高140mm135mm
シート高810mm820mm
車両重量226kg236kg
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量998cc1043cc
ボア×ストローク73.4×59.0mm77.0×56.0mm
圧縮比12.211.8
最高出力110kW(150PS)/11000rpm104kW(141PS)/10000rpm
最大トルク105N・m(10.7kgf・m)/9250rpm111N・m(11.3kgf・m)/8000rpm
燃料タンク容量19L19L
変速機形式6速リターン6速リターン
キャスター角25°24°
トレール100mm98mm
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17・190/50ZR17120/70ZR17・190/50ZR17
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスクダブルディスク・シングルディスク
燃料消費率 WMTCモード値17.0km/L(クラス3、サブクラス3-2)1名乗車時17.5㎞/L(クラス3-2)1名乗車時
製造国日本日本
メーカー希望小売価格159万5000円(消費税込み)159万5000円(消費税込み)

文:ノア セレン/写真:関野 温

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