当時の作りをクリアして納得の走りを手に入れる

’84年にホンダがCB750Fの後継として送り出したCBX750F。角型2灯ヘッドライトなどの外観に合わせ、リヤモノサスや、エンジンにも油圧式バルブクリアランス調整機構等を備えるなど、気鋭の1台だった。これはそのCBX750Fを元にオーナーが手を入れていった車両だ。

「CB-Fも持っていて、パーツも持っていたんです。それでこのCBXは、エンジンはかかるけどギヤが入らないという車両を見つけて、5万円くらいで買ったものです。エンジンを開けてみるとシフターが折れている。まあ数千円のパーツでしたから、あるパーツを組もうって手を入れはじめました」

CBR1100XXのスイングアームやドゥカティ・ムルティストラーダのフロントフォークなどが“あるパーツ”で、普通なら加工流用すれば収まるとも考えるところだろうか。

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「それがCBXのピボットは狭いし、ピボットシャフトは細い。スイングアームは加工で行こうと。でもピボットは拡大しようにも大きなフライス盤が要ります。友人のところで加工して入るようにして、ショックのアッパー側もマウントを作りました。

そこからも苦労の連続(笑)で、まあ入ったはいいんですけど、ショックの動きもリンク比も合わないんですね。結局リヤショックは3つ換えて、リンクプレートはもっと多く作っては走りを繰り返しました。チームCB’sの市本さん(’23年逝去)からもアドバイスをもらって、溶接や旋盤加工もさっきのフライスのように友人に頼んで、進めていきました。走っている時はいいんだけど、止まっている時にサスが沈まなくて足が着かないとか、走り出すとサスがただ入ってしまう(効いてない)とかを繰り返しながら、ようやく仕様が決まりました」

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フロントはムルティストラーダ用ステムのステムシャフトが太く、これをクリアするためにベアリングを大径化して装着。フレームの補強並みにフロントがしっかりする効果が得られた。結果、サーキットランでもかなり走れる現代的な17インチの足まわりが手に入った。

ただ、CBXは純正でテールが長いため、苦労した足まわりの完成後にシートレールとシートをカット、そしてショート化することでルックスのバランスも整えた。’80年代モデルに多かった機種の独自性、今見てみれば特殊性も合わせ持っていたのだが、それをクリアしての完成。これは楽しいはずだ。

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外装は基本的にCBX750F純正だが、ヘッドライトは角型2灯から片側丸目に変更している。左右マスターシリンダーはNISSINラジアルを使う。

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メーターはワンオフカーボンパネルの中央にオートゲージ・エンジン回転計、右にデイトナ速度計。さらに左に油温、電圧計を配置。USBソケットも備えてある。

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シートとシートレールは車体全体のルックスバランスを整えるため、それぞれ途中で約7cmカットして再接続した。

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カラーリングはオーナーがもう1台所有しているCB-Fと同じオレンジを、CBX750F純正ラインを生かして施している。

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当時新開発された空冷DOHC4バルブ747ccの直4エンジンはノーマル。入手時に聞いたギヤ不調を確認するために開けてみるとカムチェーンテンショナーがRC42用になっていたため、入手時点で開けた形跡はあったとのこと。不調はシフターの交換で解決し、以後好調。キャブレターはアフター品にも専用品がなく、CB's市本さんがCB750(RC42)用にとロットでオーダーしていたFCRφ35mmを分けてもらい、それを使った。

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フロントフォークはドゥカティ・ムルティストラーダ用倒立で、フレーム側はヘッドパイプのベアリング径を大きくすることでステムごとコンバート。ブレーキまわりもCBR1100XXディスクなど流用で構成する。アクスルのφ25mmへの大径化やステムベアリング大径化はフレーム補強に同じような効果が得られたとも。

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スイングアームはCBR1100XX加工、ホイールは16/18インチからCBR1100XX用3.50-17/5.50-17サイズに変更している。

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リヤサスのリンクはCB's市本さんのアドバイスも採り入れながら、いくつも製作と試走を重ねた上でこのように完成に漕ぎ着けた。

取材協力:市本ホンダ(Team CB's)

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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