スクーターの利便性とバイク的な走りを両立
BMWは長くスクーター・カテゴリーを育ててきた。2000年に屋根付&シートベルトでヘルメット着用義務を無くしたスクーター「C1」をリリース。二輪車に新しい解釈をもたらした。そして2012年には、排気量650ccの並列二気筒エンジンをフレームマウントするメガスクーター「C650GT/C600Sport」を発売。スクーターで旅すること、スポーツすることを提案した。両車は好セールスを記録し、2016年にはモデルチェンジを行い、そのスタイルとパフォーマンスをアップデートしている。そして2014年には、BMW初のEVスクーター「CIEvolution」も開発し、市場投入。電気の可能性を定義してみせた。
そして、この「C400X」だ。初のミッドサイズ・スクーターは、アジア市場を狙ったと想像したがメイン市場は欧州。ライバルは日本/台湾/欧州ブランドがひしめく300~400ccカテゴリーである。そこで勝負するために、開発と生産ラインの構築はBMW本社が担当。その生産ラインを引き継ぎ、中国メーカー/ロンシン(LONCIN)が生産を行うという新しいワークフローを構築。それにより価格はグッと抑えられる。オプションパーツを含まないスタンダードモデルを、欧州では7000ユーロ以下での発売を目指して現在調製中という。(日本での販売時期や価格は未定)
エンジンや車体は実にBMWらしい、質実剛健なものだった。ライバルたちを徹底的に研究したというが、既存BMWユーザーが満足できるライドビリティを造り上げるため、BMWのバイク造りのノウハウをつぎ込んだという。なかでもフレームは秀逸。フロントフォークの連結方法やシート下スペースの確保、エンジンが駆動系と一体化しスイングアームとして動くユニットスイングの採用など、スクーターのフレームの剛性確保は難しい。そんななか「C400X」は、バイクに近いフィーリングを造り上げることに成功している。またトルク重視の出力特性を造り上げたエンジンは、反応の良いCVTとの組み合わせで、アクセル操作に忠実な加速を得ることができる。
欧州の先行導入国以外は2019年のデリバリーとなりそうだが、それを期待して待つ価値は十分にあるだろう。
SPECIFICATION ※諸元は本国仕様です
全長×全幅×全高 2210×835×1305mm
ホイールベース 1565㎜
シート高 775㎜
車両重量 201㎏
エンジン形式/総排気量 水冷4ストOHC4バルブ単気筒/350㏄
ボア×ストローク/圧縮比 80×69.6㎜/11.5
最高出力 34PS/7500rpm
最大トルク 3.56㎏-m/6000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 12.8L
キャスター角/トレール量 63.6度/81㎜
変速機形式 CVT
ブレーキ形式 前・後 φ265㎜ダブルディスク・φ265㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70-15・150/70-14
DETAIL
文/河野正士