※オートバイ2016年10月号より
お互いにまったく違う個性を持ったツインエンジン
今回は400XとNC750Xという、ホンダのミドルクラス・アドベンチャー系モデルを比較試乗してみました。どちらも、本格的オフロード走行もOKのデュアルパーバスモデルというより、アドベンチャー的スタイリングと乗り味を楽しむツアラー、と言った方がいいでしょう。ホンダのラインアップの中でも、ロードスポーツモデルとして区分されています。
そうそう、いきなりちょっと個人的な話ですが、じつは今、本気で欲しいと思っているバイクの一台がNC750Xなんです。なので今回の試乗では、どちらかというと750Xに少々肩入れ気味のインプレになってるかもしれませんが、ご了承ください(笑)。
試乗した最初の印象をひとことで言うと、750Xは「扱いやすく、取っ付きやすいバイク」だし、400Xは「しっとりした乗り味の、乗りやすいバイク」。
エンジンキャラクターから比較すると、400は比較的高回転型で、750は低中回転型です。排気量の違いを考えれば当たり前というか、小さい排気量で力を出そうとすれば、回転数で馬力を稼がなくちゃならないのは当然のこと。400Xはスペック上、ピークパワーを9500回転で発生、実際、1万回転を少しオーバーするくらいまで回ります。ただしトップエンドは、ちょっと苦しげに回る印象を受けたかな。特にロングツーリングなんかだと、高回転型は疲れるって人も多いと思いますが、そこは仕方ないでしょうね。でも、法定速度内の走りにはなんら問題はないし、高速道路での追い越しも不足感はないですから、充分に良く出来たエンジンです。
馬力は400Xが46PSで、750Xが54PS。排気量ほどの差がないように感じますが、トルクは3・8㎏-mと6・9㎏-mとかなりの差があり、この差が走りの違いに大きく現れています。ボア×ストローク比がロングストロークで、270度位相(400Xは180度)の750Xは、レブリミットは低いけど、そこまでがトルクの塊のようにスパン!と回る。今の自分は、こういうエンジンの方が好きですね。「レブリミットが早い」という意見もよく聞くけど、それはシフトアップすればいいだけの話ですから。
もちろん400Xにも特有の良さがあります。エンジンの回転域を下から上まで使えるので、見晴らしのいいコースで、ガンガン上まで回して走ったりすると、かなり気持ちいいはず。750Xはパワーバンドの上限が低く、それを上回るとすぐトルクも落ちるので、その範囲内でシフトアップしなくちゃいけないんですが、400Xは2速や3速で、回転を上げても下げても上手く使えるから、アクセルワークの練習にもなると思います。それに、回転がずっと伸びやかに上がっていく高揚感は、こうした高回転型エンジンならでは。このフィーリングに慣れてから、750Xに乗ると、「あれ、もう終わり?」って感じるでしょうね。