味わい深くサイドカーに向いていると言われる、ショベルヘッドモーターを搭載するクラシックハーレーと、クラシックな装いにフィットするサクマエンジニアリングオリジナル“ベータサイドカー”の組み合わせは、「アリなのか?」「ナシなのか?」
文:山口銀次郎/写真:柴田直行

サクマエンジニアリング「H-D 1980 FLT ベータサイドカー」インプレ・解説(山口銀次郎)

画像: SAKUMA ENGINEERING Harley-Davidson 1980FLT BETA SIDECAR 総排気量:1340cc

SAKUMA ENGINEERING Harley-Davidson 1980FLT BETA SIDECAR
総排気量:1340cc

40年以上前のクラシックモデルとサイドカーとの相性に興味が湧くところだが、まずはサイドカーを装備した珍しいベース車両について触れたいと思う。

1980年代の幕開けとともに、ハイウェイでの快適性を追求したツアラーモデルとして誕生したのがこのハーレーダビッドソン・FLTだ。エンジンはラバーマウントされ、不快な振動を極力抑え乗り心地の向上を図っている。後のツアラーモデルに大きな影響を与える、エポックなモデルでもあった。

いわゆるショベルヘッドと言われる1340ccエンジンは、大きなフライホイールを有し低回転域から粘りのある大きなトルクを発生させていた。重装備の巨体をスムーズに押し進めるのに余りあるチカラは、大陸を大移動するためには欠かせないパフォーマンスだったといえる。

画像1: サクマエンジニアリング「H-D 1980 FLT ベータサイドカー」インプレ・解説(山口銀次郎)

ショベルヘッド以降の1984年デビューのエボリューションエンジンなどの進化としては、高回転域での出力向上(他メーカーと比べれば低い値かもしれないが)を図る傾向が強くなっていくのであった。「古き良き」とは軽々に使用したくはないが、大きなフライホイールを有するショベルヘッドエンジン時代のモデルが持つ、低速域での味わい深さに魅了されているファンも多いことだろう。

1980年代にはハイウェイキングの名の下に、デコレーションやドレスアップが注目され、その流れでサイドカー装備もごく自然と行われる様になっていた。当時、ハーレーダビッドソンとサイドカーとの組み合わせが隆盛を誇っていた時代だったのではないだろうか。おそらく、ショベルヘッドのクラシックハーレーとサイドカーの相性は良好だったはずではと、リアルタイムで当時を知らない者としては、改めて思った。

画像2: サクマエンジニアリング「H-D 1980 FLT ベータサイドカー」インプレ・解説(山口銀次郎)

今回試乗する、ハーレーダビッソン・FLTに装備されたベータサイドカーは、車体の持つ重厚かつクラシカルなデザインにフィットするフォルムとなっている。

サイドカーを装備するにあたって、専用のアンダーフレームを追加し側輪や制動システム(ないモデルもある)、サスペンションシステム等々が追加されるカタチとなり、大幅な重量増が避けることは出来なくなっている。

それは、加減速を始め制動力、そしてハンドリングに大きな影響を与えるのだが、仕立てるのにあたって多くのデータやノウハウが活かされ、扱いやすさに重点を置いた仕様となっている。

画像3: サクマエンジニアリング「H-D 1980 FLT ベータサイドカー」インプレ・解説(山口銀次郎)

低回転域のゴロリゴロリとした粘りある太いトルクは、淀みなく車体を押し進め、重量感を感じさせないパワフルなものとなっていた。

これは、抵抗感を与えない車体構成(側輪の設定等々)によるものであることは、必要以上にエンジンを吹かす必要がないことからも明白であった。

また、穏やかなエンジンのツキとなる低回転域を常用することで、ギクシャクしないのは、直進走行ですら不安定になりがちなサイドカーにとっては、この上ないパフォーマンスといって良いだろう。

画像4: サクマエンジニアリング「H-D 1980 FLT ベータサイドカー」インプレ・解説(山口銀次郎)

さらに、フロントタイヤと同じサイズを採用した側輪との相性も良く、大柄な車格が嘘の様な小回りを可能にしていた。それは側輪のグリップ力が低いとブレイクしやすく、ハンドル操舵に従順になるというもの。卓越したそれぞれのパーツチョイスによる、サイドカーそのものが与える影響を最小限に抑えるというポイントに、匠の技を見た。

正直、様々なサイドカーに試乗してきた経験のある私にとって、センセーショナルといえるほどの快適さをもつ、ショベルヘッドFLT+ベータサイドカーの組み合わせであった。

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