アプリリアがスプリントでワンツーフィニッシュ
天候が荒れるかもしれないという予報もあり、日程変更の可能性もあった今大会。しかし、決勝レースを当初の予定より1時間遅らせるという判断により、スプリントレースは通常通り土曜日におこなわれた。
ポールポジションはファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)。2番グリッドにベッツェッキ、3番グリッドには母国凱旋となるジャック・ミラー(Prima Pramac Yamaha MotoGP)が並んだ。
気温14度、路面温度29度のドライコンディションのなか、13周のスプリントレースがスタート。6番グリッドスタートのアレックス・マルケス(BK8 Gresini Racing MotoGP)が好スタートを切りトップに浮上する。しかし、好調のフェルナンデスとベッツェッキが続くコーナーでアレックス・マルケスを抜き去った。
先頭のフェルナンデスのペースが良く、ついていけるのはベッツェッキのみ。優勝争いは早くもアプリリアの2台に絞られた。
バトルはないものの、接近したまま走行するフェルナンデスとベッツェッキ。緊張感が高まるトップ争いだったが、ベッツェッキがターン10のブレーキングでミスを犯し、両者の差は1秒に拡がることになった。
スプリント初制覇が近づくフェルナンデスだったが、さらにペースを上げたベッツェッキが猛追しレース終盤には再びフェルナンデスの背後に迫る。

フェルナンデスの背後に迫るベッツェッキ。
そして残り4周となったところで、ベッツェッキがフェルナンデスをオーバーテイクし、トップに浮上。両者の差はすぐに1秒差となり、ベッツェッキがファクトリーライダーとしての意地を見せた。
最終的に3秒もの十分なマージンを築いたベッツェッキがスプリント優勝。2位にはフェルナンデスが入りアプリリアがワンツーフィニッシュを達成した。
アプリリアの同門対決の後ろでおこなわれた3位争いは、アレックス・マルケスを攻略したペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)、ミラー、ファビオ・ディ・ジャナントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)の3名で競われた。地元で表彰台を獲得したいミラーが最後の最後までアタックするも、ミラーの猛攻を防ぎ切ったアコスタが3位表彰台を獲得している。

復帰戦となった小椋藍(Trackhouse MotoGP Team)は、16位でのフィニッシュ。ポイント獲得とはならなかった。
フェルナンデスが最高峰クラス初優勝!
前述のとおり、1時間後ろ倒しの現地時間15時からおこなわれた日曜日の決勝レース。雲が広がり、風は強いも許容範囲で雨は降っておらず、気温、路面温度ともに21度のドライコンディションとなった。
予選グリッドはスプリントと同じで、決勝もベッツェッキとフェルナンデスが優勝候補。しかし、ベッツェッキは前戦インドネシアGPのクラッシュの責任を問われ、ダブルロングラップペナルティが科されている。
27周の決勝レースがスタートすると、ベッツェッキが好スタートでトップに浮上し、フェルナンデス、アコスタの順番で続く。

スタートで出遅れることが多かったベッツェッキだが、今大会の決勝レースではホールショットを奪った。
ポールシッターのクアルタラロは4番手に後退。そして早くもトップ3に差をつけられ、ミラー、アレックス・マルケス、そしてマーベリック・ビニャーレスの代役として参戦しているポル・エスパルガロ(Red Bull KTM Tech3)らが背後に迫る。
ベッツェッキはダブルロングラップペナルティを消化せねばならないため、序盤からハイペースで走行。フェルナンデスとアコスタのバトルもあり、3周目には早くも1秒以上のギャップを築くことになる。
その後もトップを快走したベッツェッキは、5周目に1度目のロングラップペナルティを消化し、3番手に後退。さらに2周後に残りも消化したベッツェッキは、6番手で戦列に復帰した。
ベッツェッキに代わってトップに立ったのは、アコスタとのバトルを制したフェルナンデス。トップに立ってからもハイペースを維持し、最高峰クラス初優勝に向けてひた走る。
その後方ではアコスタに3番手に上がったアレックス・マルケスが迫ってきた。中盤に差しかかった16周目、アレックス・マルケスがターン4でアコスタをパスし2番手に浮上。ランキング2位確定のためトップを目指したいアレックス・マルケスだったが、フェルナンデスはすでに3秒ものマージンを築いていた。
そんなアレックス・マルケスに迫ったのが、アコスタではなくディ・ジャナントニオ。残り8周でアコスタをオーバーテイクすると、残り4周でアレックス・マルケスをも抜き去り2番手に浮上した。
タイヤを使い切ってしまったのか、ペースが上がらないアレックス・マルケスに4番手までポジションを上げたベッツェッキが急接近。ダブルロングラップペナルティを消化したにもかかわらず、ベッツェッキが残り2周でアレックス・マルケスを抜き表彰台圏内に戻ってきた。
トップのフェルナンデスはリスクを犯すことなく、築き上げてきたギャップを使いながら走行。最終的に2番手に1.4秒差をつけたフェルナンデスがMotoGPクラス初優勝を達成した。
2位にディ・ジャナントニオ、そして3位にはベッツェッキが入り、スプリント・決勝ともにアプリリアの2台が表彰台を獲得して見せた。ベッツェッキはスプリントで優勝、決勝で3位に入り、フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)がノーポイントに終わったため、ランキング3位に浮上した。
小椋はポジションを3つ上げて13位でフィニッシュ。復帰戦としては厳しいトラックでのレースながら、なんとか入賞しポイントを持ち帰っている。
次戦は10月24日から26日にかけておこなわる第20戦マレーシアGP。熱帯のインドネシア、春のオーストラリアを経て、再び熱帯のマレーシアに移動するため、ライダーにとって厳しい1戦となる。
チャンピオンが決定した今シーズンだが、マルク・マルケスの欠場により、これまでとはまた違った様相を見せているMotoGP。フィリップ・アイランドとは特性の違うセパン・インターナショナル・サーキットではどんなレースとなるのか注目だ。
2025 MotoGP第19戦オーストラリアGP決勝結果


レポート:河村大志