4メーカーがメーカーの垣根を越えて脱炭素を目指す!

11月13日、14日に岡山国際サーキットで開催された「スーパー耐久レースin岡山」で、トヨタ、マツダ、スバル、川崎重工、そしてヤマハ発動機の5社が、カーボンニュートラルに向け、内燃機関を活用した、燃料の選択肢を広げる挑戦をすることを発表しました。

前戦の鈴鹿に続き、トヨタは水素エンジンを積んだカローラで参戦。加えて今回はマツダが100%バイオ由来となる、次世代バイオディーゼル燃料を使ったデミオで参戦。カーボンニュートラルに向けた取り組みの輪が広がっていることを改めて示しましたが、今回は我々ライダーにとっても大きなニュースがあったのです!

それはカワサキとヤマハが、二輪車用の水素エンジン開発のための共同研究について検討を開始、というもの。しかも、この二社に加え、ホンダとスズキも加わって、日本の4メーカーがカーボンニュートラルに向けて可能性を模索していくことで合意。メーカーの垣根を超えた、革新的な取り組みがいよいよ始まるのです!

液化水素タンクでノウハウを持ち、水素エンジンも研究中のカワサキ

画像: 液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」(画像提供:HySTRA)

液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」(画像提供:HySTRA)

川崎重工は2010年から水素の可能性に着目、水素燃料の大規模なサプライチェーン構築を目指す「HySTRA」にも参画しています。マイナス253度で液化した水素燃料を運搬する世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」を建造、2021年度にはオーストラリアで製造した褐炭由来の水素を神戸に運ぶ実証実験をスタートさせる予定です。

画像: 真空二重殻構造タンクイメージ(画像提供:HySTRA)

真空二重殻構造タンクイメージ(画像提供:HySTRA)

川崎重工はこの運搬のために、真空二重殻構造の特殊タンクを製作。発火しやすい水素燃料を安全に運ぶためのタンク製造のノウハウをすでに持っています。二輪車が水素燃料を使用するにあたっては、スペースに制約のある中、水素燃料のタンクをどうするかも大きな課題となっており、そこで川崎重工のノウハウが大きく活きることになるのです。

画像: 直噴エンジンイメージ(画像提供:カワサキモータース株式会社)

直噴エンジンイメージ(画像提供:カワサキモータース株式会社)

また、カワサキの二輪車製造を担当するカワサキモータース株式会社は、10月に事業方針説明会を開催、そこで二輪車向けの水素エンジンの研究を行っていること、それにつながる前段階として、直噴方式のエンジン開発を行っていることを発表しています。

画像: 液化水素タンクでノウハウを持ち、水素エンジンも研究中のカワサキ

説明会会場には実際の直噴技術開発用のエンジン実機も展示。二輪用の水素エンジン開発に向け、すでにスタートを切っており、今後が非常に楽しみな状況となっています。

ヤマハ発動機は四輪用水素エンジンを5年にわたり開発

画像: ヤマハ発動機は四輪用水素エンジンを5年にわたり開発

一方のヤマハ発動機は、トヨタ、DENSO、ケン・マツウラレーシングサービスと共同で、レース用の水素エンジンを2016年から開発。これをカローラに搭載し、スーパー耐久シリーズに参戦しながら、データの蓄積とたゆまぬ改良を行っています。

基本的に水素エンジンと従来のガソリンエンジンは、メカ的には共通の部分が多く、気体である水素を噴射するインジェクターなど、パーツの違いはありますが、二輪用の水素エンジン開発にも、こうした5年間のノウハウも大きく役立つものと思われます。

エモーショナルで楽しいバイクの未来は水素エンジンがカギとなる!?

画像: 水素エンジン搭載モデルイメージ(提供:カワサキモータース株式会社)

水素エンジン搭載モデルイメージ(提供:カワサキモータース株式会社)

11月13日の5社による会見の後には二輪メディア向けの説明会も開かれ、ここにはヤマハ発動機の日髙社長、カワサキモータース株式会社の伊藤社長に加え、スズキの二輪事業本部長・伊藤正義氏も登壇。まだ検討を開始したばかりの段階ではあるものの、4メーカーが共同開発に前向きに取り組む予定であることを改めて発表しました。

印象的だったのはスズキの伊藤氏の言葉でした。「(主に使用される)距離が短い、原付一種、二種のスクーターなどはEV化で対応できますが、趣味で楽しむ大型のオートバイとなると、バッテリースペースやバッテリーの重さ、航続距離などの問題から、おそらくバッテリー(EV)は難しいのではないかと考えています。二輪車としては、バッテリー(EV化)のハードルが高いところは、内燃機関を追求していきたいと思います」

加えて、カワサキモータースの伊藤社長は「カーボンニュートラルに向け、あらゆる選択肢を用意したいと考えています。内燃機関の追求は意義のあること」と発言。ヤマハの日高社長も「電動化の難しいカテゴリーでは内燃機関を進めていきます。社内でも、内燃機関でないと、という意見や、これからは電動だ、という意見など、さまざまな意見が出ていますが、それぞれが競争していけばいいと考えています」と発言するなど、各社とも内燃機関存続に向けた情熱には並々ならぬものがありました。

もちろん、エンジンなど、それぞれのメーカーの個性が活きるパートは独自のものとなるようで「協業できるところは協業し、競争するところは競争する」というスタンスでの共同研究となるようです。いずれにしても、操る楽しさ、エンジンのワクワクするフィーリングが残る、未来の水素エンジンバイクに期待しましょう!

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