ハーレーダビッドソン初のアドベンチャーモデルとして2021年に登場。エンジンは排気量1252ccの水冷Vツイン、Revolutiuon Max1250は最高出力152PSという強力なもの。これをハーレーらしい個性に優れた機能性をミックスしたデザインの、余裕のあるサイズで快適性抜群な車体へ搭載。5つのライディングモードなどライダーをサポートするための電子制御デバイスも充実している。
文:濱矢文夫、アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行

ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」インプレ(濱矢文夫)

画像: Harley-Davidson PAN AMERICA 1250 SPECIAL 撮影車両はオプションパーツ装着車 総排気量:1252cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒 シート高: 869/890mm 車両重量: 258kg 税込価格:287万7600円〜

Harley-Davidson PAN AMERICA 1250 SPECIAL
撮影車両はオプションパーツ装着車

総排気量:1252cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
シート高: 869/890mm
車両重量: 258kg

税込価格:287万7600円〜

大型液晶メーターがスマホとリンクしてナビに変身!

〝使い込むほど手に馴染む〟という言い回しがあるけれど、その感覚だ。最初にどうしても出てくる違和感のようなものが、乗っている時間が増えることによって感性が平坦化していく〝慣れ〟とは違う。自分のやりたいこと、こう走りたい意思に歯向かうことなく従順でありながら、独自の機能性から新しい価値観を生み出した。いささか抽象的な表現になったが、これがパンアメリカ1250スペシャルに早朝から暗くなるまでずっと走り続けた2日間で得た感想だ。

正直、最初にこのモデルの存在を知ったとき、いくらアドベンチャーツアラーが流行しているとはいえ、魅力的なクルーザーメーカーとして確固たるブランド力があるハーレーダビッドソンが、この分野へ新たに参入してくる理由が理解できなかった。アドベンチャーモデルに必要とされる一般的な要素は、場所を選ばないマルチパーパス走行性能と長時間、長距離の移動をいとわない快適性と操作性の2つ。それをベースにして排気量の違い、販売価格、考えの違いで、取捨選択が出てくると思う。

画像1: ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」インプレ(濱矢文夫)

フロントフェンダーが高い位置で前に飛び出た、いわゆるクチバシのない造形で、前に向かって下に傾斜したスラントノーズではなく、横長LEDヘッドランプを持ったフェイスが、逆スラントノーズになっているのがおもしろい。そのフロントフェアリング、内側のダッシュボードから続いて、上面の幅があり、中央に樹脂製のコンソール風トリムが載った燃料タンク部分のカタチは、同社のツーリングファミリーに通じる雰囲気がある。見ただけでパンアメリカとわかるスタイリングは、他とはひと味、いやふた味も違う。

それでも機能がないと説得力がない。片手で上下させられるウインドスクリーンを最大に上げて高速道路を巡航すると、それと、その両サイドにあるついたてのような外装が向かってくる走行風をいなしてくれているのを体感。風圧に抗うために体力を使わなくていい。ただし、体の負担を小さくしても空気の流れは感じられて、人を惹きつけるモーターサイクルらしい感覚は残る。

画像1: 【インプレ】ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」(2022年)|快適性とワイルドさを両立したアドベンチャー
画像2: 【インプレ】ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」(2022年)|快適性とワイルドさを両立したアドベンチャー

夜間走行では、ヘッドランプは横方向に広範囲を照らしてくれてありがたい。その上に設置された単なるコーナーリングランプとは違う、リーンアングルによってコーナーに向けての照射が変わるアダプティブライトも実感できた。

この「スペシャル」には、電子制御によるセミアクティブの前後サスペンションが装備されていて、これは車両に加わる荷重によって制御を変化させる。停止時にまたがった段階では、身長170cmにはシートが高めだと思った。そこからイグニッションスイッチをオンにするとセミアクティブサスペンションが生き物のように動きグッと沈み込んで、足つきが良くなって驚いた。静止、停止時にはシート高を低くしてくれる。

画像2: ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」インプレ(濱矢文夫)

「スポーツ」「ロード」「レイン」「オフロード」「オフロードプラス」のライドモードによってストローク感や減衰は変わる。「スポーツ」ではよりクイックな動きでリーンして旋回。「オフロード」ではスタンディング姿勢でステップ荷重をしながら車体を上下にゆすると、柔らかく深く入り込んで、プログレッシブに減衰が効いてくるのがわかる。

車両重量258kgで本気でダートを走らせようとはしていないだろうと勝手に思っていたことを自省。試しにちょっとしたダートに出てみると、凹凸に対する追従や手応えは本気だ。名ばかりのマルチパーパスではないということ。このカテゴリーの定番となっている19/17インチ外径のリムに、万能タイプのミシュラン製のスコーチャーアドベンチャーを履いていたが、もっとダートよりのタイヤに履き替えて出直したくなる気持ちさえ生まれた。

完全新開発した水冷DOHC4バルブのVツインエンジンは可変バルブタイミンク機構を採用。スムーズで回して高回転域を積極的に使っていくと加速の伸びは良好。とはいえクルージングでは豊かなトルクにまかせて5千回転以下を保っている方が心地良かった。力強く粘りのあるトルクで穏やかに走ると楽だ。

水冷だし、Vバンクはハーレー伝統の45度ではなく60度でまったく違うのに、ビッグツインのテイストがそこはかとなくある。餅は餅屋ということ。ライディングモードによっての出力変化もわかりやすい。たとえモードが「スポーツ」でも扱いにくいところはない。

画像3: ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」インプレ(濱矢文夫)

ハードウェアだけでなくソフトウェアも注目ポイント。6.8インチタッチスクリーンディスプレイと、手持ちのスマートフォンとBluetoothでペアリングしておけば、ワイヤレスヘッドセットを使って電話をかけたりスマートフォンに入った音楽などを再生可能。さらにハーレー専用アプリをスマートフォンにダウンロードしてアカウントを作成し、車体番号を入力すると、行きつけのディーラーの登録だけでなく、出先でも近くにあるディーラーの詳細がわかり、もしものときなどに助かるから便利だ。

画像4: ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250スペシャル」インプレ(濱矢文夫)

メーターディスプレイにマップも表示でき、アプリから行き先を入れると案内がスタート、立派なナビゲーションとして活躍。GPSで走った距離やルートを記録したり、お気に入りルートの登録も。アプリからパーツリストやオーナーズマニュアルにもアクセスも可能で、天気予報や、登録した車両の燃料残量もわかる。すごい時代になったものだ。

細部にいたっていろいろなアイデアを投入し実現した、他とは違うけれど完成度は高い。アドベンチャーの頂上をめざして一本の道があり、多くはそこや、その側を登ってきた。このパンアメリカ1250スペシャルは、異なるアプローチから違う道を選んで高みに近づいたようだ。ハーレーのフィロソフィーがベースにあり、そこからオリジナル色をふんだんに表現した革新的なアドベンチャーである。

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