ホンダはEICMA 2026において、フルモデルチェンジした新型「CBR1000RR-R FIREBLADE」シリーズを発表した。従来の公道車ベースから「まずレーシングマシン要件を定義する」開発手法へと全面転換。ウイングレス新エアロ、可変ファンネル、フレーム剛性の見直しなど全身におよぶ熟成を遂げ、電制サス装備の「SP」およびホモロゲーションモデル「HRC Works Edition」とともに登場した。

まとめ:吉岡直矢
▶▶▶写真はこちら|ホンダ「CBR1000RR-R Fireblade / SP / HRC Works Edition」(画像66枚)

公道車ベースからHRC直系のレースマシン起点へ

1992年の誕生以来、スポーツバイクの金字塔として君臨してきたファイアーブレードが、大きな転換点を迎えた。従来は市販の公道用モデルをベースにレース用へと仕立てていたが、今回はHRCのワールドスーパーバイク(WorldSBK)チームとともにサーキットで勝つためのレースマシン要件を最優先で設計し、それを市販量産車へと落とし込む手法が採用された。

「レース直系」のコンセプトのもと、コーナリング進入時の安定性や旋回速度、立ち上がり加速の向上、さらには車体全体の徹底的な軽量化が最大の目標に掲げられた。標準モデルに加え、電子制御サスペンションを備える最高級仕様「SP」、そしてレース専用装備を極めた「HRC Works Edition」の3モデル構成で展開される。

情報筋によれば、テスト機を走らせたライダーが「来年のマシンはいいですよ!」と太鼓判だそう。いよいよ日本メーカーの逆襲がはじまるぞ!

量産車初の可変ファンネルと2モーターTBWの融合

1000cc直列4気筒DOHCエンジンは、最高出力217.5PS/14000rpm、最大トルク11.63kgf・m/10500rpmのピーク性能を維持しつつ、全域での扱いやすさと中速域の強化が図られた。

その核となるのが、ホンダの量産二輪車として初採用となる2段階可変エアファンネル(Variable Air Funnel)だ。1万1750rpm未満ではファンネルがロング状態となり吸気効率を高めて中速トルクを増強、1万1750rpm以上ではショート状態へと切り替わり、超高回転域の圧倒的なピークパワーを引き出す。

さらに、ピストン上面と燃焼室の精密な削り出し加工により圧縮比は13.6:1から13.8:1へと引き上げられた。独立した2基のモーターでスロットルを制御する「2モーター スロットルバイワイヤ(TBW)」は、1・2番気筒と3・4番気筒を独立制御することで、低開度時の緻密なレスポンス向上と減速時の強力かつスムーズなエンジンブレーキ制御を実現している。

また、シリンダーヘッドカバーやクラッチカバーなどへのマグネシウム素材の導入、アルミボルトの採用、クランクケースの軽量化などにより、エンジン単体で約1.1kgの軽量化を達成した。トランスミッションはメイン軸とカウンター軸の間隔を3mm広げた68mmへと変更され、ギア比の自由度を拡大するとともに、1速が5%ロング化された。排気系にはチタン製アクラポヴィッチ製マフラーが標準装備される。

剛性バランスを最適化した新設計フレームとシャシーの進化、チタン製タンクも採用

車体まわりも完全新設計のGDC製アルミニウムダイヤモンドフレームへと刷新された。フレーム単体重量9kgを維持しつつ、横剛性を従来比で20%低減させることで、旋回時のしなやかさとグリップフィーリングを大幅に高めている。リアショックのロア側取り付け位置はフレームからエンジン後部へと変更し、エンジンハンガー構造も見直された。

車体寸法はホイールベースが1450mm(SP)/ 1455mm(STD)となり、キャスター角/トレールは24.0°/101mm(SP)に設定された。前後重量配分は53.3:46.7へと前寄りに。またクランク軸中心位置を5.2mm引き上げ、シート高を843mmに高めることで、ライダーの姿勢移動とコーナー進入時のレスポンスを強化している。

プレス成形アルミニウム製スイングアームは1.2mm短縮の620.6mmとなり、ピボット軸径を3mm縮小して横剛性を12%低減しつつ単体で200g軽量化。ドライブチェーンも525から520サイズへと変更され270gの軽量化を果たした。中空7本スポークの軽量ホイールは前後で780g削減され、バネ下重量の低減に貢献している。

さらに、樹脂カバーを廃して露出させたブラシ仕上げのチタン製燃料タンク(容量16.6L)の採用により1.4kgの軽量化を達成。装備重量は標準モデルで199kg(従来比-1.3kg)、SPで201kg、HRC WEで200kgという驚異的な軽さを誇る。

ウイングレスで同等ダウンフォースを生む新エアロダイナミクスと電子制御

HRCとの共同開発による空力パッケージは、外部ウイングレットを廃しながら従来と同等のダウンフォースを発生させる画期的な造形となった。MotoGPからの知見を活かしたロワカウルサイドポッドが深いバンク時の空力効果を生み出し、旋回性能を高める。シートカウルにもウイング形状が採用されるなど外装デザインが一新されたほか、ヘッドライトも新デザインのLEDタイプを採用している。

画像: CBR1000RR-R Fireblade [Pearl Deep Mud Gray]

CBR1000RR-R Fireblade [Pearl Deep Mud Gray]

足まわりについては、標準モデルはSHOWA製Φ43mm BPF倒立フォークとBFRC-Liteリアショック、ニッシン製4ピストンキャリパーを装備。上位機種のSPモデルは、最新のスプールバルブ技術を搭載したオーリンズ製スマートEC 3.0電子制御サスペンション(NPX/TTX36)とブレンボ製Hypureキャリパー、専用マスターシリンダーを備える。

6軸IMUを核とする電子制御システムは、9段階のHSTC(ホンダセレクタブルトルクコントロール)、5段階のパワーモード、3段階のエンジンブレーキ制御、3段階のウイリーコントロール、4段階のスタートモードを統合管理する。ボッシュ製6軸IMUと連動するコーナーリングABSには、サーキット走行時にリアABSの介入を停止する「RACEモード」が新設された。

極限のレースベース「HRC ワークスエディション」の衝撃

そしてラインナップの頂点に立つのが、WorldSBKレースベースマシンとして特別開発された「CBR1000RR-R Fireblade HRC Works Edition」だ。

画像: CBR1000RR-R Fireblade HRC WORKS EDITION [Ignition Red]

CBR1000RR-R Fireblade HRC WORKS EDITION [Ignition Red]

最大の特徴は、ホンダの市販車としては異例な車体ジオメトリの調整機構だ。ステアリングステムのカラー交換によりキャスター角の微調整が可能であり、スイングアームピボット位置も調整可能な構造を持つ。サスペンションにはオーリンズ製のメカニカルレースサス(NPX28-30/TTX36)が奢られ、ブレーキにはStylema比で32g軽量化されたブレンボ製Hypure Sportsキャリパーが採用される。

空力面では、CFRP(カーボン強化樹脂)製のデュアルエレメントウイングレットを装着。上部ウイングの表面積を従来比2.4倍に拡大し、最高速299km/h到達時には標準モデル比で3.5倍という強烈なダウンフォースを叩き出す。さらにカーボン製フロントフェンダーやリアシートダクト、シングルシート仕様が標準装備される。また、スタンダードモデルとSPではブラックアウトされていたフレーム&スイングアームがシルバー仕上げになっているのも特徴だ。

キットパーツとして用意される「HRCボトムニュートラルシフトシステム」を装着すれば、1速と2速の間で誤ってニュートラルに入るリスクを排除するレース専用のシフトパターンに変更可能だ。ボディカラーは伝統のイグニッションレッドを身に纏い、まさに「勝つためだけに生まれた」純血のレーサーと言える。

メーカー「車名」の主要スペック/燃費/価格/生産国

CBR1000RR-R[SP]〈HRC Works Edition〉
全長×全幅×全高2105×735×1150mm[2105×735×1150mm]〈2105×750×1150mm〉
ホイールベース1455mm[1450mm]〈1450mm〉
最低地上高130mm[130mm]〈135mm〉
シート高843mm[843mm]〈847mm〉
車両重量199kg[201kg]〈200kg〉
エンジン形式水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量1000cc
ボア×ストローク81.0×48.5mm
圧縮比13.8
最高出力160kW(217.5PS)/14000rpm
最大トルク114N・m(11.6kgf・m)/10500rpm
燃料タンク容量16.6L(チタン製)
変速機形式常時噛合式6段リターン
ブレーキ形式(前)Φ330mmダブルディスク+ニッシン製4ピストンキャリパー
[Φ330mmダブルディスク+ブレンボ製Hypure 4ピストンキャリパー]
〈Φ330mmダブルディスク+ブレンボ製Hypure Sports 4ピストンキャリパー〉
ブレーキ形式(後)Φ220mmディスク+ブレンボ製2ピストンキャリパー
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17・200/55ZR17
乗車定員2名[2名]〈1名・シングルシート仕様〉
燃料消費率(WMTCモード値)14.9km/L(6.7L/100km換算)
製造地日本
価格未発表(TBC)

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