2023年9月24日、MotoGP第13戦インドGPがインドのブッダ・インターナショナル・サーキットで行われた。アジア・パシフィックラウンドの初戦は初開催となるインド。非常に熱いコンディションの中行われたレースは、ライダーにとって厳しい戦いとなった。

初代ポールシッターはベッツェッキ! ドゥカティ勢が上位独占

画像: 初日の好調をキープしたベッツェッキ。初開催のサーキットで初代ポールシッターとなった。

初日の好調をキープしたベッツェッキ。初開催のサーキットで初代ポールシッターとなった。

戦いの舞台は初開催のブッダ・インターナショナル・サーキットは、全長4.96km、最大直線長1006m、右コーナー8、左コーナー5で構成されている。過去にはF1も開催されていた同サーキットには、ロングストレートから勾配のある低速コーナーまで様々なサーキットの特徴が見受けられる。

MotoGPでの開催が初ということもあり、波乱も予想されていたインドGP。今シーズン、これまでにない苦戦を強いられているホンダ勢だったが、ホンダのワークスチームであるRepsol Honda Teamが2台揃って直接Q2に駒を進めるというサプライズがあった。

インドでMotoGPが開催されるのは今年が初。初日午後のプラクティスの結果、苦戦が続いてきたレプソル・ホンダの2人が直接Q2へ進出するというサプライズがあった。一方で中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU )は転倒もあって21番手タイムと苦戦し、Q1からのスタートとなった。

予選Q1では各ライダーが初日に記録したベストタイムを続々と更新。その中でも大きくタイムを更新したブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)がトップ、ラウル・フェルナンデス(CryptoDATA RNF MotoGP Team)が2番手につけセッションは後半戦へ突入する。

Q1前半を2位で折り返したフェルナンデスが1分44秒410をマークしトップに浮上。そこにアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)が1分44秒519で2番手に続くもセッション最終盤で転倒を喫してしまう。

しかし、この2台のタイムを上回るライダーは現れず、フェルナンデスとアレックスがQ2進出を決めた。しかし、アレックスが転倒の影響でQ2の出走を断念している。Q1から出走していた中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)はフリー走行での転倒も影響してかQ1は5番手にとどまり、Q2進出とはならなかった。

ブッダ・インターナショナル・サーキットでの初のポールポジションが決まるQ2。現在ランキング2位で勢いに乗るホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)がいきなり1分44秒520の好タイムをマーク。

マルティンはさらに1分44秒153まで自己ベストを更新。ライバル勢にトップを譲ることなくセッションを折り返す。

マルティン以外のドゥカティ勢も好タイムを記録するもマルティンには届かない。しかし、残り2分を切ったところでマルコ・ベッツェッキ(Mooney VR46 Racing Team)がスーパーラップを披露。1分43秒947をマークし暫定のトップに浮上する。

逆転を許したマルティンはラストアタックでセクターごとに自己ベストを更新するも僅かに届かず。ベッツェッキが初開催のブッダ・インターナショナル・サーキットで記念すべき初のポールシッターとなった。

画像: ランキングのトップ3が上位を占めたインドGP予選。

ランキングのトップ3が上位を占めたインドGP予選。

2位にマルティン、3位にフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)、4位にはルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)が入り、ドゥカティ勢がトップ4を独占する強さを見せている。

Q2に直接進出を果たしたRepsol Honda Teamの2台は、ジョアン・ミル(Repsol Honda Team)が5番グリッド、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)が6番グリッドを獲得。決勝は2台揃ってセカンドロウからのスタートとなる。

画像: チャンピオン争いで後がないベッツェッキ。バニャイア、マルティンを抑え、見事ポールポジションを獲得した。

チャンピオン争いで後がないベッツェッキ。バニャイア、マルティンを抑え、見事ポールポジションを獲得した。

マルティンがスプリントを制し連勝! マルク・マルケスが開幕戦以来の表彰台獲得

画像: スタート直後のターン1。マリーニがジャックナイフ状態で止まりきれずチームメイトのベッツェッキに追突。左鎖骨を骨折したマリーニは検査のため病院へと運ばれ、決勝レースは欠場となった。

スタート直後のターン1。マリーニがジャックナイフ状態で止まりきれずチームメイトのベッツェッキに追突。左鎖骨を骨折したマリーニは検査のため病院へと運ばれ、決勝レースは欠場となった。

スプリントレース前に行われたMoto3クラスの予選ではスコールに見舞われたことにより、主催者はスプリントレースの開始時刻を遅らせることを決定した。現地時刻17時にピットレーンがオープンされ、夕陽が差し込むドライコンディションの中、11周でスプリントレースが行われた。

2番グリッドスタートのマルティンが好スタートを決めトップでターン1に。一方、ポールポジションスタートのベッツェッキはブレーキングで止まりきれなかったチームメイトのマリーニに追突され大きくポジションダウン。トップから一転、後方からの追い上げを強いられてしまった。

また、同じくスタート直後のターン1ではポル・エスパルガロ(GASGAS Factory Racing Tech3 )とステファン・ブラドル(Repsol Honda Team)が転倒し、マリーニを含めた3名がここでレースを終えている。

ベッツェッキの脱落もあり、マルティンは快走。2位以下との差を拡げていく。後方では、上位でレースを進めていたミルがターン3で転倒。4周目にリタイアとなってしまった。

マルティンが独走、2位のバニャイアも単独での走行となる中、3位のマルク・マルケスにビンダーが接近。ビンダーは接近戦に持ち込むもマルケスを抜くまでには至らない。

画像: 他を寄せ付けなかったマルティンがスプリントレースで連勝を飾った。

他を寄せ付けなかったマルティンがスプリントレースで連勝を飾った。

先頭のマルティンは余裕を持ってトップチェッカー。前戦サンマリノに続き圧倒的な速さでスプリントレースを制してみせた。2位にはランキング2位のバニャイアが堅実な走りで2位、3位にはマルク・マルケスが入り、開幕戦ポルトガルGP以来のスプリントレースで表彰台獲得となった。

チームメイトに追突され、後方に下がってしまったベッツェッキだったが、ファステストラップを刻みながらポジションを上げていき5位でフィニッシュ。決勝レースではマルティンとベッツェッキの異次元のバトルが期待された。中上は粘りの走りで13位完走を果たしている。

画像: 開幕戦以来の表彰台を獲得したマルケス。ミルも上位を走行するなど今シーズンベストと言える内容だった。

開幕戦以来の表彰台を獲得したマルケス。ミルも上位を走行するなど今シーズンベストと言える内容だった。

また、決勝レースでは高温を理由に周回数が24周から21周に減算することが決定された。

バニャイアがまさかの転倒! ベッツェッキが独走でインドGP初代ウィナーに

画像: 圧倒的な速さでポールトゥウィンを飾ったベッツェッキ。

圧倒的な速さでポールトゥウィンを飾ったベッツェッキ。

猛暑の中で行われた決勝は、当初予定されていた24周から3周減算の21周で行われることになった。 

スプリント同様、好スタートを切ったのはマルティン。しかし、ターン4でラインを外し膨らんでしまい後退してしまう。これにより、トップにはベッツェッキが浮上することとなった。

2位につけるバニャイアはベッツェッキにプレッシャーをかけるも、ペースの良いベッツェッキが徐々に引き離し独走体制を構築する。

オープニングラップのミスでポジションを落としてしまったマルティンだったが、持ち前のハイペースで追い上げバニャイアを攻略。中盤に差し掛かるタイミングで2位に浮上した。

チャンピオン争いでこれ以上の接近を許したくないバニャイアは、13周目にターン9でマルティンをパスし2位に再浮上。しかし、翌周のターン5でまさかの転倒を喫してしまい、痛恨のノーポイントとなってしまった。

チャンピオンシップで2位と3位のベッツェッキとマルティンがともに1位と2位を走行。後方では、3位のファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)が2位のマルティンとの距離を詰めていく。

先頭のベッツェッキはマルティンに8秒ものギャップをつけ独走でトップチェッカー。ランキング争いでも大きな意味を持つ優勝となった。

2位争いはファナルラップの最終コーナーまでバトルが繰り広げられた。マルティンはターン5でクアルタラロにパスされるも、ターン9の立ち上がりで2位を奪い返した。マルティンが2位、ポテンシャル不足に苦しみながらも、クアルタラロが殊勲の3位表彰台を獲得している。

画像: バニャイアのリタイアにより、チャンピオン争いがさらに熾烈に。

バニャイアのリタイアにより、チャンピオン争いがさらに熾烈に。

次戦は今週末に行われる日本GP。インドGPではホンダの躍進があり、ヤマハのクアルタラロは表彰台を獲得した。ドゥカティやアプリリアとの差はまだまだではあるが、母国凱旋を前にポジティブな内容だっただけに、日本GPでは一矢報いてくれることに期待したい。

そして、今シーズンは我慢の連続だった中上にとっても母国GPとなる。ホンダ勢の転倒が相次いだ今シーズンだが、その中でもマシンを確実にゴールに導き、現状できる最高の仕事をこなしてきた中上。

この仕事ぶりもあり、来年もLCRから継続参戦が決定している。来季が決まった今、気負うことなく、大観衆が見守る中で今シーズンベストの走りを見せてほしい。

レポート:河村大志

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