2019年にフロントタイヤを17→19インチへと大径化し、フラットダートの走破性を向上させたクロスオーバーモデルのホンダ400Xが、2022年1月、新たにフロントダブルディスクブレーキと倒立フォークを採用して登場! その走りがどのように進化および深化しているのか? 今回もしっかり走り込んで確認してきました!
談:伊藤真一/写真:松川 忍/まとめ:宮﨑健太郎
画像1: ホンダ「400X」インプレ(2022年)|オンロード寄りのクロスオーバーだけどオフロードもしっかり楽しめる?【伊藤真一のロングラン研究所】

伊藤真一(いとうしんいち) 

1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2022年は監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いて全日本およびアジアロードレース選手権などに参戦。

ホンダ「400X」インプレ(伊藤真一)

画像: Honda 400X 総排気量:399cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:800mm 車両重量:199kg 発売日:2022年1月17日 税込価格:85万8000円

Honda 400X

総排気量:399cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:800mm
車両重量:199kg

発売日:2022年1月17日
税込価格:85万8000円

大型免許だからと大型車を選ぶ…のではなくあえて400Xを選ぶという選択肢もアリ!?

400Xは2016年、2019年型をそれぞれ当企画ロングラン研究所で取り上げていますが、いずれのモデルも好印象だったので、新型の試乗を楽しみにしていました。寒い季節の取材でしたので、プロテクション効果の高いスクリーンを持つ400Xの取材だったのは、とてもありがたかったですね(苦笑)。旧型でも400Xのスクリーンは効いていると評価しましたが、新型でもその効果の高さを再認識しました。カウルも左右に張り出しているので、走っていて寒さを感じずに済みましたね。

新型に乗ってみて…400Xに限った話ではないのかもしれませんが、最近の400に乗ると「400ってこんなに走ったっけ?」と思ってしまいますね。ひと昔前は高速道路を走っているとき、リッターバイクに比べると400はちょっとタルい印象を受けたりもしましたが、そういう感じが全然ないです。当然馬力はリッターバイクなどの大排気量車に比べると出ていませんけど、不足を感じさせない実用トルクが出ているからなのでしょう。

画像1: ホンダ「400X」インプレ(伊藤真一)

新型400Xに跨って走り出してからしばらくは、自分が今所有しているヤマハXZ400D(1983年型)の走りと比べていました。同じ400ccでも400Xの方が全然良くて、全然違うなぁ…と。当たり前のことかもしれませんが、昔の400ツインってXZ400Dみたいな感じで、それに比べると雲泥の差だなぁと改めて思いました。イメージとしては、ひとつ排気量のグレードが上がったような…。昔の400ccって、今の250ccくらいの感じですが、新型400Xは750cc、もしくは650ccくらい排気量があるような力感があります。

また、昔のオン・オフどちらも走れる400ccモデルは、車重は250ccより重くて馬力は大型車より小さく、魅力的なモデルが少なかったです。免許制度に合わせて400ccモデルを出していた…という感じがありましたが、400Xに関してはそういう感じは全然ないです。今は大型免許を取得することが昔より簡単になり、せっかく大型免許を持っているのだからとリッターバイクを選ぶ人も多いですね。ただ取りまわしが大型アドベンチャーなどより全然楽ですから、技量や体格的に無理をするくらいであれば、積極的に400Xを選ぶというのもアリと思いました。

動きに倒立式っぽさを感じさせない、新型400Xに新たに採用されたSFF-BPフォークの作動性

所有欲を満たすという点で、大型車がやっぱり欲しいという気持ちもよくわかります。コストがかけられている大型車は、一般論として質感が高いのも魅力ですから。ただ新型400Xは、輸出向けのCB500Xも含めてミドルクラスのモデルではありますが、フロントダブルディスクのブレーキや、倒立式のSFF-BPフォークを新たに採用していたり、全体的に質感が高くてスタイリング的にも旧型よりも格好良くなっていると思います。

SFF-BPフォークですが、正立式フォークを採用していた旧型を試乗したときは、もうちょっとフロント側のストローク量があった方が良いなとか、ちょっと突っ張る感じがあるなとか思いましたが、新型400Xのサスペンションにはそういう不満を覚えることはなく、前後サスのバランスがすごく良くなったと思いました。また旧型に乗ったとき、リアサスの出来がとても良かったことを覚えていますが、SFF-BPフォーク採用に合わせて変更されたリアサスまわりもさらによくなっており、新型のリアサスの出来には非常に感銘を覚えました。

画像2: ホンダ「400X」インプレ(伊藤真一)

今回の試乗ではフラットなオフロード走行もしましたが、路面の凸凹に対してフロントフォークが素早く追従し、ギャップを上手くいなしてそこそこのハイペースで走れることに感心しました。自分はオフロードの専門家ではないので正しく評価できているか確信はありませんが、SFF-BPフォークでもオフロードの使用を想定したセッティングは可能なのだなと感じましたね。走らせていて、倒立フォークという感じがしなかったです。

SFF-BPは出始めのころ、速いストロークのときに止まるようなフィーリングがありましたが、新型400Xに採用されているフォークにはそういう印象は全くなかったですね。短い期間のうちに、熟成が進んでいることを感じました。ただワインディングをハードに攻めたときに、フォークがフルボトム近辺で硬さというか、急に動きが渋くなります。

フロントブレーキがダブルディスクになって、向上した制動力をフルに使おうとすると、フォークの「奥」で硬さが出ちゃうのかもしれません。もっとも、400Xで峠を走るときにそういう使い方をする人はいないでしょうし、そう走ったとしてもそこに気付く人は1000人にひとりいるかいないか、ではないでしょうか? なお、それくらいハイペースでワインディングを走っても、リアサスペンション側は全く破綻することはなかったです。

新装備のダブルディスクのフロントブレーキは、旧型のシングルディスクに比べると若干バネ下が重くなった感じがありますね。試乗車は走行500kmくらいのほとんど新車状態でしたので、タッチが出るまでブレーキのならしが必要でしたが、タッチが出てきてからは制動力が旧型よりアップしていることを、ちゃんと確認することができるようになりました。

画像: ワインディングでの400Xの実力をチェックする伊藤さん。「足まわりが旧型からグレードアップしているのが良くわかります。乗り心地も良いですね」

ワインディングでの400Xの実力をチェックする伊藤さん。「足まわりが旧型からグレードアップしているのが良くわかります。乗り心地も良いですね」

2016年のアフリカツイン登場以降、ホンダ製のアドベンチャー/クロスオーバーモデルはレベルアップした!?

旧型400Xのシングルディスクはタッチが良くて、制動力的にも何の不具合もなかったので、ダブルディスクを採用する必要もなかったのでは? と当初思いましたが、新型のダブルディスクは出来が非常に良いですし、スタイリング的にSFF-BPフォークとのマッチングも良くて、旧型よりも格好良くなって商品力も上がっていますから、採用して正解でしょう。撮影担当したカメラマンの方は、シングルディスクの方が見た目にも軽快感があって好きとおっしゃっていたので、そのあたりは好みの問題も大きいと思いますけど、ダブルディスクの方が高級感あるのは確かだと思います。

足まわりが旧型より良くなって、オンロードでより速いペースで走れるようになったから感じたことかもしれませんが、素早い操作でシフトアップやシフトダウンしたときに駆動系が若干華奢に感じたりしました。まぁこれも1000人にひとり感じるかどうか、というレベルの話ですね。なおアシスト&スリッパークラッチの操作感とかは、全く問題ありませんでした。

さらに細かいところで言えば、ハンドルバーと固定するハンドルホルダーの剛性感がちょうど良く、グニャグニャするような感じがないのが良いですね。全然悪さをしないと言いますか、コーナーリングなどで操作しているときの気持ち良さを全く阻害することがないです。このあたりは、非常に好ましく思いました。

あと、旧型に乗ったときも思いましたが、400Xは乗っていてフレームに「鉄」っぽさを感じさせませんでしたが、新型400Xもその印象は同じでした。

画像3: ホンダ「400X」インプレ(伊藤真一)

アドベンチャーに比べると、オンロード寄りのモデルをホンダはクロスオーバーモデルと称していますが、400Xに装着されているタイヤはやはりオンロード寄りです。でもオンロードはもちろん、オフロードを走らせてもすごく良いです。2016年にアフリカツインが登場して以降、並列ツインを搭載するホンダのアドベンチャーおよびクロスオーバーモデルは、完成度のレベルが上がったな…と、個人的には思っています。

スタイリングも良くなって、質感も高くなって、そして走りも良くなっている…。1台のバイクとしてバランスがとても良くて、大排気量の同ジャンルのモデルと比べてみると使い勝手が良いというか乗っていて楽チンで、悪く言うところがないです。ですから、新型400Xを買って後悔する人はいないのでは? と思いましたね。

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