文:小川 勤 写真:南 孝幸、松川 忍 撮影協力:東京ドイツ村
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ビモータ「TESI H2 TERA」インプレ(小川 勤)

bimota
TESI H2 TERA
総排気量:998cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:820mm
車両重量:244kg
価格:638万円
発売:2026年7月1日
イタリアの職人が夢のような機構を現実に落とし込む

改めて、ビモータは天才だと思った。
車体前後にスイングアームが生え、シート下に前後サスペンションをマウントするエポックメイキングな車体構成は、200PSの大馬力を完璧に支配し、走り出してしまえば244kgの車両重量をまるで感じさせない。次々と驚きと感動が訪れ、許されるならずっと走り続けていたいと思ったほどだ。
筆者はこれまでにも数々のテージシリーズに乗ってきた。前輪のアクスル部分にハブを持つことからハブステアと呼ばれるこの機構は、様々なメリットを持つ。最大の特徴は減速Gがかかった際の、フロントサスペンションの上下動とステア追従が機能として分離されている点で、これが高い路面追従性と安定性を生む。分かりやすい挙動は、ブレーキングで前のめりにならないことで、その際にキャスター&トレール量が変化しにくいところだ。
また、テージにはフレームらしいフレームがなく、エンジンを左右から挟む形で前後スイングアームやテージシステムを懸架するためのステーを用意。通常のエンジンを取り囲むように配置されるフレームは、ブレーキング時にステアリングヘッドに大きな慣性が集中するため剛性が必要になる。その思想でフレームを作るとどうしても重たくなってしまうのだ。
テージの場合、減速Gがかかるはハブ部分になる。だからフレームは必要ない。車体上部に減速時のストレスがかからず、さらにフロントフォークもないため、重心とロール軸が下がり、重量以上にハンドリングは軽くなる。
200PSをどこまでも加速させる独創の機構

TESI H2 TERAはこの機構をクロスオーバーに落とし込んだ。前述したことを理解した上で乗るとTESI H2 TERAは抜群に面白い。今回は一般道とサーキットでテストした。
まずは、一般道を走り出すと前後サスペンションがシート下でフワフワと動く。これはかつてのテージからは感じたことがない動き。かといって車体の姿勢変化が大きいかというとそうでもない。ただ、ラフに進入したり、スロットルを開けたりすると車体の揺れが増幅する。違和感はあるが怖さはなく、その乗り味は独特だ。

そしてサーキットへ。フワフワ感が心配だったが、それは杞憂だった。1つ目のコーナーから不安なく走ることができ、ストレートに帰ってくる頃にはスロットルは全開になっていた。アベレージを上げるとTESI H2 TERAは安定する。2、3速は全開で加速、4速で200km/hほど出してみたが、超ワイドなハンドルはまるで振られないのだ。
同日に試乗したKB998 Riminiよりもストレートスピードは速く、TESI H2 TERAが世界最速のクロスオーバーであることの疑いの余地はない。

さらに走り込んでみる。通常はサスペンションと操舵系が一体で動くため、減速時に大きな荷重がかかると車体が前下がりになり、前輪がどちらかに切れ込もうとしてバランスを崩しやすいが、TESI H2 TERAはそういったシーンでもそこから少しブレーキを緩めれば簡単に曲がれてしまうのだ。
テージならではの乗り方をマスターするとさらなる世界が待っている
また、セルフステア(後輪が倒れる動きに追従して前輪がステアすること)のレスポンスが抜群に良いのも特徴で、これも重量を感じさせない軽い動きに貢献。そして低い重心とロール軸の影響から、リーンが始まってもさらに向きを変えようとするため、グイグイと曲がる感覚を味わえる。
この車体の動きを理解した身体の重心移動ができると『テージ使い』の道が開けてくるのである。

峠と高速道路を繋ぎながら国を跨ぐ欧州のハイスピード長距離ツーリングが思い浮かぶ。ライダーはもちろん、パッセンジャーも終始快適に過ごせるだろう。
「キュルルルルッ」。エキゾーストノートだけでなくスーパーチャージャーのインペラが回る音が響く。大パワーをいくら与えても何事も起きない世界を現実として受け入れるには少し時間がかかる。
そしてバイクは、まだ未知のものがたくさん潜んでいる神秘的な世界であることが伝わってくる。それをTESI H2 TERAが教えてくれる。
興味深い気持ちで、ただただ感心しながらスロットルを開け続ける。やっぱりビモータは天才だ!
ビモータ「TESI H2 TERA」ライディングポジション・足つき性
シート高:820mm
ライダーの身長・体重:165cm・68kg


ハンドルはかなりワイドで、長距離も快適そう。跨ってもサスペンションはほとんど縮まないが、前後に揺するとよく動くことと、通常のバイクとまるで異なることが伝わってくる。シートは高いが、足つきはきちんと片足を着けば問題ない。
