グッツィ独特の世界を気負わず日常で楽しめる

 今のモト・グッツィと言えば、ネオクラシックのV7シリーズが人気だ。かつての名車、V7をオマージュしたラインナップで、そのオシャレなルックスやコンパクトで取り回しやすい車格などもあって人気のモデルになっている。しかも、なかなか奥の深い走りのテイストを秘めている。

画像1: グッツィ独特の世界を気負わず日常で楽しめる

そのルックスが生み出す雰囲気だけでなく、エンジンフィール、走り、操縦感覚にいたるまで、古いモトグッツィのテイストを匂わせる。オンザレール感覚の高速安定性と身軽なフットワークなど、グッツィならではの車体レイアウトが生み出す、アクでもあり魅力でもある個性を楽しめるのだ。V7シリーズの話を冒頭で長々書いたのは、このV9シリーズがそれと良く似た車体レイアウトをしているからだ。

さて、このV9ローマー、エンジンはクランクケースをそのV7ベースで開発。シリンダーから上を完全新作した853㏄・2バルブで性格はトルク型。55馬力のパワーを6250回転で発揮する。数字だけ見ると非力だが、カワサキのW800やトライアンフのボンネビルT100などと似たスペック。V7シリーズ同様、力量よりもそのパワーフィールに重点を置いた造り込みだ。

外観デザインは先に登場しているV9シリーズモデルのボバーがカスタムチョッパーの雰囲気を醸し出しているのに対し、スタンダードなクルーザールック。タンクデザインは同じで、かつてのV50のデザインを意識したエッジのあるティアドロップタイプだ。

車格はこのクラスにしてはかなりコンパクトで、400と言っても通用しそうなほど。深いフェンダーやフォークを長く見せるデザインは典型的なクルーザールックを強調するため。V7シリーズとはまったく違う乗り物のように思えるが、走ればこれがしっかりモト・グッツィなのだ。

画像: モトグッツィ伝統のクラシカルなモチーフを最新デザインによってリファインした、スタイリッシュなクルーザースタイルがV9ローマーの魅力。特徴的なタンクはV9ボバーと共通だが、カラーリング変更やFホイールの大径化でイメージ一新。

モトグッツィ伝統のクラシカルなモチーフを最新デザインによってリファインした、スタイリッシュなクルーザースタイルがV9ローマーの魅力。特徴的なタンクはV9ボバーと共通だが、カラーリング変更やFホイールの大径化でイメージ一新。

このような姿カタチをした小柄なバイクながら、ゆったりと高速コーナーに入ればまるでレールに乗ったような安定感がある。重心は低く、切り返しは軽い。それにエンジンフィールも似ている。いや、排気量が大きい分、ドスの利いた排気音やトルク型ツインのピックアップも強烈だ。

おそらく3000回転以下あたりを使った追い越し加速など、グッツィの「意地」とも言うべき、身震いを荒々しく乗り手に伝えながら、スポーツスターの883などよりずっと力強いダッシュをする。シャフトドライブなので、コーナリングや強引な切り返しでラフにスロットルを操作すると、ハブギヤがカコッと音を立てて騒々しかったりするが、基本的にはクルーザーを意識させず、ふつうのコミューターとしても走れたりするのだ。

このローマーは、モトグッチのアク、コク、味はしっかりと色んなところで匂わせつつ、街でも普通に楽しめるモデルなのだ。

画像2: グッツィ独特の世界を気負わず日常で楽しめる

主要諸元
全長×全幅×全高 2240×865×1165㎜
ホイールベース 1465㎜
シート高 785㎜
車両重量 199㎏
エンジン形式 空冷4ストOHV2バルブV型2気筒
総排気量 853㏄
ボア×ストローク 84×77㎜
圧縮比 NA
最高出力 55PS/6250rpm
最大トルク 6.3㎏-m/3000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 15ℓ
キャスター角/トレール NA
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320㎜ディスク・φ260㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 100/90-19・150/80-16
■価格:124万8000円

ココに注目!

画像: エンジンはV9ボバーと共通の853㏄縦置き空冷Vツイン。伝統の空冷OHV2バルブというメカニズムを採用しながら最新技術も投入。最高出力55PSを発揮し、欧州の最新排気ガス規制・ユーロ4もクリア。

エンジンはV9ボバーと共通の853㏄縦置き空冷Vツイン。伝統の空冷OHV2バルブというメカニズムを採用しながら最新技術も投入。最高出力55PSを発揮し、欧州の最新排気ガス規制・ユーロ4もクリア。

画像: ベースとなったV9ボバーのフロントホイールが太目な16インチだったのに対し、V9ローマーは細身の19インチを採用。ダイヤモンドカットされたリムによってシャープな雰囲気を演出。

ベースとなったV9ボバーのフロントホイールが太目な16インチだったのに対し、V9ローマーは細身の19インチを採用。ダイヤモンドカットされたリムによってシャープな雰囲気を演出。

画像: リアホイールはV9ボバーと同じ16インチ。マフラーも形状は共通だが、V9ボバーではブラック塗装だったのが、V9ローマーは美しいクロームメッキ仕上げとされている。

リアホイールはV9ボバーと同じ16インチ。マフラーも形状は共通だが、V9ボバーではブラック塗装だったのが、V9ローマーは美しいクロームメッキ仕上げとされている。

画像: 乗り心地の良さを重視し、さらに滑りにくい素材の表皮を使用したクラシカルなデザインのロングシート。グレーのステッチでモトグッツィのロゴが入れられている。

乗り心地の良さを重視し、さらに滑りにくい素材の表皮を使用したクラシカルなデザインのロングシート。グレーのステッチでモトグッツィのロゴが入れられている。

画像: メーターはクラシカルな丸型ケースに収められたアナログ速度計の中に、多機能デジタルディスプレイを内蔵したものを装着。

メーターはクラシカルな丸型ケースに収められたアナログ速度計の中に、多機能デジタルディスプレイを内蔵したものを装着。

ライディングポジション(身長:176㎝ 体重:68㎏)

人が跨がると、車体のコンパクトさがよくわかる。このローマーは後ろ半分が低いので、より小柄に見える。リラックスしたポジションだが、他のグッツィと同じく、慣れるまではヒザをエンジンに当ててしまいやすいのではじめは注意が必要だ。

画像1: ライディングポジション(身長:176㎝ 体重:68㎏)
画像2: ライディングポジション(身長:176㎝ 体重:68㎏)

V9に流れる名車のDNA V50C (1983)

V9のルーツとして欧州でその名が挙がっているのが、軽快なフットワークが評価されていた1980年代のミドルクルーザー、V50C。写真はそのカスタム車だが、タンクの形状や全体のシルエットは、長い年月を経ても現代に受け継がれているようだ。

画像: V9に流れる名車のDNA V50C (1983)

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