ホンダ「NT1100」に続く、アフリカツインエンジンを使用したロードスポーツは実に40年以上ぶりに登場した「メーカービルドカフェレーサー」。速くはない、でもちょっと速い。スゴくはない、でもヤルときゃヤルぜ。そんな存在のオートバイのことをカフェレーサーと呼ぶのだ。
文:中村浩史/写真:森 浩輔/撮影協力:ライダースベース リバティ

ホンダ「ホーク11」インプレ

画像1: ホンダ「ホーク11」インプレ

約50年ぶりによみがえったメーカービルドカフェレーサーは、アフリカツイン系のユニカム並列2気筒エンジンを使用したロードスポーツだ。

同系エンジンを使ったロードスポーツNT1100は、クラッチレバーレスのDCT仕様のみのイージーツーリング、そしてレブル1100はクルーザー。アドベンチャーであるアフリカツインのパワーユニットが、いろんなカテゴリーに分かれたことになる。

そのホーク11に与えられたのは「眺めて美しく、見られても誇らしい」スタイリング。ただし、このスタイリングがカッコいいかどうかは、あくまで個人の主観。50年の歴史も踏まえヨンフォアは、誰もが納得する普遍的な美しさを現在も持っている。その点でいえば、ホーク11はまだまだこれからだ。

けれど、ホンダとしては1985年のGB400TTマークⅡ以来、久々に純正採用したロケットカウル、その特徴的なカウルとクリップオンハンドル、バーアンダーミラーの組み合わせのチャレンジは評価したい。好き嫌いは分かれようが、今までにないものを作ろう、というホンダのスピリットが垣間見えるスタイリングと言えるだろう。

画像2: ホンダ「ホーク11」インプレ

気がかりなのは、ステアリングヘッド以降のボディデザインがオーソドックスなこと。オーバーハングの少ないショートデッキテールにチャレンジは感じられるものの、ロケットカウルの存在感に負けていると感じるファンも少なくないだろう。

誰もが考えるように、トランスミッションこそ違えど、NT1100とホーク11は兄弟モデル──という思いを抱きつつ乗り始めると、これがびっくりするほど違うオートバイだった。NT1100のことを、アフリカツインがイージーに、よく走るロードスポーツになった、と解釈していたんだけれど、これがホーク11も乗り比べてみると、NTはツーリングバイクで、ホークはもっとスポーツバイクだということがしっかりとわかる。

まず軽い! NTと比べると、ホークは34kg、いや体感的にはもっと軽い。NTも、大柄なボディサイズの割には軽快に動くモデルだったけれど、ホーク11の車両重量はCB1000Rと同じ数値。並列4気筒のCBとは、重心やサスペンションの動きのせいか、CBより押し引きが軽い。

走り出しも軽い。低回転からトルクのある並列ツインは、270度クランクらしい不等間隔爆発の力が路面を蹴り出してくれる。決してドンと車体を押し出す力ではなく、NTやレブルよりもショートなファイナルレシオが、車体を進めてくれる感覚だ。

Honda NT1100
2022年

画像4: ホンダ「ホーク11」インプレ(2023年)カフェレーサーとは何なのか? その歴史を振り返りながらライダースカフェへ

ホーク11と同系のエンジンを搭載するロードスポーツに、2022年3月にデビューしたNT1100があるが、こちらはクラッチレスのDCT車のみの設定。NT1100は168万3000円と、ホークの方が28万6000円安い価格設定となっている。ちなみにレブル1100(価格:113万8500円~)も同系エンジンを搭載する。

お気に入りのカフェをもう一軒。そんな大人のオートバイの楽しみ

もうひとつ意外だったのは、ホークのハンドリングマシン的な動きだ。基本的にはエンジン/フレームともアフリカツインとNTをベースに作られているはずなのに、キャスターを少し立てたことで、フロント荷重が高く、姿勢も少し前下がり、後ろ上がり。低速で走っている時でも、フロントにしっとりと安定性があるのだ。

ハンドリングのキャラクターは、そうペースを上げなくてもハンドルがきれいに切れ込むというか、舵角が入りやすいタイプ。これを、メリハリをつけてワインディングでやると、加速→減速→ブレーキングのきっかけで回頭性が前に出てくるから、ライダーは思う以上にハンドルバーに入力しないこと。このボディサイズ、このホイーベースの大柄な車体が、軽くくるっと向きを変えてくれる。これ、サイズを考えると意外な運動性です。

画像3: ホンダ「ホーク11」インプレ

エンジンは8000回転からレッドゾーンに入るように、決して高回転型ではない。面白いのは、アイドリングすぐ上の2000回転から4000回転弱あたりにひとつ、そして6500回転あたりをピークにもうひとつ山があって、下の回転域では270度クランクのパルスあるトルクを、その上は連続するスムーズなパワーフィーリングを感じることができる。

この回転域は、アフリカツインやNT、レブルでなかなか踏み込まなかったエリアで、こんなところにもパッケージの妙が現れている。

ホーク11は、1100ccの大排気量、102PSの大パワーを、こわごわとではなく扱うことができるキャラクターだ。決して速いオートバイではないが、大柄な車体を軽々と扱うことが難しくないモデルなのだ。

ホンダはホーク11の開発のテーマに、ビギナーやパフォーマンスを求めるライダーよりも、ベテランがじっくりオートバイと付き合う、というポイントを挙げている。長距離を走るならばアフリカツインとNTを、街中を気持ちよく流すならレブルを、そしてホーク11は日帰りで200~300kmくらい走って帰ってくるに、ちょうどいいオートバイを目指したのだと思うのだ。

ホークを手に入れたら、いつものお気に入りのカフェと別にもう一軒、もう少し遠くのカフェでもレストランでも開拓したくなってくるだろう。

それもまた、大人のカフェレーサーの楽しみなのだから──。

画像4: ホンダ「ホーク11」インプレ

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