3年ぶりの日本GPは快晴で!
台風接近で大雨と雷に苦しめられた土曜日とうって変わって、台風一過で朝から快晴となった日曜日のモビリティリゾートもてぎ。Moto3→Moto2→MotoGPともドライコンディションで行なわれ、3年ぶりの日本グランプリに詰めかけた、日曜だけで3万2千の観衆が熱狂しました! いやぁ、もてぎの日本グランプリがこんないい天気で行なわれるなんて、何年振りのことでしょうか! いつももてぎのGPといえば、雨を回避しただけでやったー!って気分になるので、こんなにいい天気だなんて、幸せすぎます! やっぱりレースに限らず、イベントは天気が8割だねー!
オ―プニングレースのMoto3は、ポールポジションの鈴木竜生、4番手スタートの佐々木歩夢の走りが期待される中、鈴木がホールショットを決めて、佐々木が3番手あたりでオープニングラップをスタート。すぐにイザン・ゲバラ、セルジオ・ガルシアが前に出ますが、鈴木も佐々木も慌てることなくトップグループで周回を消化。
すぐに佐々木がトップに浮上すると、ゲバラをはさんで鈴木が3番手につけ、トップグループは鈴木、佐々木に、ゲバラ、デニス・フォッジアという4台が抜け出しつつ、ここで4周目のV字コーナー立ち上がりで鈴木が転倒! 先頭集団は佐々木、ゲバラ、フォッジアにジャウミ・マシアが加わり、5番手以下を引き離す展開になります。
このままレース中盤は佐々木がレースを引っ張りますが、後方にピタリとつけたゲバラが終盤16周目に佐々木をかわすと、そのままジリジリと後方を引き離しはじめ、マシアも転倒。3台が4番手以下を大きく引き離して抜け出す形となり、ゲバラ→フォッジア→佐々木の順でフィニッシュ。
佐々木は優勝も狙える展開に持ちこみましたが3位フィニッシュ。これは2009年の青山博一さん以来、13年ぶりの日本人ライダーによる日本グランプリでの表彰台登壇となりました!
小椋 藍16年ぶりの快挙達成
しかし!日本人ライダーの表彰台登壇に沸いたもてぎでしたが、大興奮はこれで終わりませんでした。小椋 藍がチャンピオン争いを繰り広げるMoto2クラスは、しかし小椋が予選13番手と大不振! さすがに接戦極まるMoto2で、ここからの追い上げは苦しいか……と思われましたが、その小椋、5列目からロケットスタートを見せて、1コーナーまでに8番手あたりまで浮上します!
レースはポールシッターのアーロン・カネットに続いてフェルミ・アルデグラの2台がやや抜け出しますが、小椋はその間にもポジションを6番手、5番手まで上げてオープニングラップを終了! 3周目にはトニ・アルボリーノとバトルしつつ、2番手のアルディグラが転んで4番手へ、するとトップを走っていたカネットも転んで、チームメイトのサムキャット・チャントラ、アロンソ・ロペスに続く3番手に浮上! そのまま上位4台の差は縮まって、7周目にはチャントラのミスをついてロペスがトップに浮上! 小椋はその背後について2番手で周回します。
やや差をつけていたロペスですが、小椋はトップとの差をジリジリと詰め、ついに13周目にトップに浮上。ロペスの背後につけてから、パッシングが早かったですね。まだまだ周回に残りがあるのに、もう少し後にスパートした方がよかったんじゃないかー、と思ったんですが、小椋はそのままロペスとの差をぐいぐい広げて1周につき0秒5くらいずつ引き離していきます。
小椋はこのまま、ロペスとの差を最大で2秒近く広げてトップでゴール! なんて男だ、5列目から12台抜きで優勝してしまいました! 小椋、今シーズン3勝目を母国グランプリで!というライダーなら誰しも思い描く夢を実現して、2006年の、これまた青山博一さんの優勝以来、16年ぶりに日本のサーキットのセンターポールに日の丸を上げてみせました! 普段は感情を表に出さない小椋&青山監督が、さすがに気持ちを爆発させていましたね! 無理もない、それくらいすごい快挙です!
チャンピオン争いでは、ここまでランキングで先行されているアウグスト・フェルナンデスがこれも予選11位という低位置から、いつの間にか2番手まで追い上げて2位フィニッシュ。小椋が25ポイント、フェルナンデスが20ポイントを加算して、その差2ポイントで引き続き小椋が2番手、フェルナンデスがランキングトップのままです。うーむ、フェルナンデス、しぶといんです。
ホンダ、ヤマハ、スズキが主役にならない……
ラストレースのMotoGPクラスでは、決勝スタートの1コーナーで、ポールポジションのマルク・マルケスのインをスパッとついて、予選3番手のブラッド・ビンダーがホールショット! まだ負傷明けでフィジカルが万全じゃないんだよ、というマルケスは、3コーナーでホルヘ・マルティンの先行を許し、背後にミゲル・オリベイラ、ジャック・ミラー、マーベリック・ビニャーレス、ヨハン・ザルコが続きます。
チャンピオンシップリーダーのファビオ・クアルタラロは9番手あたり、それを追うフランチェスコ・バニャイアは10番手以下! オープニングラップはマルティンが制し、マルケスは5番手あたりまでポジションダウン。結局、ドゥカティ→KTM→ドゥカティ→KTM→ホンダ→アプリリアというオーダーで2周目に入ります。こんな上位集団、日本で見たことはありません。
この上位集団でペースがよかったのはミラー。オープニングラップを3番手で終えると、2周目には2番手、3周目にはトップに浮上します。ミラーの後方にはマルティン、その後方に少し間をおいてビンダーとオリベイラのKTM勢。ホンダ、ヤマハ、スズキが主役になりません……。
レース中盤では、日本人ワイルドカード勢に災難が襲い掛かります。まずは長島哲太が2コーナー立ち上がりで転倒すると、津田拓也のGSX-RRはアンダーカウルあたりに火が付き、そのままマシンをコースサイドに寄せてリタイヤとなってしまいます。
レースはこの後もミラー→マルティンが主導権を握り、3番手争いを2台のKTMが展開するというシーンが続く中、5番手を走っていたマルケスがなかなかポジションを上げず、2台のKTMの後方を走行。その後方にビニャーレス、ルカ・マリーニが続く展開が続いた後、ミラーはますますマルティンとの差を広げ、8周目に1秒差をつけると、10周目には3秒、14周目には4秒、18周目には5秒差となって独走! ミラーはこれが今シーズン6回目の表彰台で初優勝です!
2位ビンダーは、開幕戦以来2回目の表彰台で、マルティンはアルゼンチン→カタルニアの2位に続いての3位表彰台。4位にはラスト3周でオリベイラをかわしたマルケスがつけました。この後は連戦になりますが、マルケスの完全復活の日は近いようです。
予選の転倒で最後尾スタートとなった中上は、好スタートで1周目に5台抜きして20番手まで上がりますが、その後はペースが上がらず、徐々にポジションを下げてレース中盤には最下位に定着。それでも最後まで走り切って、前戦で負った左手の負傷に耐えつつ、精魂尽き果てた母国グランプリを終えました。
快晴のまま全スケジュールを終了した日本グランプリ。佐々木の歓喜、そしてその喜びも冷めやらぬうちの小椋の快挙! MotoGPでは日本勢の活躍こそ見られませんでしたが、日本で珍しくドゥカティやKTMの強さを見せつけられた一戦となりました。クアルタラロが上位に来なかったこともありますが、これが今シーズンの潮流なんですね。
グランプリはこれで来週にはタイGP、1週おいてオーストラリアGP、マレーシアGPの連戦があって、フライアウェイ4戦を消化して最終戦へと向かいます。
ちなみにクアルタラロは9位フィニッシュ、その背後にいたのに最終ラップで転倒してしまったバニャイアとのポイント差は18ポイントとなってタイGPへ向かいます。
写真/木立 治 文責/中村浩史