Z1系という“街道最強”のエンジンを武器に、町工場がワークスに真っ向からケンカを売った。それがモリワキ・モンスターだ。1981年のデイトナ、そして鈴鹿8耐予選でワイン・ガードナーが見せた“伝説の一周”は、数字以上に、人とマシンと作り手の情熱が生んだドラマとして今も語り継がれている。
文:沼尾宏明、オートバイ編集部 協力:バイカーズステーション(遊風社)
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モリワキ「Zレーサー」解説

モリワキのレーサーで一躍スターダムに躍り出たワイン・ガードナーがマシンとともに。

ガードナーとZ1000が巻き起こした大旋風

1981年、デイトナ参戦後にイギリスへ渡り、ワイン・ガードナーによって"第2のクロスビー旋風"を巻き起こしたのが、モリワキZ1000スーパーバイクだ。外観はZ1-Rの燃料タンクにZ1000Mk-IIのシートカウルを組み合わせたもの。

初出場のデイトナ・スーパーバイクで4位に入ったガードナーは、その勢いのままイギリスに上陸。MCN選手権第1戦カドウェルパークのスーパーバイクレースでは、150PSを発生する1105ccエンジンを搭載したマシンで、当時4サイクル使いのナンバー1といわれていたクロスビーを抑えて優勝(1ヒート:1位、2ヒート:2位)を飾った。

さらにドニントンパークでの第2戦では、バリー・シーンのYZR500と激しいバトルを展開するなど、クロスビー同様、モリワキのマシンで一躍スターダムに躍り出たのである。

ゼッケン#30は、バリー・シーンと争った際にも装着していたもの。STDのダブルクレードルフレームは、ステアリングヘッドまわりをはじめ各部に改良が加えられ、前後サスペンションにはカヤバ製スペシャルユニットが採用されていた。

モリワキ「Z1000」(1981)解説

画像: モリワキ・カヤバのΦ36mmフォークにロッキード2ポット+Φ295mmディスク、リアはΦ230mmディスクとフローティングキャリパーを装着。

モリワキ・カヤバのΦ36mmフォークにロッキード2ポット+Φ295mmディスク、リアはΦ230mmディスクとフローティングキャリパーを装着。

モリワキZ1000Mk-II系ベースの伝説マシン

モリワキZ1000Mk-II系ベースの空冷2バルブエンジンは、Φ73mmピストン仕様で1105cc・約150PSを発揮。Φ31mmケイヒンCRキャブとモリワキ4in1排気を装備する。アルミ製ハンガーは防振構造で、クロスミッションやTZ750用フォークブラケットを採用。モリワキ・カヤバフォーク、ロッキードブレーキ、ビート製マグホイールを装着。デイトナ仕様でガードナーが4位完走を果たした伝説のマシンである。

画像: モリワキ「Z1000」(1981)解説
画像: 角形カムカバーを持つ空冷2バルブはZ1000 Mk-II系がベースで、デイトナではΦ69.4mmピストンの998.6cc仕様、英国選手権ではΦ73mmピストンの1104.9cc仕様も多用され、写真のエンジンも1105cc仕様と考えられる。

角形カムカバーを持つ空冷2バルブはZ1000 Mk-II系がベースで、デイトナではΦ69.4mmピストンの998.6cc仕様、英国選手権ではΦ73mmピストンの1104.9cc仕様も多用され、写真のエンジンも1105cc仕様と考えられる。

モリワキ「MONSTER」(1981)解説

画像: TT-F1用マシンとして初めてアルミフレームを採用したのが、このロジャー・マーシャル車だった。

TT-F1用マシンとして初めてアルミフレームを採用したのが、このロジャー・マーシャル車だった。

革命のアルミフレームマシン誕生

1980年晩秋、モリワキはクロモリ製からアルミ角パイプ製へと一新した画期的なTT-F1用「ニュー・モンスター」を発表。アルミ製エキゾーストまで備え、従来比で約20kgの軽量化を実現した。1981年3月のデイトナでロジャー・マーシャルと新人ワイン・ガードナーが駆り、マーシャルが13位で完走。

その後モリワキUKの要請で再び英国遠征を実施。TT-F1やスーパーバイクなど各レースでR.ハスラム、B.シーン、G.クロスビーらワークス勢と互角に競り合い、特にガードナーが健闘して“第2のクロスビー”と称され、再びモリワキ旋風を巻き起こした。

画像1: モリワキ「MONSTER」(1981)解説
画像: Z1系空冷2バルブ998.6ccエンジン(69.4×66mm)はF1仕様で145PS/10500rpmを発揮。ST-4カム、大径バルブ、CRΦ29、7段オイルクーラー装備。

Z1系空冷2バルブ998.6ccエンジン(69.4×66mm)はF1仕様で145PS/10500rpmを発揮。ST-4カム、大径バルブ、CRΦ29、7段オイルクーラー装備。


モリワキ「MONSTER」(1981)

画像2: モリワキ「MONSTER」(1981)解説

伝説となったモリワキ・モンスターの輝き

1981年の鈴鹿8耐予選。ガードナーがモリワキ・モンスターで叩き出した2分14秒76は、前年のポールタイムを約3秒も更新し、ワークス勢を唖然とさせた。アルミフレームにZエンジンを積んだコンパクトな車体は、実測166kg。理想を極めた走る“結晶”だった。

ピットでは森脇護さんらスタッフが涙したという。その情熱、理想、そして闘志―。夢を信じ、世界へ挑み続けた6年間の魂は、今もモリワキの名とともに輝き続けている。

モリワキ「Z1000」「MONSTER」写真

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