オフロードファンだけでなく、幅広い層のライダーから愛されて35年。ついにその歴史に幕を下ろすファイナルを迎えたヤマハのセローだが、その歴史は「セローらしさ」をまっすぐ、ひたむきに貫いた35年だった。

シンプルさの追求が生んだ扱いやすさと優しさの35年

画像: ヤマハ発動機株式会社 橋本貴行 氏 PF車両ユニット PF車両開発統括部 ST開発部

ヤマハ発動機株式会社 橋本貴行 氏

PF車両ユニット PF車両開発統括部 ST開発部

「セローに携わる以前は、初心者向けのオールラウンダー、ぐらいのイメージしかありませんでした。担当するようになって、初めてセローブランドの重みを感じました」

そう語るのは橋本さん。排ガス規制に対応して「最後の変更」が行われた2018年モデルのプロジェクトリーダーだ。

画像: ヤマハ「セロー250ファイナルエディション」 総排気量:249cc 最高出力:20PS/7500rpm 最大トルク:2.1㎏-m/6000rpm 税込価格:58万8500円

ヤマハ「セロー250ファイナルエディション」

総排気量:249cc 
最高出力:20PS/7500rpm
最大トルク:2.1㎏-m/6000rpm
税込価格:58万8500円

「セローの担当になって、プレッシャーはすごくありました。考えて、悩んで、近藤さん(近藤充氏。セローのコンセプトを提案した生みの親)を訪ねました。セローらしさとは何か、と聞かれて、答えると『君はわかっていない』と言われて、また悩んで…。社内にある資料を片っ端から調べて回りました」

我々が思うセローの魅力、いわゆる「セローらしさ」について考えてみると、軽くて扱いやすい、足つきがいい、ハンドルがよく切れて扱いやすい…となるが、それは後から生まれた副産物のようだ。

画像: ファイナルを祝うのは小さなエンブレムひとつ。シンプルに、さりげなく、もまたセローらしさ。

ファイナルを祝うのは小さなエンブレムひとつ。シンプルに、さりげなく、もまたセローらしさ。

「もともとのセローのテーマは、山登りを楽しむ、使いやすいバイクというもの。スタートはシンプルな、単機能のバイクでした。そのためには何が必要か、ということで、軽くしたり、足つきをよくしたりするうちに、お客様がそれを魅力として広く伝えてくださったのです。扱いやすい、優しいバイク、とよく言われるセローですが、それはお客様が育ててくださったからなのです」

35年という歴史の中で、セローは何度も存続の危機に立たされたという。それを乗り越えられたのは、セローファンに対する想いがあったからだった。

「排ガス規制をパスするだけなら、技術的にはさほど難しいことではありません。ただ、出来上がったものがセローと呼べるかと言うと話は別なんです。実際、社内でも『これでセローと呼べるのか?』という意見が出て、何度も細かい改良をし直しました」

画像: 2005年にはFI化、2018年には排ガス規制対応という、大きな難局を乗り切った空冷シングル。

2005年にはFI化、2018年には排ガス規制対応という、大きな難局を乗り切った空冷シングル。

多くの困難を超えて35年。いったんは生産を終了するが、ファンとしては今後の復活にも期待したいところだ。

「セローという名前かは分かりませんが、こうしたシンプルで使いやすいコンセプトのバイクはオフロード車には欠かせないものだ、という認識はヤマハでも持っています。このカタチではいったんファイナルですが、長く愛していただければ嬉しいです」

ヤマハ「セロー250 ファイナルエディション」主なスペックと価格

Specifications
全長×全幅×全高 2100×805×1160㎜
ホイールベース 1360㎜
シート高 830㎜
最低地上高 285㎜
車両重量 133㎏
エンジン形式 空冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量 249㏄
ボア×ストローク 74×58㎜
圧縮比 9.7
最高出力 20PS/7500rpm
最大トルク 2.1㎏-m/6000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 9.3L
キャスター角/トレール 26度40分/105㎜
変速機形式 5速リターン
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 2.75-21・120/80-18
メーカー希望小売価格(税込):58万8500円

まとめ:月刊オートバイ編集部/写真:柴田直行

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