2023年3月24日、MotoGP2023年シーズンが開幕した。MotoGPでは初の試みであるスプリントレースの導入やマルク・マルケスの復活、新しい勢力図など見どころ満載な今シーズン。そんなシーズン開幕の舞台、ポルトガルのアルガルベサーキットはこれから始まる期待感と興奮、そして失望や怒りなどさまざまな感情が混ざり合っていた。

いきなり魅せた! 怪我明けのM.マルケスが驚愕のポールポジション獲得

画像1: www.motogp.com
www.motogp.com

昨年までは金曜日にFP1とFP2、土曜日にFP3、FP4、そして予選が行われ、日曜日にウォームアップと決勝レースという流れだった。しかし今季からスプリントレースが行われるため、MotoGPクラスのスケジュールも変更することになった。

金曜日の日程は変わらず、土曜日にFP3、予選、そしてスプリントレースが行われる。これまでFP4だった時間帯に予選が行われることになる。

そして今季初の予選を制したのは大怪我からの復活を狙うマルク・マルケス(Repsol Honda Team)だった。

今年から金曜日に行われるFP1とFP2のコンバインドタイムで予選のQ1とQ2に組み分けられ、テストの段階から苦戦が続くホンダ勢は4台全員がQ1からの出走となった。

しかしマルケスはQ1をトップで通過し、苦戦が続くホンダ勢で唯一のQ2進出を決めた。また、今年からヤマハからアプリリアにスイッチしたRNFのミゲル・オリベイラ(CryptoDATA RNF MotoGP Team)もQ1で2位に入りQ2進出を決めている。

ポールポジションを争うQ2では、ドゥカティからKTMに移籍したジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)が速さをみせた。初日のフリー走行で更新したレコードタイムをさらに縮める驚速タイムでトップに躍り出る。

しかしそんなミラーのタイムを更新したのはやはりドゥカティ勢だった。ディフェンディングチャンピオンのフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)がミラーのタイムを上回りトップに浮上。このままバニャイアがポールポジションを獲得すると誰もが思っていた。

しかしマルケスがラストアタックでバニャイアの区間タイムを更新しながら周回。なんとトップタイムを記録しポールポジションを獲得して見せたのだ。

ポテンシャルが劣るマルケスは、前方に走るマシンを後追い、スリップストリームを利用してバニャイアのタイムを上回ったのだ。Q2進出は望めないと語っていたマルケスだったが、可能性がある限り、利用できるものは全て利用してのポール獲得。1番を獲るための執念は凄まじいものだった。

2番手はバニャイア、3番手はホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)とドゥカティ勢が続いた。

画像2: www.motogp.com
www.motogp.com

史上初のスプリントレースはディフェンディングチャンピオンのF.バニャイアが制する

画像3: www.motogp.com
www.motogp.com

予選が終わり、その同日に行われたスプリントレースは晴天の中行われた。決勝レースの半分、12周で行われるスプリントレースは、レース距離が短いため、決勝レースよりアグレッシブにレースを進めることができる。

しかし、万が一転倒・クラッシュといったアクシデントに巻き込まれれば、翌日の決勝レースを棒に振ってしまうおそれもあるため、匙加減が難しいのだ。

史上初のスプリントレースをポールポジションからスタートするマルケスはスタートを決めトップで1コーナーに入っていく。しかし2周目のホームストレートで持ち味のストレートスピードを使いドゥカティの2台がマルケスをオーバーテイク。今年もドゥカティは強烈な直線スピードを見せつけた。

ドゥカティの2台に先行を許したマルケスは後ろにつくミラーとオリベイラにもパスされてしまう。マルケスを攻略したミラーは勢いそのままに5周目にバニャイア、6周目にトップのマルティンをもパスしトップに浮上。

しかしミラーは最終コーナーからホームストレートにかけて強烈なスピードをみせるドゥカティ相手にポジションを守ることができなかった。マルティンとバニャイアに抜かれたミラーは何とか4位のオリベイラの猛攻を防ごうとするも、2台揃って1コーナーをコーナリングがワイドになってしまい、その隙にマルケスにポジションを奪われてしまう。これでマルティン、バニャイア、マルケスがトップ3となった。

トップ争いはバニャイアがマルティンをファイナルラップのターン5でオーバーテイクしそのままチェッカー。バニャイアが記念すべき初のスプリントレースを制した。

3位争いはオリベイラとのバトルを制したマルケス。ライバル勢に遅れをとっている中、予選だけでなくレースでも結果を残したマルケスに6度の世界王者としての意地をみた。

勢いに乗るドゥカティ勢だが、スプリントレースでエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)がルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)の転倒に巻き込まれクラッシュ。怪我を負ってしまい決勝レースは欠場となってしまった。

フリー走行で大クラッシュを喫し、顎と脊椎を骨折してしまったポル・エスパルガロ(GASGAS Factory Racing Tech3)も含めて、早くも2名のライダーが決勝に出場できなくなってしまっている。

画像4: www.motogp.com
www.motogp.com

勢いに乗るアプリリアの猛追を抑えきったバニャイアが優勝しフルポイント獲得

画像5: www.motogp.com
www.motogp.com

刺激的なスプリントレースを終え、日曜日に行われた決勝レース。前日同様晴天に恵まれ、気温は22度、路面温度は36度のドライコンディションで決勝レースが行われた。

25周で行われる決勝は地元の声援を一身に受けるオリベイラが好スタートをきめ、予選4番手から一気にトップに躍り出た。オリベイラ、マルティン、バニャイア、マルケスの4台でトップグループが形成される中、2周目にバニャイアがマルティン、そしてオリベイラを攻略しトップに浮上。

そして迎えた3周目。4番手を走っていたマルケスがターン3の侵入で減速できずマルティンに接触、そしてコーナーを抜けるためフルバンク中だったオリベイラにも追突してしまうアクシデントが発生した。

これによりマルケスとオリベイラがリタイア。マルティンもポジションを落としてしまう中、2位にあがってきたのはテストでも好調だったアプリリアのマーヴェリック・ヴィニャーレス(Aprilia Racing)。ビニャーレスのペースが良く、トップのバニャイアに急接近しトップを狙っていく。

しかしレース中盤にバニャイアとビニャーレスの差が徐々に開いていく。ビニャーレスもペースを上げるが、バニャイアがさらにペースをあげトップの座を明け渡さずそのままチェッカー。スプリントレースに続き、決勝レースでも優勝し開幕戦だけで37ポイントを獲得。チャンピオンらしい完璧なシーズンスタートを決めた。

2位にはアプリリア3年目のシーズンとなるビニャーレスが入った。チャンピオン相手と接近戦を演じたビニャーレスはMotoGPクラス初の3メーカーでの優勝という快挙を今シーズン中に達成する可能性をみせた。

3位にはMotoGP2年目のマルコ・ベッツェッキ(Mooney VR46 Racing Team)が入った。1年型落ちとはいえ、昨年のチャンピオンマシンを駆るベッツェッキも力強い走りを見せてくれた。

画像: https://www.motogp.com/ja/gallery/2023/03/26/motogp-race-grande-premio-tissot-de-portugal/451066
https://www.motogp.com/ja/gallery/2023/03/26/motogp-race-grande-premio-tissot-de-portugal/451066

マルケスのショッキングなクラッシュがあったホンダ勢は、チームメイトのジョアン・ミル(Repsol Honda Team)が11位、中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)は12位、そしてアレックス・リンス(LCR Honda CASTROL)がホンダ最上位の10位を獲得している。

地元ライダーであるオリベイラを巻き込んでのリタイアということもあり、サーキット中からブーイングを受けたマルケスはオリベイラとRNF、そしてポルトガルのファンに謝罪した。オリベイラは今回のアクシデントの影響で次戦のアルゼンチンGPを欠場することを発表。

そしてマルケス自身もこのアクシデントで右手第1中手骨を骨折してしまい、スペインに戻り手術を受けた。怪我の影響でマルケスもアルゼンチンGPを欠場することが発表されている。これによりマルケスに課せられたダブルロングラップペナルティは、マルケスが復帰したグランプリの決勝レースで適応されるという。

画像6: www.motogp.com
www.motogp.com

マルケスによると、ターン3で前方のマシンをオーバーテイクするつもりはなかったといい、コーナー侵入時にフロントが激しくロックしてしまったことが今回の接触の原因だと釈明した。今回のアクシデントから、ホンダのマシンがトップを走るポテンシャルはまだないこと、そして、上位に行くためにライダーに相当な無理を強いてしまっていることが見てとれる。

マシンの戦闘力を嘆くことなく、少しでも上位に食い込むために限界までマシンのポテンシャルを引き上げようとしたマルケス。しかしそれが最悪の結果を生んでしまった。苦しい状況ながらも、残りのホンダ勢3台が完走し、ポイントを持ち帰ってきている。彼らが持ち帰ってきた貴重なデータが今後の躍進の足がかりになることを願いたい。

2023 MotoGP 開幕戦 決勝結果

画像: resources.motogp.com
resources.motogp.com

レポート:河村大志

This article is a sponsored article by
''.