水冷90度V型3気筒を搭載するホンダ初の2サイクルオンロードスポーツ

HONDA MVX250F 1983年

画像: カタログの表紙で、写真は3カラーが揃ってから発行された第2版。ライダーはフレディ・スペンサーだ。初版では、HONDAと背中にあるツナギを着たライダーが右旋回している写真を使うなどの相違点があげられる。

カタログの表紙で、写真は3カラーが揃ってから発行された第2版。ライダーはフレディ・スペンサーだ。初版では、HONDAと背中にあるツナギを着たライダーが右旋回している写真を使うなどの相違点があげられる。

画像1: 水冷90度V型3気筒を搭載するホンダ初の2サイクルオンロードスポーツ

全長/幅/高:2010/735/1155mm
シート高:780mm
車軸距離:1370mm
車体重量:155kg(装)
ガソリンタンク:容量 17L
エンジン:水冷2サイクルV型三気筒
総排気量:249cc
最高出力:40ps/9000rpm
最高トルク:3.2kg-m/8500rpm
変速機:常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ:前100/90R16(54S)・後110/80R18(58S)
チェーン サイズ:520|リンク104
車体価格:42万8000円(税別)※発売当時価格です

ホンダによる公道向け2サイクル250㏄ロードスポーツ。その歴史の先頭に名を記すのがMVX250Fである。

1980年8月にヤマハがリリースしたRZ250は、人気の衰えていた2サイクル市場にライダーたちの視線を向けさせ、高い人気を獲得することに成功。これに対抗するためにホンダは、4サイクルレーサーNRの技術に基づき開発したV型2気筒を積むVT250Fを1982年6月に39万9000円で発売した(RZ250は35万4000円)。

画像2: 水冷90度V型3気筒を搭載するホンダ初の2サイクルオンロードスポーツ

VTは多くのユーザーに受け入れられ、250㏄スポーツ車を9機種10タイプも揃えるというラインアップの豊富さも相まって、このクラスにおける圧倒的な優位性を築いた。しかしホンダは開発の手を止めることなく、次なる新作車を誕生させた。

画像3: 水冷90度V型3気筒を搭載するホンダ初の2サイクルオンロードスポーツ

MVX250Fである。登場はVT250Fの8カ月後の1983年2月、価格は+2万9000円の42万8000円とされた。中大排気量ロードモデルは4サイクルが主体、2サイクルはモトクロス/ロードレース用レーサーや小型スクーターに限定していた当時のホンダだったが、MVXは新しいジャンルに挑んだ意欲作であった。

16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

画像1: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

フロントウィンカーを埋め込んだビキニカウルや後部に小さなスポイラーを備えるフロントフェンダー、テール/ストップランプとリアウィンカーを一体化したコンビネーションランプなど、ボディデザインはVT250Fに通じている。

鋼管製ダブルクレードルフレームの基本形態は同じで、リアサスペンションはモノショックの下部にリンクを配するプロリンク。16/18インチのブーメラン形スポーツコムスターホイールを装備するなどもVTと同じだ。

全長/全幅/全高:2010/735/1155㎜で、VTに比べ10㎜長く、15㎜狭く、20㎜低い。ホイールベースは15㎜短い1370㎜、シート高は同値の780㎜を資料に記載。乾燥重量は11㎏軽量な138㎏で、これはRZ250より1㎏少ない。

ただし当時は重量の公称値が現在ほど実際に近くなかったため、これらは参考値と考えてよいだろう。写真のガルホワイト×モンツァレッドのみ青のシートを装着、他の2色は一般的な黒だった

画像2: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

タイヤサイズはF:100/90-16、R:110/80-18で、これはVT250Fと共通。前後とも2.15のリム幅も同寸である。前後ウィンカーが左右に張り出していないこともあってスリムさが際立つ。当時は多くのモデルがセンタースタンドを装備した。

画像3: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる
画像4: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

2サイクルレーサー、NS500と撮影した写真を大きく使うなど、サーキットで培った技術を投入していることを強調。豊富な部分写真を用いて車体各部を解説。

画像5: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる
画像: 水冷90度V型3気筒エンジンは、NS500の前1気筒、後ろ2気筒と異なり、前2気筒、後ろ1気筒という独自の配置を採用。最高出力:40ps/9000rpm、最大トルク:3.2㎏-m/8500rpmの公称値は、RZ250の35ps/8500rpm、3.0㎏-m/8000rpmをともに凌駕。フロント2気筒のチャンバーは一般的な配置だが、リアは、後輪との干渉を避けるために湾曲、車体右側の高位にサイレンサーを配する。

水冷90度V型3気筒エンジンは、NS500の前1気筒、後ろ2気筒と異なり、前2気筒、後ろ1気筒という独自の配置を採用。最高出力:40ps/9000rpm、最大トルク:3.2㎏-m/8500rpmの公称値は、RZ250の35ps/8500rpm、3.0㎏-m/8000rpmをともに凌駕。フロント2気筒のチャンバーは一般的な配置だが、リアは、後輪との干渉を避けるために湾曲、車体右側の高位にサイレンサーを配する。

画像6: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

前後気筒のなす角は90度で、V型4気筒と同様に1次振動がゼロになるためバランサーは持たず、小型軽量なエンジンを実現した。

画像7: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる
画像: キャブレターはVバンク間に3基を並べており、スライドバルブを角形にしたスクエアタイプとしてボディの全幅を縮小。3基ながら並列2気筒と同等な左右幅に抑えている。

キャブレターはVバンク間に3基を並べており、スライドバルブを角形にしたスクエアタイプとしてボディの全幅を縮小。3基ながら並列2気筒と同等な左右幅に抑えている。

画像: ハンドルまわりの眺めはVT250Fとほぼ同じで、ハンドルはアルミ鍛造製のセパレートタイプを採用。クランプ部はトップブリッジ上側にあり、バーに向かって立ち上がるステーが長いため上半身の前傾が緩やかな乗車姿勢となる。黒のスイッチボックスやボタン類に赤で文字を記すのは、当時のホンダ車で多用された手法。フロントフォークはφ35㎜正立式で、上端部にあるゴム製のキャップを外すとエア加圧用のバルブが出現する。

ハンドルまわりの眺めはVT250Fとほぼ同じで、ハンドルはアルミ鍛造製のセパレートタイプを採用。クランプ部はトップブリッジ上側にあり、バーに向かって立ち上がるステーが長いため上半身の前傾が緩やかな乗車姿勢となる。黒のスイッチボックスやボタン類に赤で文字を記すのは、当時のホンダ車で多用された手法。フロントフォークはφ35㎜正立式で、上端部にあるゴム製のキャップを外すとエア加圧用のバルブが出現する。

画像: トップブリッジ上面をヒューズボックスとして活用するのはVT250Fと同じで、HONDAのロゴがあるカバーを外すとブレードヒューズが並んでいる。2連式のメーターはVT250Fとほぼ同デザインで、左の速度計は160㎞/hスケールで80㎞/h以上の文字と目盛りを赤とする。すべてを赤で記した右側の回転計は電気式で、12000rpmが上限、10500rpmより上をレッドゾーンとする。両者に挟まれる警告灯は、最上段が左右ウィンカーとオイルプレッシャー。その下部にハイビームとニュートラルが並び、下段には赤い針を持つ水温計を置く。ビキニカウル上部に四角い大穴を設けてスモークのスクリーンを装着するため、乗車時に円弧状に見えるのはスクリーンではなくカウルの端部だ。

トップブリッジ上面をヒューズボックスとして活用するのはVT250Fと同じで、HONDAのロゴがあるカバーを外すとブレードヒューズが並んでいる。2連式のメーターはVT250Fとほぼ同デザインで、左の速度計は160㎞/hスケールで80㎞/h以上の文字と目盛りを赤とする。すべてを赤で記した右側の回転計は電気式で、12000rpmが上限、10500rpmより上をレッドゾーンとする。両者に挟まれる警告灯は、最上段が左右ウィンカーとオイルプレッシャー。その下部にハイビームとニュートラルが並び、下段には赤い針を持つ水温計を置く。ビキニカウル上部に四角い大穴を設けてスモークのスクリーンを装着するため、乗車時に円弧状に見えるのはスクリーンではなくカウルの端部だ。

画像8: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる
画像9: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

ボア×ストローク:47×48㎜、排気量:249.8㏄。3基のキャブレターはVバンク間にあるため、エアクリーナーボックスはヘッドパイプ後方のスペースを埋めるように装着される。

エンジン性能はP.27に記したとおりで、RZ250を超える数値を得ているが、奇しくもMVXと同時期の1983年2月に進化モデルであるRZ250Rがデビュー。

可変バルブYPVSを装備した新エンジンは、43ps/9500rpm、3.4㎏-m/8500rpmを発揮し、残念ながらMVX250Fはクラス最強の称号を得ることはできなかった。

画像10: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

左右ステップは、サイレンサーステーを兼ねるアルミプレートで支持される。左右ペダルやフットペグの基部は鉄製だ。

画像11: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる
画像12: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

燃料タンクもVT250Fに似た外観だが、シート前側が左右にまわり込む形状はMVX独自のデザイン。容量は5ℓ大きな17ℓを資料に記す。チャンバーを覆い隠すサイドカバーが特徴的だ。

画像13: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる
画像14: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

フロントブレーキは、φ235㎜鋳鉄ディスクをコムスターホイールのハブに固定し、周囲をアルミ製カバーで覆い隠すインボード・ベンチレーテッドディスクを装備。

錆びやすい鋳鉄製ディスクを雨水などから守るとともに、カバーで走行風の流れをコントロールして冷却性の向上を狙った機構で、他のホンダ車にも多用された。キャリパーは片押し式2ピストンを装着する。

画像15: 16インチの前輪やインボードディスク、リアのモノショックなど車体はVTに通じる

連載【心に残る日本のバイク遺産】をまとめて見る

MOOKのバックナンバーはこちら「日本のバイク遺産 2サイクル250史」

Powered By Bikers Station

This article is a sponsored article by
''.