電卓やデジタル時計が市販され始めた頃、飛躍的に高まった工業技術や設計・工作の精度、そして材質。すべてが数字で捉えられる期待を映したのが、直線基調デザインか。そんな時期にカワサキのZも直線を採り入れる。まずはそうした直線デザインを特長とし、合わせてパフォーマンスも大幅に進化する。Z1000J系からはさらに性能を高め、『歴代最強のZエンジン』と呼ばれるまでに熟成された角タンクモデル群のプロフィールを、年代順に改めて眺めていこう。

バイク界に訪れた角の時代、先頭に立った新生代Z

1978 Z1-R Z1000D1
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル03

初の角型はカフェレーサーイメージ。1970年代中盤の世界的カフェレーサーブームに対して、カワサキがZ1000から派生させたのがZ1-R。これが実質的に初の角デザインだ。直線デザインを施した細身タンクは13L容量で、ビキニカウルも追加。マフラーは4-2から右出しの4into1とするなど、カフェレーサーを直線で表現する手法を採った。ホイールも当時出始めたキャストとしてカスタム感も持たせた。


1979 Z1000Mk.II Z1000A3/A3A
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル04

1976年に903→1015 cc化したZ1000/KZ100の空冷4気筒エンジンや鋼管ダブルクレードルフレーム、φ36mmフォーク等の基本を元に、点火をポイント式からトランジスタとして角型ヘッドカバーを採用し、10psアップの93psに。外観はそれまでの流麗な丸型から一新して17.8ℓと容量を確保した角型タンクに三角形のサイドカバー、ストレートデザインのテールカウル等、角型デザインに。また1.85-19/2.15-18インチのホイールは7本スポークキャストとなった。


1979 Z1R-ll Z1000D2
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル05

Z1~Z1000がMk.Ⅱで角型になったことから、Z1-RもII型でMk.IIをベースにした。19/18のZ1000を前後18インチにしたのみのためで起こったと言われるⅠ型の弱点を対策するため、操縦安定性を生かすべくホイールはMk.II同等。フォークオフセットのみ60→50mmとした。タンクも20L容量に増やし、EXも左右出しのまま。同時展開したZ1000STはMk.IIのシャフト駆動仕様、Z1000Hは同じくFI仕様だ。

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1979 Z750FX(Z750FX-I/Z750D2)
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル06

国内にも投入された750cc版角Z。1974年から1990年まで、国内では750ccを上限とする自主規制があり、Z1とZ2の関係同様にZ1000Mk.IIの750版として登場したのがZ750FX。Z750を元にMk.II同様の角型外装を載せ、1・85-19/2・15-18サイズのホイールもキャスト化するなどしていた。


1981 Z1000 Z1000J1/KZ1000J1
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル07

リッタークラス旗艦の後継機は角型デザインを引き継ぎつつ強化を図った。いわゆる後期型Zとして、Mk.IIの次に登場したのがZ1000。日本ではカワサキの型式表示「J」を末尾に加えたZ1000Jと通称される。当初の903から1015ccまで拡大したZ1系からφ69.4×66mmの998ccに排気量を変えた上でバルブやポートサイズを大きくし、エンジンマウントなど車体も一新。ディメンションも安定成分を重視し、角型タンク(北米は丸タンク)とで重厚感も加えた。フロントフォークはφ36→38mmに大径化、ホイールはMk.IIに同じ1.85-19/2.15-18で乾燥重量はMk.II比15kg減/Z1同の230kg。

※1976年型KZ900以降、北米仕様のZ系の車名は「Kawasaki Z」の意味でKZ(KZ900/1000など)が使われるようになった。だが欧州では「KZ」はナチス収容所(konzentrati-onslanger)の略と取られることがあるため使わず、Z900/1000等のままの車名が使われた。


1981 Z1100GP Z1100B1
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル08

制限のない1089ccにFIを組み合わせた余裕のモデル。Z1000(J)と同時開発でφ72.5mmピストンでの1089cc、燃料供給をフューエルインジェクション(FI)としたのがZ1100GP。Z1000がプロダクションレースのベースとして998ccとしたのに対し、その制限のない旗艦という構成を採った。ライトは角型。1982年B2ではZ1000R1同様のビキニカウルを装着しメーターを小型化、ホイールのスポークを変更。FIもKEFIからdfi に変わる。

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1982 Z1000 Z1000J2
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル09

先鋭デザインは標準化しオーソドックスへ。Jの2型となる1982年型Z1000=J2はφ34mm負圧キャブやエンジン/車体の基本は継承しつつ、フロントフォークオフセットを60→50mmに減らして安定成分を強化(マニュアル記載のトレール量はJ1に同じ)。シートは形状を変え、J1にあった横後方のリブを廃し、上面をタックロールタイプとした。北米仕様は丸タンクだった。


1982 KZ1000R KZ1000R1
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル10

AMAスーパーバイク制覇を記念した限定車KZ1000J1改(丸タンク)+エディ・ローソンの1981年AMAスーパーバイク制覇を記念し、KZ1000J2を元に1982年型で北米仕様のみ登場したレプリカがKZ1000R(1)。ライムグリーンの専用カラーを施した角型タンクやビキニカウル、KERKER製4-1メガホンEX、リザーバータンク付きリヤショック、段付きシートや2.15から2.50へとリム幅を広げた18インチリヤホイール等が主な変更点だ。


1982 KZ1000S KZ1000S1
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル11

レース専用パーツも持つ市販レーサー。KZ1000S1は、1981年AMAスーパーバイク用Z1000J1改レーサーの仕様を1982Z1000R1に落とし込んだ市販レーサー。当時24台の生産でAMA公認が取れたため30台を完成車で販売、エンジンはJ用キットパーツ(ツインプラグヘッド/CDI点火/カム/ピストン/クランクなど)として約200台分を用意。


1983 KZ1000 Z1000J3/KZ1000J3
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル12

J3は諸元上はトレールが99→98㎜、乾燥230→233kgとなり、北米仕様も角タンクに。同じ’83年にKZ1000S1のヘッドノウハウを生かしたGPz1100(A1)も登場。

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1983 KZ1000R KZ1000R2/Z1000R2
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル13

1982年にKZ1000R1改でローソンがAMA・SBの連続チャンピオンを獲得し、これを記念した限定車Z1000R(2)が北米と欧州で販売。


1984 KZ1100R Z1100R1/KZ1100R1
洗練されたカワサキ角Zの歴代モデル02

空冷Zは最終章で系列最強ヘッド版も用意。1984Z1100Rはエンジンは1089ccだが、ヘッドは角型のZ-GPではなくカウル付きGPz1100と同じ。それゆえこのZ1100R(キャブ)とGPz1100(dfi )が最強ヘッド搭載Zとなる。車体はF19→18インチ化(1.85-19→2.15-18)した点がGPz(2.15-18/3.00-17)を除く19/18インチのJ/R系と異なる。

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

※本企画はHeritage&Legends 2019年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

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