ジョナサン・レイが驚速タイムを叩き出した金曜日
レースウィークに突入した金曜日。フリー走行ではYoshimura SERT Motulが2分05秒323でトップタイムを記録し、2番手にはBMW、3番手にはF.C.C. TSR Honda Franceが続いた。
同日午後に行われた公式予選は、まさにタイムの出し合いとなった。予選1回目、ライダーブルーで浦本修充(AutoRace Ube Racing Team)、ライダーレッドでジョン・マクフィ(F.C.C. TSR Honda France)がそれぞれトップタイムをマーク。そしてライダーイエローで出走したジョナサン・レイ(Honda HRC)が2分04秒583という驚速タイムを叩き出し、Honda HRCが予選の暫定首位に浮上した。
続く予選2回目でもHonda HRCの快進撃は止まらない。ライダーブルーの高橋巧が2分05秒088を記録すると、ライダーイエローのレイが自身のタイムをさらに削り取る2分04秒422でトップを獲得。対するライダーレッドでは、マイケル・ファンデルマーク(BMW)が2分04秒485でトップタイムを記録した。各チームによる熾烈なタイムアタック合戦の結果、レイの圧倒的なパフォーマンスが光ったHonda HRCが見事に首位通過を果たし、暫定トップ10が出揃った。
土曜日に行われた決勝レースを見据えた土曜フリー走行では、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが2分06秒094をマークしてトップタイムを記録した。2番手にはHonda HRC、3番手にはYoshimura SERT Motulが続いており、各ワークスチームが決勝に向けて順調な仕上がりを見せている。また、SSTクラスではNCXX RACING with RIDERS CLUBが2分08秒943、EXPクラスではTeam SUZUKI CN CHALLENGEが2分08秒568でそれぞれクラストップタイムを記録した。

同日の午後14時15分からは、鈴鹿8耐の名物であり上位10チームが最終的なスターティンググリッドを争う「トップ10トライアル」が実施される予定だったが、あいにくの雨天により中止。代替となるセッションも行われないことがアナウンスされ、決勝レースのスターティンググリッドは金曜日に行われた公式予選の最終順位をもとに決定されることとなった。これにより、予選で圧倒的な速さを見せ暫定トップを獲得していたHonda HRCのポールポジションスタートが確定した。
波乱の幕開け、オートレース宇部が好スタート

ウェットコンディションで行われた今大会。
決勝日を迎えた鈴鹿サーキットは朝から分厚い雲に覆われ、時折小雨が降っていたが、午前11時30分のスタート直前には雨は止み、路面も乾き始めていた。緊張感に包まれるなか、ル・マン式スタートで過酷な8時間が幕を開ける。
ホールショットを奪ったのはYoshimura SERT Motulのグレッグ・ブラッグであったが、それを上回る好反応を見せたのがAutoRace Ube Racing Teamの浦本修充。早々にブラッグとHonda HRCの高橋を捉えてトップに浮上し、快調にマージンを築いていく。しかし、高橋もすぐにペースを上げ、11周目のS字カーブでトップを奪い返した。
一方、スタートでエンジンがかからず大きく出遅れたBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMも凄まじい追い上げを見せ、開始30分ほどで一気に3番手にまで順位を回復させるなど、序盤から激しいバトルが繰り広げられた。
変わりゆく天候と2度のセーフティカー導入
レースが大きく動いたのは開始から35分が経過した頃。難しい路面状況から転倒するマシンが相次ぎ、オイル散布による路面清掃のため、1度目のセーフティカー(SC)が導入された。
このSCランの最中にコース上では雨粒が増え始め、路面は再びウエットコンディションへと変化していく。12時38分にレースが再開されると各チームはピット作業のタイミングを探り始め、Honda HRCは燃費の良さを見せつける。
33周目まで周回した後、高橋からレイにライダーチェンジ。しかし、1度目のピット作業を終える13時05分頃、コース上で水しぶきが上がるほどにまで雨量が増加し、再びSCが導入される事態となった。約40分間に及ぶSCランを経てレースが再開された頃には、迅速なピットワークを見せたYAMAHA FACTORY RACING TEAMが2番手に浮上し、上位陣の順位も目まぐるしく入れ替わった。

5番グリッドスタートから2番手に浮上したYAMAHA FACTORY RACING TEAM
Honda HRCが築いた圧倒的なリードと完全勝利
雨が少しずつ弱まり始めたレース中盤、3時間経過時点ではHonda HRCがトップを守り、2番手のYAMAHA FACTORY RACING TEAMに約11秒の差をつけていた。その後、2番手に浮上したAutoRace Ube Racing Teamが驚愕のタイムを叩き出して猛追を見せる展開となるが、Honda HRCの高橋は最多勝記録保持者としての実力を遺憾無く発揮し、約25秒ものアドバンテージを築き上げて首位を快走する。4時間経過を前にHonda HRCは3度目のピットインを行い、高橋から再びレイへと交代し、完璧なピットワークでトップを死守した。
その後もHonda HRCはトップの座を譲ることなく、6時間経過時点でも首位を独走する。レース終盤には2位のYAMAHA FACTORY RACING TEAMとの差が縮まるも、YAMAHAが第2SCの集団に入ってしまいその差が1分以上となり勝負あり。
最終的にセーフティカー先導のままレースはチェッカーフラッグを迎え、Honda HRCが優勝。さまざまな波乱や天候の変化があった今大会だったが、Honda HRCは経験豊富な2名のライダーで乗り切り、鈴鹿8耐5連覇という偉業を成し遂げた。

チームとしては5連覇、高橋巧は前人未到の8勝目を記録した。
また、各クラスの優勝争いも最後まで白熱。SSTクラスではNCXX RACING with RIDERS CLUB(長島哲太/亀井雄大/伊達悠太)が見事にクラス優勝を果たした。そしてEXPクラスでは、Team SUZUKI CN CHALLENGE(津田拓也/水野涼/エティエンヌ・マッソン)が序盤からトップ10圏内に食い込むなど猛追を披露し、堂々のクラス優勝を飾っている。
予選での異次元のスピード、そして決勝での完璧なレース運び。Honda HRCの強さは、目まぐるしく変わる路面状況と2度にわたるセーフティカーという波乱の中でも決して揺らぐことはなかった。ライバル勢の激しい猛追や不測の事態をものともしない王者の風格は、まさに5連覇にふさわしい圧倒的なものであったと言える。
同時に、果敢にトップを奪ったAutoRace Ube Racing Teamの序盤の奮闘や、絶望的な遅れから驚異的なリカバリーを見せたBMW、そして各クラスでドラマを生んだライダーたちの姿は、今年の8耐がいかにハイレベルで過酷なサバイバルであったかを物語っている。天候に翻弄されながらも、参戦チームと運営、そしてファンが最後まで戦い抜いた。
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