まとめ:ヨ(オートバイ編集部)
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各カテゴリーのオーバーラップする領域が大きくなった現代のタイヤ
トライXで万全! ……というベテランにだけわかるネタはともかく、昭和~平成~令和に共通するバイク乗りの悩みといえば『タイヤ選び』である。耐摩耗性、グリップ、価格は昔から注目されてきた項目だが、最新事情はどうなっているのか、わかりやすく紐解いていきたい。
昭和の頃は今よりもタイヤ選びがシンプルだった。ツーリングタイヤはとにかく耐摩耗性重視、スポーツタイヤは最大グリップ力、そしてどちらにも欠かせないのは価格競争力だったが、主流がバイアスタイヤだったこともあって今よりもタイヤ自体の単価が低かったため、まずは求める性能で評価されることが多かったようだ。
平成に入ると、趣味性の高いバイクでは次第にラジアルタイヤが主流になってきたが、やはり耐摩耗性あるいはグリップ力、サーキットのラップタイムやレースでの成績など、比較的シンプルな指標でタイヤが評価されていたように思う。
少しずつ雰囲気が変わってきたのは、2000年代に入ってしばらく経った頃、平成中期~後期あたりからかもしれない。それまで地味な存在と思われがちだったツーリングタイヤが一時代前のスポーツタイヤ並みのグリップ力を発揮しはじめ、スポーツラジアルも耐摩耗性や低温環境への適応力などを拡張。それぞれの守備範囲が以前よりもオーバーラップを強めはじめた。
さらに、この頃から“性能を長きにわたって維持する”という指標が少しずつ注目されはじめた。「スリップサインが出るまではまだだいぶ溝が残っているが、ウェット性能やハンドリングはガタ落ち」ではダメ。摩耗したとて、いかに性能の落ち幅を小さくするか……そんな部分にメーカーは注力し、ユーザーにアピールしはじめていった。
時代は令和に移り変わり、公道で攻めた走りをするのはダサイという風潮が強まる(というか元々違法ではあるのだが)とともにツーリングタイヤの性能が上がり、サーキットにでも持ち込まない限りグリップ力に不満を感じる場面がほとんどなくなった。低温環境でも安定してグリップし、耐摩耗力も高いツーリングタイヤで、公道走行のほぼ全てを問題なくこなせるようになってしまったわけだ。
これにて令和のタイヤ選びはすべて解決!

……というわけにはいかない。各タイヤメーカーが、ラジアルタイヤだけでもハイグリップ(サーキットで本領発揮)、スポーツ(公道メインでサーキットにも対応)、スポーツツーリング(100%公道)と、それぞれにラインナップしているのには理由があるからだ。ほかにも、アドベンチャータイヤやクラシック向けなど、車両の特性やルックスに合わせた機種もある。
ここからは、各カテゴリーのタイヤがどんな性格を持っているのか解説していきたい。令和のタイヤ選びの参考ししていただければ幸いだ。
ほぼ完全無欠?! スポーツツーリングタイヤは販売数もダントツ
タイヤが暖まる前、また低温環境でも一定以上の性能を発揮することができ、ウェット性能は他のカテゴリーよりも優れ、耐摩耗性能もいちばん高い。それがスポーツツーリングタイヤだ。昔はツーリングタイヤという呼称が一般的だったが、現在は守備範囲を広げるとともに、頭に“スポーツ”と付けて呼ばれるようになっている。
ドライ路面でのグリップ力はスポーツタイヤ&ハイグリップタイヤに譲るが、実はサーキットに持ち込んでも無理に攻め続けなければ大きな破綻はない程度にグリップし、昔のように『コンパウンドの温度が高くなりすぎると熱ダレによって一気にグリップ力が低下する』ということもなくなった。(※低下しないわけではなく、性能の落ち方が緩やかになった)
現代のスポーツツーリングタイヤはシリカの配合などコンパウンド技術が飛躍的に進歩し、また構造設計も低荷重から高荷重まで安定して性能を発揮でき、コンパウンドに負担をかけないように進歩してきているのだ。
ゆえに公道ユースならほぼ完全無欠と言えるが、一方で良くも悪くもタイヤに存在感がないことも特徴。過酷な環境に適応し、鼻歌まじりで景色を眺めながら走れる“脇役に回るがゆえの存在感の薄さ”が、積極的にタイヤの状態を感じ取りながら走りたいというときには、ちょっと物足りなく感じることもある。
そうしたスポーツマインド的な部分を除けば、優れた耐摩耗性とウェット性能、それを長く性能維持する特性を持つスポーツツーリングタイヤは、さりげなく走りを支えてくれる最高の相棒になるはずだ。ラジアルタイヤの各カテゴリーの中でダントツの売れセンになっているのもうなずけるだろう。

写真はミシュラン・ロード6(MICHELIN ROAD6)。太さの異なる溝(細いものはサイプと呼ばれる)を配置することで摩耗後も高いウェット性能を発揮し、多くのツーリングライダーから絶大な支持を集める。
スポーツ性と遊び心を満足させるスポーツタイヤは、ツーリング性能も併せ持つ
公道で軽快なハンドリングを提供し、たまのサーキット走行でもラップタイムを追求するのでなければ十分なグリップ性能を発揮するのがスポーツラジアルタイヤだ。
ドライ路面でのグリップ力が高く、それでいて公道タイヤに求められるウェット性能も耐摩耗性能も十分に確保。ツーリングタイヤほどではないが低温環境でもきちんと機能する。スポーツ性を主眼としながらも、ツーリング性能にも守備範囲を拡大してきたのがこのカテゴリーだ。
こう書くと、ドライグリップが高いほかはツーリングタイヤと大差ないのでは……と思われるかもしれないが、決定的な違いがある。それは“遊び心”だ。
スポーツツーリングタイヤの項で“存在感の薄さ”という点に触れたが、ここがまさにスポーツタイヤの真骨頂。低荷重域から高荷重域まで反応に変化が少ないスポーツツーリングタイヤに対し、スポーツタイヤは荷重域を変化させることで応答性とフィーリングが変化し、自然にタイヤの存在感を意識しながらマシンをコントロールしていく気にさせる。
これは現代の公道で忌避される“攻めた走り”をする以前の荷重域でも味わえるもので、タイヤの反応を楽しみながら爽快な走りを堪能することが可能なわけだ。
景色を楽しむために存在感を薄めた相棒がスポーツツーリングタイヤだとすれば、スポーツタイヤはバイクとの対話を楽しみたいライダーのためのアイテムといった位置づけになるだろう。
もちろん、一般的な街乗りでもスポーツツーリング系より一段軽快なハンドリングになることもメリット。一方で、ウェット性能を重視するならスポーツツーリングタイヤには流石に及ばないという点も留意しておきたい。

写真はブリヂストン・バトラックスハイパースポーツS23(BRIDGESTONE BATTLAX HYPERSPORT S23)。評価の高かった前作S22から特にエッジグリップを高めたが、それ以外の領域も全方位で向上した。
本領発揮はサーキットで! ハイグリップ系は自制心のある大人にこそすすめたい
公道走行に必要な低温での機能性やウェットグリップ、耐摩耗性能を最低限以上には備えつつも、ドライグリップ性能に主眼を置いているのがハイグリップタイヤだ。公道の常識的な走りの範疇ではなかなか本領発揮できないが、サーキットなど思いっきり走れる環境に持ち込めば心強い味方になる。
とはいえ、昔に比べればタイヤの暖まりやすさも格段によくなり、溝は少なく見えてもウェット性能は無理さえしなければ大丈夫。耐摩耗性も平成前期のように3000kmでハンドリングがガタガタに……なんていうことはない。
それでも、本領発揮したければサーキットに持ち込むのが一番、さらにラップタイムを意識しはじめたらレーシングコンパウンドのタイヤに履き替えたくなるというのが悩みどころかもしれない。
使い方としては、年に1~3回のサーキット走行会に参加しつつ、普段は公道を悠々と流し、ワインディングでは良識の範囲内で快走するというのが似合うだろう。
フィーリングとしては、スポーツタイヤよりも高荷重設定になっており、加速/減速のメリハリを求めてくる傾向。もう少しユルい気分で乗りたいなら、スポーツタイヤのほうが浅い荷重域から反応してくれるので楽しみやすいはずだ。
タイヤが求める荷重域はあくまでもそれを許す環境でだけ発揮させ、あとは自制心を持って付き合うことができる。そんなユーザーにこそすすめたい。

写真はピレリ・ディアブロスーパーコルサSP V4(PIRELLI DIABLO SUPERCORSA SP V4)。“スパコル”の愛称でも知られるレーシングコンパウンドのディアブロスーパーコルサSC V4と同じパターンが刻まれるが、公道適性を高めたコンパウンド配合になっている。
アドベンチャータイヤは用途×見た目で選ぼう
アドベンチャーバイクには、オフロードを意識したブロックパターンのタイヤが数多くリリースされている。また、最近はオンロードのスポーツツーリングタイヤにもアドベンチャーバイク向けのサイズがラインナップされるようになってきた。
完全にオンロードしか走らないのであればスポーツツーリングタイヤを履くのもおすすめだが、やはりバイクの性格上、ブロックパターンのほうが似合うのも確か。
そんな需要を考慮して、近年はブロックパターンっぽいデザインながらオンロード主体の用途に合わせたタイヤもリリースされてきている。オンロード主体でも見た目で選ぶというユーザーに応えるラインナップといえよう。
一方で、林道なども走るユーザーにはオフロードでのグリップ性能を高めた機種が選択肢に入ってくる。これはもうどの程度オフロードを重視するかで選び方も千差万別。オフロード性能を高めればオンロード走行時のロードノイズが増え、またグリップ力も低くなる傾向なので、自分の乗り方に合わせて選ぶことがオンロードタイヤ以上に大切になるかもしれない。

写真はメッツラー・カルー4ストリート(METZELER KAROO 4 STREET)。オンロード70%、オフロード30%の走行シーンを想定したというだけあって、ブロックパターンながらゴツゴツしすぎていないのが特徴だ。
クラシック系は見た目が大事!
ネオクラシックモデルや旧車向けにはバイアスタイヤとラジアルタイヤがラインナップされるが、ラジアルをメインに扱っている本記事ではラジアルに絞って話をしよう。
現代のネオクラシックバイクは、ネイキッドモデルと車体の基本を共有しているケースが多い。また、ラジアルタイヤ指定の旧車(1980年代後半以降のバイク)もあるが、どちらにも共通するのは、タイヤ剛性&グリップ力が高すぎるとあまり塩梅がよくない(一部の機種で車体剛性とバランスが悪くなる)こともあるのと、そもそもシャープな現代デザインのタイヤは似合わないことも少なくない(パフォーマンス系カスタムをしている場合は別)。
そこで検討したいのは、クラシック系に向けてデザインされたタイヤを選ぶこと。これらは往年の旧車をイメージしたパターンを採用し、スタンダードタイヤ的な性能分布で設計されていることから、安心して見た目重視で選ぶことができる。ちなみに、ミシュラン・ロードクラシックはプレミアム寄りで耐摩耗性も優れている(余談だが筆者は2度購入している)。

写真はダンロップ・TT100GPラジアル(DUNLOP TT100GP RADIAL)。伝統のTT10GPのパターンをラジアルタイヤで再現しつつ、シリカ配合の最新コンパウンドでドライ/ウェット問わず安定したグリップ力を発揮する。
まとめ
スポーツツーリングタイヤを選べば万全! というのはそれほど間違っていない。実際のところ、それで不都合を感じる場面はほぼないと言っていいだろう。しかし、バイクは趣味の乗り物。同じようなペースで走ったとしてもフィーリングは大切だし、見た目も大事。そんな令和のタイヤ選びは、どれを選んでも後悔が少ないゆえに違いを見いだすのがちょっと難しく悩ましいのだ。本記事が悩めるユーザーの参考になれば幸いです。
本記事で紹介しきれなかったタイヤの扱い方や豆知識は、記事末にある関連記事の「教えてマイスター!|SP忠男 浅草本店・小山内店長に訊く! タイヤの疑問・質問15連発!」をご参考に。
Q&A
Q.スーパースポーツにスポーツツーリングタイヤってアリ?
A.タイヤを“走りを変えるカスタムパーツ”として捉えることができるなら大アリ。スーパースポーツのスタイルは好きだが、走りは穏やかで疲れないほうがいい、という向きには最適だ。
ただし、タイヤと対話しながらの爽快な走りを求めたときにはちょっと反応が物足りなく感じるかも。その逆に、スタンダードネイキッドなどにスポーツタイヤを履かせるのも、バイクが一段軽快になった姿を楽しめることだろう。
Q.いつ交換すればいい? 最近のは耐摩耗性が高すぎて……
A.最近のタイヤは、乗り方にもよるが公道使用で1万5000km以上走ってもまだスリップサインに到達しない……なんていうこともザラにある。また、年間の平均走行距離が短くなっていることもあって、交換時期の判断がつきにくい時代になってきた。
しかし、使用しても放置しても、時が経てば少しずつコンパウンドは劣化し、次第に本来の性能が発揮できなくなっていく。また、平成前期に比べれば大きく改善されたが、偏摩耗によるハンドリングの悪化や、摩耗でコンパウンドが薄くなることによる路面追従性の低下もある。
なので、おすすめは3年経ったら減っていなくても交換するという、期間によって管理する方法だ。頑張って粘ったとしても5年はやめておきたい。もちろん、たくさん走る人でもスリップサインが出るギリギリまで粘るよりは、ハンドリングや路面追従性などのフィーリングが悪化してきたと感じたら交換するのがおすすめだ。
Q.普段のタイヤの管理はどうすればいいの?
A.まずは空気圧を車両メーカー推奨の値にしておくことが大切だ。タイヤの空気は、密封されているようでゴムの微細な隙間を抜けたりしながら、少しずつ抜けていく。クルマのタイヤよりも容積が少ないこともあって、バイクは1か月で空気圧が5~10%低下するとされている。なので最低でも月1、可能なら2週間に1回程度で空気圧チェックをするのが理想。バイクショップでやってもらうのが最も安心だが、ガソリンスタンドを利用する場合は設置された空気圧計に誤差があることもあるので、自分で空気圧計を所有しておくか、行きつけのガソリンスタンドで空気を充填した後にバイクショップで空気圧を見てもらい、誤差を知っておくようにするといい。
空気圧を保つことで路面追従性やグリップ力、直進安定性が正常に働くとともに、燃費の悪化や偏摩耗を防ぐことができる。空気圧が下がりすぎるとパンクも招きやすいので注意が必要だ。
また、タイヤ表面に異物が刺さっていないか、油っぽい汚れが付着していないか、ヒビ割れなどがないかは頻繁にチェックするといい。毎日とは言わないまでも、何度か走行したら、また空気圧チェックの際にも行うのがおすすめ。それほどの頻度ではなくてもいいが、残り溝の深さや偏摩耗、エアバルブまわりのゴムの劣化も時々チェックしておこう。




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