ホンダを代表するオートバイの1台、当時登場したレーサーレプリカの中でも代表格としても挙げられるホンダ NSR250R。その性能は他を凌駕するものがあり、当時はもちろん、今もなお多くのファンを持つ。この記事では、ついに最終型となったMC28型の各部装備やスペックを紹介する。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING

ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)特徴

画像: Honda NSR250R(MC28) 1993年 総排気量:249cc エンジン形式:水冷スト・クランクケースリードバルブV型2気筒 総排気量 249㏄ シート高:770mm 車両重量:153kg 当時価格:68万円

Honda
NSR250R(MC28)
1993年

総排気量:249cc
エンジン形式:水冷スト・クランクケースリードバルブV型2気筒
総排気量 249㏄
シート高:770mm
車両重量:153kg

当時価格:68万円

最先端テクノロジーを惜しみなく投入し扱いやすく進化

1991年に入って、ヤマハが並列2気筒の後方排気モデルからVツインエンジンに変更されたTZR250Rを投入することとなり、再び全国各地のサーキットで、そしてワインディングロードでNSRとの覇権争いが繰り広げられるかに思われた。

しかし、1990年代に入るとロードレースブームが沈静化し始め、市販車ベースのトップカテゴリーレースとして人気を集めたTT-F3クラスは1991年を最後に、TT-F1クラスも1993年を最後にシリーズ戦を終了。それにともなってレーサーレプリカモデルの販売も急速に落ち込んでいった。

1993年11月、型式的には四代目、モデル的には五代目となるNSR250R(MC28)が登場。メインスイッチには複合電子機能を持たせ、盗難抑止にも効果を発揮する量産車で世界初となるPGMメモリーカードシステムを採用。

通常の鍵ではなく、マッチ箱を薄くしたようなPGMメモリーカードを差し込んで車体側のシリアルナンバーとの適合を検知し電源を入れ、内蔵ハンドルロックを解除。車体は排気レイアウトの自由度や整備性の向上にも貢献する片持ちのスイングアーム、プロアームを採用。

NSRの評価を高めて来たPGMシステムも、エンジン回転数とアクセル開度に加え、アクセルの操作速度、減速比まで検知項目に加えて空燃比と点火時期、RCバルブ開度、オイル吐出量を制御するPGM-IVへと進化。レーサーに転用する際には、廃車証と引き換えにHRCでメモリーカードのプログラミングを書き換えてもらう方式を導入。HRCカード+レース用キットパーツの装着で最高出力は70PS以上をマークした。

エンジン特性、ハンドリングともに潜在的なポテンシャルを高めながらより扱いやすく進化していたが、前述のような市場状況からかつてのようなビッグセールスにはつながらなかったのが残念なところ。セールスの中心が次第にレース志向ユーザーに偏向していき1996年1月に登場したSPモデルの登場を最後に生産終了となった。

画像1: ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)解説|プロアームとカードキーを採用してテクノロジーを進化させた“ラストNSR”
画像2: ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)解説|プロアームとカードキーを採用してテクノロジーを進化させた“ラストNSR”

カードキー、プロアームだけではなく外観から細部まで全身をバージョンアップ

PGMシステムの進化で電子制御化も進められ、1993年11月に登場したMC28では、量産市販車として世界初となるPGMメモリーカードシステムを採用。エンジンは従来のPGM-IIIからIVに進化、コンピュータ容量も8→16ビットに高め制御をより細かく行えるようにした。キャブレターもTAから新設計のTB(ニュースラント)型とし、中低速回転重視チャンバーに組み合わせた。

車体側ではリアに片持ちのプロアームを新採用。ホイールもサイズはそのままながらスイングアームの形状変更に合わせてセンターロック式の八本スポークとなった。構造はシンプルで両持ち式用ホイールより大幅に軽量な特徴も持つ。

ホイールを外すと見えるリアブレーキは構造を新たにしており、キャリパーは従来と同様に片押し式だがピストンを1個から2個に増加。小型のサポートを使って重量を軽減している。ディスク径はMC21と共通のΦ220mmだが、Φ8.0mmの肉抜き孔の数を40個から18個に減らしている。

フロントは大排気量車にも使われる新サイズの異径4ピストンキャリパーを採用。高性能な大排気量スポーツ車と同じ製品で、フロントフォーク側の大きなピストンはΦ30mmのままだが、下側の小さなピストンはΦ25.4→27mmに大径化。カートリッジフォークのボトムケース変更はこのためでもあった。

フローティングディスクの外径はΦ276mmから変わらないが、肉抜き孔をΦ6.3mm×150個からΦ8.0mm×50個に変更。ブレーキホースの一部に鋼管配管を使用しており、制動力は前後トータルでMC21に比べて28%向上。

外観、サイド/アンダーカウルの開口部などはMC21と共通。燃料タンクは全長が短縮されたが容量は16Lをキープ。シートは形状を変え、ライダー用のストッパーがなくなるが、MC21と同じくキーで後部プレートを外し収納スペースを利用できるようにしていた。

レーサーにないものを新しいNSR250Rに付けたくないとの考えから、メーターには指針式の速度計はなし。新たに用意された液晶画面に速度やオド/トリップ、水温、ギアポジションなどを表示するようになっていた。

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