ミニバイクコースにパイロンを並べた異例のコース設定
ダンロップ・オートバイ杯ジムカーナの特別戦“ジムカーナJAPAN”。いつもは関東で開催されているオートバイ杯などの大会に参加していない地方の大会を走る選手も、「JAPANだけは特別」と毎年遠征してくるという、年に一度の二輪ジムカーナのビッグイベントだ。今年のJAPANは10月8日に、茨城県かすみがうら市のトミンモーターランド開催され、北海道から鹿児島までの全国から各クラス合計193台がエントリーした。今年のJAPANで注目されたのは、これまでJAPANでは例のなかった、トミンモーターランドのAコース、いわゆるミニバイクコースにコースが設定されたこと。異例のこのコース設定が、今年もまたJAPANらしいドラマを産むことになった。
通常のオートバイ杯が開催されている筑波サーキットジムカーナ場のような広大な舗装路面や、トミンBコースも含む教習コースとは大きく異る、コースの外は未舗装のランオフエリアしかなく、幅に制限のあるミニバイクコースに設定された今回のコース。路面コンディションの違いやジムカーナではあまり意識しない路面のカントの影響に加えて、全体的にタイトなセクションの連続となったことで攻略の難しい難コースとなった。走行ラインが限定されるため、タイム短縮のためにはパイロンぎりぎりを攻めるしかなく、パイロンタッチのペナルティが続出。
A級のトップ6ですら、第1ヒート、第2ヒートのどちらかでパイロンタッチをしてしまうという展開の中でトップとなったのが冨永選手&NSR250Rだ。第1ヒートで1分41秒261で暫定トップ、第2ヒートでは一気に1分40秒061までタイムを削るが、パイロンタッチによるタイム加算1秒を受ける。それでも1分41秒061と第1ヒートよりもタイムを短縮。本人は「いまひとつコースと走りが合わなくて攻めきれなかった」というものの逃げ切りには成功。今シーズン初勝利を手にし、ポイントランキングも僅差でトップに浮上した。
2位の吉野選手&CRF450Xは第1ヒートで1分42秒154。第2ヒートではパイロンに限界までラインを寄せてアタックして1分40秒251までタイムを縮め、シーズン終盤に来て復活した切れた走りを見せたが、やはりパイロンに接触してタイム加算を受けて1分41秒251となり、逆転優勝はならず。
3位に食い込んできたのは、最近はオートバイ杯にレギュラー参戦はしていないものの、JAPANには遠征してくる大川選手&NSR250R。トミンでの初開催となった2005年JAPANで優勝、2012年以降のJAPANでは確実に2位か3位となるなど、トミンを得意とする大川選手。久々の勝利を目指した今年は第1ヒートで1分40秒303をマークしたがパイロンタッチで1分41秒303。第2ヒートでは再び1分40秒251を記録したが、痛恨のパイロンタッチで幻に終わり、結局第1ヒートのタイムで3位に。しかし2012年からの連続3位以内は継続された。
大排気量車には不利と思われた今回のタイトなコースで、ビッグバイクで競われるSB級トップ、しかも総合4位という驚くべき速さを見せたのが辻家選手&GSX-R1000。第1ヒートは1分41秒122だがペナルティ3つで大きく後退、しかし第2ヒートでは豪快な走りでペナルティなしの1分41秒734という文句なしの速さを見せつけた。SB級2位の大越選手&GSX-R750も、第2ヒートの1分41秒861で5位に続く。6位はここまで2勝でランキングトップだった池田選手&NSR250R。第1ヒートで1分41秒889で暫定3位、冨永選手、吉野選手を逆転すべく全開アタックした第2ヒートでは1分40秒515までタイムを短縮したが、2つのペナルティを受けてしまい、結局第1ヒートのタイムで6位。僅差ながら冨永選手にランキングトップの座を明け渡すことに。しかし、最終戦でチャンピオンの座を賭けて両者の争いが楽しみになった。
この大会の総合順位上位10台の結果は以下の通り。トップの冨永選手から7位の清野選手、8位の市村選手というB級の2人までが1分41秒台、0.884秒以内に8人が並ぶという稀に見る接戦となった。
1位 冨永崇史 NSR250R 1'41.061
2位 吉野 昇 CRF450X 1'41.251
3位 大川彰人 NSR250R 1'41.303
4位 辻家治彦 GSX-R1000 1'41.734
5位 大越研二 GSX-R750 1'41.861
6位 池田秀一 NSR250R 1'41.889
7位 清野雅之(B級) CBR600RR 1'41.937
8位 市村直生(B級) WR450F 1'41.945
9位 廣瀬 章 NSR250R 1'42.225
10位 矢嶋 尊 GPMR-250 1'42.561
※特記ないかぎりA級
JAPAN恒例、地区対抗戦の行方は?
ジムカーナJAPANがいつものオートバイ杯と違うところといえば「地区対抗戦」が行われること。北海道、東北、ライセンスシリーズ(オートバイ杯本大会)、中部、近畿、中国、四国、九州、関東事務茶屋杯(賞典外)が代表選手を選出、代表の中の3人の平均タイムで競うものだ。今回は北海道代表チームにA級・冨永選手が加わり、賞典外扱いながら第4戦で特別昇格を果たした小川選手が加わった事務茶屋杯チームなど、A級5人を揃える常勝ライセンスシリーズチームも今年はピンチかと思われた。しかし僅差で北海道代表チームを抑えてライセンスシリーズチームが勝利し、地区対抗戦の連勝記録を伸ばした。
地区対抗戦のリザルトは以下の通り。
1位 ライセンスシリーズ(池田・吉野・大瀧・大越・辻家組) 1分41秒615
2位 北海道地区代表(北村・矢嶋・冨永・佐藤・鈴木組) 1分42秒854
3位 中部地区代表(大川・中嶋・三崎・片山・番場組) 1分44秒050
4位 近畿地区代表(古藤・菊地・新久保・宮田・久谷組) 1分45秒525
5位 中国地区代表(大見・山根・大見・渡部・林田組) 1分49秒242
6位 四国地区代表(熊野・坂本・河村・濱下・大高組) 1分50秒048
7位 九州地区代表(工藤・藤澤・野中・馬場・末富組) 1分52秒712
8位 東北地区代表(新井隆光) notime
賞典外 関東事務茶屋杯代表(小川・木村・市村・木村・江間組) 1分43秒716
※タイムはチーム内の上位3人の平均
オートバイ杯ジムカーナ特別戦“ジムカーナJAPAN”のレポートは月刊オートバイにも掲載の予定。この大会の詳細なリザルトをはじめ、各地のジムカーナイベント日程などの二輪ジムカーナ関連情報は、オートバイ杯の運営も担当するJAGE(二輪ジムカーナ主催者団体協議会)のホームページで確認できる。