レストアとオーバーホールにカスタムを同時進行する

2022年に登場50周年を迎えたカワサキ900スーパー4・モデルZ1。今も多くのファンがいて、多くの個体が現存する。ノーマル状態で乗るライダーもいれば、多彩なカスタムを施して乗るライダーもいる。

そこでこの車両だ。ACサンクチュアリーによるコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)のひとつで、シリアルナンバー(通算製作番号)は562となっている。RCMは2000年頃に成立したもので、その当時から現代的な前後17インチ・ラジアルタイヤを履くことと、エンジンのライフ向上を軸に、Zを現代バイクのように走らせられるようにすることを主眼にしてきた。

画像1: レストアとオーバーホールにカスタムを同時進行する

前者についてはサンクチュアリー・オリジナルフレーム補強ステージ2で高まるグリップ力に車体を適合させる。この時、ワイドリヤタイヤを履く際にドライブチェーンが干渉しないようにする加工やリヤショックを同様に外に出しながら17インチでの適切なレバー比が得られるレイダウン加工を行う。

さらにフロントフォークオフセットやホイールベースを17インチ適正とするステアリングステムやスイングアームも用意して、車高や姿勢にまでこだわる。ここでフレームは単に加工するのでなく、曲がりやゆがみの修整に内部確認を行い、修正加工後にはブラスト処理してパウダーコートして今後も長く乗れる配慮を加える。

エンジン内部も消耗したパートの新品交換、弱点対策部品への換装、すでに純正がないものへの修正や調整を行い、これから楽しめる時間を延ばす配慮を、ライフパッケージというメニューで行ってきた。排気量拡大やカム変更などによってより元気良さを増すパワーパッケージというメニューも加工も選べる。ライフ&パワーというメニューもOKだ。

画像2: レストアとオーバーホールにカスタムを同時進行する

これらの内容はカスタムとしての特別な加工にも思えるが、今Zという車両を目の前にした場合、それがノーマルだとしても同じようなメニューが必須となっている。それだけの年月が経っているのだ。

使用による消耗に対して、それは乗っていない時期があっても、時間経過による劣化は起こる。ゴムや樹脂、オイルやグリスなどのケミカルもそうだ。錆をはじめとした酸化。しかもそれがどの部分にも起こりうる。エンジンの中、フレームの内部……。かつてはカスタムしないのなら通常整備でいいと思われたものが、レストアやフルオーバーホールという手を入れなければいけなくなっている。

RCMでは、そうした作業を行いつつ、アップデートできる部分やオーナーの嗜好を反映したい部分にカスタムの手を加えている。つまり新車に近い状態を作り込みながらカスタムの完成車を作っているというわけだ。

さらにRCMとしてだけでも20年を超える中で、これらのメニューは進化し続けている。足まわりや操作系に使われるパーツ自体の進化。エンジンなら、より高い精度の加工による精密化、そこから来る耐久性やフィーリングの向上。

新たにDiNx(ディンクス)でのエンジン加工が加わったことでそんな進化が可能になったと、サンクチュアリー・中村さんも教えてくれる。同じような手間の中に、新しい手法も盛り込んで見えない部分も進化させ、Zというバイクへの可能性を高める。Zのカスタムはどこまで進化を続けていくのか。この車両を見て、そんな思いも立ち上ってくる。

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Detailed Description 詳細説明

画像1: Detailed Description 詳細説明

メーターはZ1純正で、ハンドルは17インチのネイキッドとして適した低めのポジションを作ってくれるデイトナ・RCMコンセプトハンドルバー。クラッチは油圧駆動にコンバートされ、ブレンボRCSマスターを使う。フロントマスターシリンダーもブレンボRCS。ステアリングステムは17インチでの適正トレール量を得るべくフォークオフセット[純正値:60→]35mmのスカルプチャー・ステムキットTYPE-1を使う。

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シートは質の高い乗車感や良好なライディングポジションを作り、スペアも手に入れやすいデイトナ・RCMコンセプトシートを装着。

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Z1そのものの外観を印象づけしつつホワイトのライン部にグラデーションも加えたブラックのタイガーカラーはエンゼルがペイントしている。

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エンジンはRCMにおける耐久性重視=ライフパッケージによる[純正値903→]958cc仕様。加工にはDiNx(内燃機加工業)の手が入り、これまで以上にライフパッケージとしての耐久性が高まり、かつスムーズな特性が得られたと言っていい。その仕様はピストンがピスタルレーシングφ68mm鍛造でクランクは芯出し修正を行い、シリンダーもボーリング&ホーニング加工が精密化。Zでずれているものが多いバルブガイドは入れ替えバルブはPAMS HFバルブ/シートカット加工などが施されるなど、細部にまで目が届く。

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キャブレターはミクニTMRφ36mmを使用。マフラーはナイトロレーシング 手曲げチタンEXショートテールのヒート仕様を組み合わせる。

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足まわりも常々進化するものを採り入れている。フロントフォークはオーリンズRWU([純正値Φ36→]Φ43mm)でフロントブレーキはブレンボGP4 RXキャリパーにRCMコンセプトφ320ディスクの組み合わせ。これらで17インチハイグリップタイヤの性能を引き出すのだ。

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リヤブレーキはブレンボCNC P2 34キャリパーとサンスター・プレミアムレーシングφ250mmディスク。チタン製サイレンサーはナイトロレーシング・ストレートV-1だ。

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フレームはサンクチュアリーオリジナルフレーム補強ST-IIで17インチに適したディメンションを得て、チェーンライン軌道確保(オフセット値は21mm)やリヤサスワイドレイダウン加工が施される。リヤショックはオーリンズ・レジェンドツインでスイングアームはスカルプチャーRCM専用ワイドスイングアーム。ホイールはアルミ鍛造のO・ZレーシングGASS RS-Aで[純正値1.85-19/2.15-18→]3,50-17/5.50-17サイズ。ドライブチェーンはEK530RCMを使う。

取材協力:ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店)

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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