1980年代はレースブームと連動し、アルミフレームやGPレーサー由来のエンジンなどを搭載した250ccから500ccまでの高性能な2ストマシンが市場を席巻した。まさに日本バイク史における黄金期と呼ぶにふさわしい時代だった。
文:太田安治、オートバイ編集部
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2ストが最も輝いた1980年代

画像: 左上から時計回りにカワサキ「KR250」(1984年)、スズキ「RG250Γ」(1983年)、ホンダ「NSR250R」(1990年)、ヤマハ「TZR250R」(1991年)

左上から時計回りにカワサキ「KR250」(1984年)、スズキ「RG250Γ」(1983年)、ホンダ「NSR250R」(1990年)、ヤマハ「TZR250R」(1991年)

2ストレプリカ戦国時代の幕開け

独り勝ち状態のRZに対抗して1982年、ホンダが4ストVツインのVT250Fを投入。アンチ2スト派を中心に人気を集めてセールス面では大成功を収めるが、絶対性能的には一歩及ばず、結果ホンダも2ストモデルの開発に着手することになる。

1983年1月、まずヤマハがRZをブラッシュアップしたRZ250Rを投入。翌2月にホンダがGPレーサーNS500のノウハウを活かした2ストV型3気筒のMVX250Fを発売。3月にはスズキがアルミフレームを採用したRG250Γをリリースする。

画像: 2ストが最も輝いた1980年代

1984年にはカワサキがかつてのGPレーサー譲りの縦置き2気筒エンジンをアルミフレームに搭載したKR250を、MVX250Fが不調に終わったホンダはアルミフレームにV型2気筒エンジンを搭載したNS250Rで巻き返しを図る。この3、4年に巻き起こった各メーカーのなりふり構わぬ主導権争いは、1980年代のバイクブームを象徴するシーンと言っていいだろう。

この1984年から全日本ロードレース選手権で、2スト250、4スト400の市販車ベースマシンで争われるTT-F3クラスが始まり、鈴鹿4時間耐久レースを頂点とする各地のアマチュアレースも参加台数が急増。

そこでの活躍が販売台数に少なからず影響したことから、各メーカーのニューモデル開発はさらに加速。1985年11月にはヤマハが市販レーサーTZ250と共同開発したアルミデルタボックスフレーム採用のTZR250を投入し、1986年のアマチュアレースシーンを席巻。サーキットで初めて4スト400ccを打ち負かした2スト250ccモデルとして大人気となった。

画像: TZR250R(1985年)

TZR250R(1985年)

それに対抗してホンダも市販レーサーRS250Rと同時開発したNSR250Rを1986年10月に発売。1988年にはスズキがVツインエンジンのRGV250Γを、カワサキが前傾60度並列2気筒エンジンのKR-1を投入する。1980年代後半から国内販売台数が下降傾向に入り、ロードレースブームが沈静化し始める中でも、2ストロークマシンの開発競争は依然として続いていた。

また、ロードレース人気が盛り上がる中で、2ストロークブームは250ccを超えるクラスにも波及し、1984年にはヤマハがGPレーサーと同じ排気量を持つRZV500Rを発売した。当時は今よりも高性能マシンに対する風当たりが強かったが、輸出仕様より最高出力が落とされているとはいえ、2ストロークの500ccマシンを国内で市販したことには大いに驚かされた。

それが踏み台となったのか、翌1985年にはスズキがGPレーサー譲りのスクエア4エンジンを搭載したRG500/400Γを投入。ホンダも90度V型3気筒エンジンを積んだNS400Rをリリースした。

まだ大型二輪免許が教習所で取得できなかった当時、誰もが乗れるわけではない500ccならば理解できるが、中型免許枠の2ストロークビッグマシンまで登場したことに、当時の国内の二輪マーケットの勢いを感じる。

その後、2ストロークモデルは1990年代半ばまで開発が続けられたが、レースブームの終焉と排出ガス規制の影響で姿を消していった。こうして振り返ると、1980年代はありとあらゆる技術を駆使して可能性を追い求めた、2ストロークモデルにとっては最高の10年間であり、最後の10年間だったと言えるだろう。

逃げるNSR、追うTZR 終わることのない、永遠のライバル

画像1: 昭和の時代を駆け抜けた究極のレーサーレプリカたち|NSRの永遠のライバル・ヤマハ TZR250を紹介【80年2スト黄金時代/後編】

ホンダNSRとヤマハTZRは、1980〜90年代の2ストローク250ccバイク市場で激しいライバル関係を築いた。NSRは圧倒的なパフォーマンスと革新技術で先行し、TZRもそれを猛追した。

両者はサーキットや公道で互いに切磋琢磨し、常に進化を続けることでファンを魅了し続け、逃げるNSR、追うTZRという構図は、時代を超えて語り継がれる永遠のライバルストーリーとなっている。

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