金沢の白山比咩神社を訪れたのち、さらにそこから足を伸ばし、向かったのは能登半島。佐々木自身足を踏み入れるのは始めての能登半島にて、いの一番に門を叩きたかったのは、珠洲市にある須須神社。そこには、腰を抜かす程の能登最大のキリコが保管されていた。
※この記事は月刊オートバイ2018年1月号で掲載したものを加筆修正しております。

風を感じて、空気を感じて錆の進行に恐怖する!?

石川県白山市に鎮座する白山比咩(しらやまひめ)神社を後にし、次の目的地へ。向かったのは能登半島。僕にとって、人生初の能登半島であります。

なんでも始めが肝心ってことで、目指すは先っぽ! 能登半島の先っぽ近くの神社を目指し、北へ進路をとります。

別になめてたワケじゃないんですが、金沢市から能登半島の先っぽ辺りまでは約150キロもあるんですね。一瞬ひるみましたが、疾走ってみるとこれがもう最高。自動車専用道路あり、程よい連続カーブの一般道あり、海岸線ありと、疾走るには絶好のロケーションです。

そして何より、信号が少ないのがいいですね。信号が少ないうえ景色が次々に変わっていくので、飽きずにずっと疾走っていられました。

半島の真ん中あたりを過ぎた頃、服を通して感じる風の温度が少し下がりました。やっぱり金沢に比べて、能登半島の北の方は少し寒いようですね。

季節の変わり目、風の変わり目を身体で感じられるのも、バイクの良さですね~。そんなこと言っといて、未だに人の輪の空気が読めないのはご愛嬌(笑)。

画像1: 風を感じて、空気を感じて錆の進行に恐怖する!?

宿に到着するなりカメラマンの関野さんが、待っていたかのように一言。「ボディーの裏側を洗った方がいいですよ」と。

金沢からの途中に、なぎさドライブウェイがありました。バイクや車が波打ち際の砂浜を走れるのは、日本で唯一ここだけだそうです。あまりの解放感に、意気揚々と走り抜けてきました。

画像2: 風を感じて、空気を感じて錆の進行に恐怖する!?

しかし「砂浜を走った後は、よく洗い流さないと錆びますよ」と、関野さんが教えてくださいました。なるほど、言われてみればそうですね! 

宿の外にある水道とホースを借りて、関野さんに教えていただきながら洗い流しました。潮は鉄の天敵。それを肝に銘じ、能登半島での一日目が暮れていくのでありました。

能登半島の突端神社で神話の世界に触れる!

次の日も天候にめぐまれ、到着したのは能登半島の先端に位置する石川県珠洲市。その北東部、防
波堤沿いの道の先に鳥居が見えてきました。

こちらが、今回参拝させていただく須須神社(すずじんじゃ)です。風向き次第では、参道でも潮の香りを感じることが出来ます。

画像: 須須神社 石川県珠洲市三崎町寺家4-2 もともとは、日本海での航海の安全を祈る神でもあったとか。交通安全の神様として祀られている神社の多くは、もともと航海の安全を祈願するためだった所です。バイクで行ける陸の先端。そこに建つこちらで、交通安全を祈願するツーリングはいかがでしょうか。

須須神社 石川県珠洲市三崎町寺家4-2

もともとは、日本海での航海の安全を祈る神でもあったとか。交通安全の神様として祀られている神社の多くは、もともと航海の安全を祈願するためだった所です。バイクで行ける陸の先端。そこに建つこちらで、交通安全を祈願するツーリングはいかがでしょうか。

不規則な間隔の石段は、人力のみで積まれたことが見て取れます。

社務所では、宮司が待ってくださっていました。神社のこと、地域の話、お祭りのことなど、この地で生まれ育った宮司の少年時代の頃からのお話を伺えました。

そのなかで最も興味深かったのは、宮司の祖先から続く家系のお話でした。須須神社宮司の苗字は、猿女(さるめ)さんです。とても珍しい名前です。

僕はまさかと思い、聞いてみました。宮司の名前が猿女さんだなんて、神社を多く回っている僕にとって、そうであるとしか考えられなかったからです!

神話の一節、神様たちの世界の話。太陽みたいな神様アマテラスが閉じこもり、さらに岩で蓋をして出てこなくなりました。そのせいで、世界は真っ暗。なんてたって、世界を照らす神様が閉じこもってしまったのだから。

他の神様たちは、皆で相談をします。そして色々な方法を試してみましたが、アマテラスが岩の中から出てくることはありませんでした。

そこで、ある神様が名乗り出ます。そして突然、皆の中心で踊り始めるのです。悩んでいた神様たちは、その勢いと踊りに圧倒され全員大爆笑! 

このことからこの神様は、お笑いや芸能の神として信仰されています。僕も、あやからなけば……。

外の状況が変化し、気になったアマテラスは蓋を開けて出てきます。無事に、神様たちの世界に明るさが戻ったのです。

いきなり踊り始めたこのキーパーソン、名前をアメノウズメと言います。やがてアマテラスの孫が地上へ降りる時、アメノウズメも同行します。

その道中、天と地の真ん中あたり。地上の神様が一人、道案内をしようと待ち構えていました。

この人の名はサルタコ。サル? だんだん近づいてきましたよ。

このサルタヒコと最初に接触したのが、アメノウズメです。また一説には、二人は結婚したとも伝えられています。

ここでアメノウズメは、猿女君(さるめのきみ)と呼ばれるようになりました。そうです! 宮司はやはり、この猿女君の子孫だったのです! 

画像: 本来撮影禁止ですが宮司のご厚意で、今回は特別に宝物殿のなかも見せていただきました。恐れ多くも、宮司自ら解説してくださいました。宝物のなかにはガラスケースに入ってないものもあり、信じられないほど近い距離で拝見させていただきました。 宝物殿の管理は厳重で、文化財に登録をされると、土足厳禁にしなければならない等いろいろ厳しいようです。個人で歴史を守るって、ホント大変なんですね。

本来撮影禁止ですが宮司のご厚意で、今回は特別に宝物殿のなかも見せていただきました。恐れ多くも、宮司自ら解説してくださいました。宝物のなかにはガラスケースに入ってないものもあり、信じられないほど近い距離で拝見させていただきました。
宝物殿の管理は厳重で、文化財に登録をされると、土足厳禁にしなければならない等いろいろ厳しいようです。個人で歴史を守るって、ホント大変なんですね。

神社一口メモ

画像3: 能登半島の先っぽ!須須神社で交通安全を祈願/神社巡拝家・佐々木優太の「神社拝走記」【第6回】(石川県)

猿女宮司

神社巡拝家として、名刺に書かれた苗字にひっかからない訳はありません。宮司の家系には、壮大なロマンが詰まっていました。

神社を守り継ぐ社家の方々が、神話にルーツを持つ家系であることが稀にあります。スポットライトが当たらなくとも、ただひたすらに歴史を守ってらっしゃいます。

今を生きる歴史である皆さに直接お話を伺えることも、ご利益の一つと言えるのではないでしょうか。

いや、これは凄い。目の前でお話しされている方が、神話の時代より続く家系の方だなんて。神社巡拝家は大興奮です。

更に明治の初め頃までは、猿女君という苗字だったそうです。

珠洲市は、伊勢神宮のちょうど北方に位置しています。アマテラスを祀る伊勢神宮の北方を守るため、須須神社があるのだとか。

アメノウズメを祖に持つ猿女一族が、社家としてこちらへ移り住まれたそうです。珠洲市の市名も、須須神社に由来します。

画像: 社殿へと続く石段は、人の手で積み上げられたものだと一目でわかります。 積まれている石の一つ一つをよく見て見ると、気泡のような穴が幾つも開いています。きっと海岸線の岩を加工して作った階段なのでしょう。 海辺に建つ神社ならではの風景ですね。

社殿へと続く石段は、人の手で積み上げられたものだと一目でわかります。
積まれている石の一つ一つをよく見て見ると、気泡のような穴が幾つも開いています。きっと海岸線の岩を加工して作った階段なのでしょう。
海辺に建つ神社ならではの風景ですね。

私自身の家系は、恥ずかしながら祖父の代までしか遡れません。

神話に家族のルーツを見ることが出来るなんて、これ以上のロマンがあるでしょうか。そのロマンに出会えて、そしてお話を伺えたことに深く感動した今回の拝走記でした。

人生初の能登半島、意気込み先っぽを目指して来たかいがありました。半島の先端より、折り返すように帰路につきます。排気音は返ってくることなく、日本海に消えていきます……旅は続く。

能登最大のキリコ!

画像4: 能登半島の先っぽ!須須神社で交通安全を祈願/神社巡拝家・佐々木優太の「神社拝走記」【第6回】(石川県)

こちらの地方ではキリコと呼ばれるものが、祭りの時に出されます。

もともとは明かりを灯すものだったそうですが、地域の発展と共に次第に大きくなったそうです。大きさは、なんと16 .5メートル。神社近辺の道路では巨大なキリコが練り歩くために、電線の施設に工夫がされています。

地域の皆さんの、情熱を感じました。

椿の展望台のつばき茶屋

画像5: 能登半島の先っぽ!須須神社で交通安全を祈願/神社巡拝家・佐々木優太の「神社拝走記」【第6回】(石川県)

海沿いの崖を這うように敷かれた道。幾つもあるカーブの一つに、絶景を望める場所があります。そこに建つご飯屋さん。

選んだのはもちろん、屋外の席です。少し強めの風が吹き抜ける丘で、海を臨みながら食べる刺身定食は最高の一言。

しかも愛車を横目に! つい時間を忘れてしまいそうになります。

狼煙の豆乳ソフト

画像6: 能登半島の先っぽ!須須神社で交通安全を祈願/神社巡拝家・佐々木優太の「神社拝走記」【第6回】(石川県)

あれれ、気が付けば最近ソフトクリームを食べる機会が増えているような(笑)。

三十歳を超えて、ひそかに健康を考え始めている僕。

そんな僕にぴったりの豆乳ソフトを、道の駅で発見しました。潔く真上からかぶりつきます。

これはもう豆乳というより、大豆のような濃いさと味わい! 舌触りも、まさに濃厚。

文:佐々木優太/写真:関野 温/撮影協力:須須神社

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