文:齋藤春子 写真:松川 忍
株式会社ウィングローブ(WILD WING ショールーム)

東京都台東区千束4-11-9 三ノ輪ガーデン 1F
営業時間:月〜金曜日 10時〜18時
定休日:土日祝
※来社の際は予約推奨
WILD WING
2011年設立の株式会社ウィングローブは、アパレルメーカーやブランドショップ、アパレル卸の商品制作(OEM生産)を手掛けると共に、バイクブーツの自社ブランド『WILD WING』の制作/販売を行う靴メーカー。
『WILD WING』というブランド名には、自社のブーツを履くことで「ライダーにもっと飛び立って欲しい。ワイルドに遊び回って欲しい」という藤林社長の願いが込められている。
株式会社ウィングローブ 代表取締役
藤林勝士さん

10代からレースに目覚め、関東選手権とSUGO選手権で計4度のクラスチャンピオンを獲得。1997年にはヤマハサテライトチームより全日本ロードSBKクラスに参戦。ちなみに1971年生まれの藤林さん、1980年代の月刊オートバイの人気コーナー「俺サ」に掲載された経験をお持ちとか。
元全日本ロードライダーである藤林さんは、「レーサー時代はたくさんの人のサポートに支えられ、成長させてもらったので、今度は自分がバイク専用のブーツを作ることでライダーを支える側になりたい」と語る。現在もバイク愛は変わらず、愛車はWR250Xとトレーサーとスーパーカブ。


『これを履いておけば大丈夫』と胸を張れる靴をつくる
“乗りやすさ”を徹底追求したWILD WINGのブーツ
藤林さんのこだわりを詰め込み、試行錯誤を徹底することで生み出されるWILD WINGのライディングブーツ。何度も改良を重ねた自社開発の牛革を用い、最初からゴワつかずに足に馴染む、柔らかな履き心地とフィット感を実現している。
POINT1 斜めカットのヒール
前部が斜めにカットされた特徴的なヒールは、ヒールをステップに添えると自然と足が真っすぐなベストポジションを取り、シフト&ブレーキの操作性が向上する形を徹底研究。各サイズごとに専用の金型を作り、ミリ単位で形を調整している。


POINT2 曲がりやすい底面
バイクへの乗りやすさだけでなく、降りたときの歩きやすさも追求。曲がりやすいように2本の切れ込みを入れた特許取得のフレキシブル製法のソールは、滑りにくさに加えてデザイン性を盛り込んだオリジナルの桜ブロックパターン。


POINT3 極上のフィット感&柔軟性
紐ブーツは紐ほどけを防ぐために着用後はサイドファスナーカバーに紐を挟める作り。操作時に屈曲しやすいよう、かかと側は足首部位だけ補強の革を途切れさせ、前面は鳩目の間の革部分に切り込みを入れる細やかな配慮がなされている。


人生の目標を見失ってしまい、靴をつくる人生が始まった
──藤林さんはWILD WINGの商品開発者であり、株式会社ウィングローブの代表取締役ですが、もともとは地方選手権でタイトルを何度も獲得して、全日本ロードレース選手権にも参戦していたレーサーだったと伺いました。
「そうですね。当時の僕はもう本当に真剣に、何をしていてもバイクレースのことしか頭にないような状態でレースに熱中していました。命がけと言っていいほど夢中でしたが、夢破れてやめることになり、それまでバイクレースで世界を目指すことしか頭になかったので、この先何をして生きればいいのかわからなくなってしまいました」
「いわゆる燃えつき症候群ですが、たまたま、父親が靴メーカーを営んでいて、働かせてもらうことになり、まずは靴について勉強を始めました。靴業界に入ったのは28歳の時ですが、その歳で初めての社会人経験だったんですよ。途中、社長の息子という目で見られたくないと、ファッションアパレル系のメーカーで靴づくりの修行をしたり、それからまた親父の会社に入社したりと紆余曲折を経て、2011年にウィングローブを設立しました」
──二輪レースから靴製造業へ、全く異なる世界への転身に戸惑いを感じることはありましたか?
「まず30歳手前で初めて社会に出ることが、最初はやっぱり怖かったんです。同じ年齢の社会人はすでに10年選手で、自分は遅れを取っていると思っていたのですが、実際に社会に出るとそんなことはなくて。逆に自分の方がちょっと気違いが得意だったり、レースで勝つために必死にマシンや走りを追求していた探究心が靴づくりにも役立って、自分の仕事に集中していたら自然と結果につながることがよくありました」
「バイクには、乗り始めると社交性や積極性が身につき、人との絆を深める不思議な魅力があると思うのですが、レース活動はさらにすごくお金がかかるので、マネジメント能力とか、助けてくれる人を自分の周囲に惹きつける力が必要なんですね。それって仕事なら会社の社長に求められるような能力ですけど、全日本のスーパーバイククラスとなると、その能力がある選手じゃないと絶対に上にはいけない。その意味では、自分の魅力をどう人に伝えて、いかに応援したいとか、この選手に時間やお金を投資したいと思ってもらえるプレゼン力を、僕はレースの世界ですごく学びました」
「それにバイクレースは、精神的な部分がすごく大きく結果を左右するんですよ。勝つためには精神を強く持って、自分の限界ギリギリの状態をずっとキープし続けなくてはいけなかったり、精神力を鍛えられる面がかなりある。実際、社会に出てみたら自分がレースに熱中していた経験や、そこから得た精神力が大きな武器になりましたし、結果、自分の会社を立ち上げるきっかけにもなったと思います」
