ホンダを代表するオートバイの1台、当時登場したレーサーレプリカの中でも代表格としても挙げられるホンダ NSR250R。その性能は他を凌駕するものがあり、当時はもちろん、今もなお多くのファンを持つ。この記事では、ついに最終型となったMC28型の各部装備やスペックを紹介する。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING

ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)各部装備・ディテール解説

▶エンジン

画像1: ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)各部装備・ディテール解説

改良を重ねてきたエンジンとより性能を高めた吸排気

NSR250Rのエンジンは一貫してMC16Eの形式。上の写真は乾式クラッチを装備しているSEのもの。その他外観も大きく変わらないが、MC28では多くの部分に手が入っている。

RCバルブは可変バルブの形状を変更、作動角度を24°35′から27°26′に増すことで、応答性をより高めた。

カセット式6段ミッションの変速比は①2.846 ②2.000 ③1.578をそのままに、④1.333→1.300 ⑤1.190→1.130 ⑥1.083→1.000と変更。1/2次減速比も2.360/2.666→2.500/2.933に変更している。またミッションのドッグ形状を見直す、シフトドラムセンターのカム形状を変更するなどで、シフト操作時の感覚と作動の確実性を高めた。

画像: MC21(左)とMC28(右)のシリンダー

MC21(左)とMC28(右)のシリンダー

MC21(左)とMC28(右)のシリンダーは、ともに2個の排気ポート上部がRCバルブによってふさがれている。

ポート形状の基本は共通だが、RCバルブの作動角度を前述のように大きくした結果、バルブが上がり切った時の開口面積が広くなった。PGM-IVで制御され、従来モデルよりもより細密に駆動される。

画像2: ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)各部装備・ディテール解説

キャブレターはトンネル状メインボアでΦ32mm相当のTA型から、真円Φ32mmボアのTB型に変更。また、TA型ではスラントしたメインボアに角度をつけてフラットのスライドバルブを配置、装着時にバルブが地面に対し垂直に立つようにするが、TB型ではメインボアに対してバルブが垂直となる一般的な配置に変更。

その結果、キャブ本体のサイズが小さくなり(全長-12.5mm、全高-29mm、全幅-20mm)軽くなった。

エンジンとキャブを連結するインテークマニホールドも短縮され、キャブがリードバルブに接近したため吸気抵抗が低減されて吸入効率が向上。

またキャブ本体の性能向上で、マニホールド上部のチャンバー室も廃されたスロットルレスポンスとパワー感が大幅に向上したという。

画像: 上の写真はエンジンの排気ポートに接続される部分。排気チャンバーに対して入り口部分の内径が大きく絞られていることが分かる。当時の自主規制値40PSという数値を満たす最高出力の抑制はこの部分で行われているということ。つまり、排気系(チャンバー)を換装すれば50PS強と言われる本来の性能が引き出せるということになる。

上の写真はエンジンの排気ポートに接続される部分。排気チャンバーに対して入り口部分の内径が大きく絞られていることが分かる。当時の自主規制値40PSという数値を満たす最高出力の抑制はこの部分で行われているということ。つまり、排気系(チャンバー)を換装すれば50PS強と言われる本来の性能が引き出せるということになる。

画像: チャンバーを縦に切った状態で、左が前側。テールパイプ接続部の前側を2重構造としてレゾネーターを配置、排気音を低減するという構造はこれまでと同じ。MC28ではさらにチャンバーを大径化しており、消音効果を高めている。

チャンバーを縦に切った状態で、左が前側。テールパイプ接続部の前側を2重構造としてレゾネーターを配置、排気音を低減するという構造はこれまでと同じ。MC28ではさらにチャンバーを大径化しており、消音効果を高めている。

画像: サイレンサーの内部を見せたカットモデルで、隔壁によって3室構造とするのはMC21のサイレンサーと同じだが、サイレンサー本体を大型化することで容量を増大、ここでも排気音を低減していた。

サイレンサーの内部を見せたカットモデルで、隔壁によって3室構造とするのはMC21のサイレンサーと同じだが、サイレンサー本体を大型化することで容量を増大、ここでも排気音を低減していた。


▶フレーム

ツインチューブフレームはMC21を踏襲しスイングアームは片持ちタイプへと変化

変則五角形の目の字断面アルミツインチューブフレームはMC21から基本を受け継ぐが、スイングアームピボットを大径化して剛性を向上。

スイングアームを片持ち式のプロアームに変更、外観の大きな特徴でもある。横×縦はMC21と同じ25×100mmを採用。湾曲したメインレールに日の字断面材を使用(下の図参照)し、従来の両持ち式比で横剛性は81%、ねじれ剛性は49%、全体で63%高剛性化した。ワークスNSR直系の技術である。

画像3: ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)各部装備・ディテール解説

ほかにフレームまわりではシートレールはMC16からボルト留めタイプを継承、上を丸パイプ、下を角パイプとする構成はMC21と同じ。歴代モデルに比べてタンデムステップとサイレンサーを支持するステーはしっかりしたものへと変化し、タンデムステップもアルミの一般的な部品に換装された。

キャスターは23°15から23°へとわずかに立てられ、トレールは87mmから85mmと2mm小さくなった。これらは直進安定性を確保しながら、コーナリング性を向上させるためだった。スイングアームピボットシャフトΦ15mmからΦ20mm太くされ、ピボット位置を6mm下にした。

画像4: ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)各部装備・ディテール解説

全長×全幅×全高はそれぞれ1970×650×1045mmで、MC21比で全長/全幅は5mmずつ小さく、15mm低い。1340mmのホイールベースや770mmのシート高は変わらず。乾燥重量は+2kgの134kg(SEは138kg)に変化している。


▶そのほか注目の装備

画像: カウル前面のスラントを強め、スクリーンもコンパクト化してスパルタンなイメージを強調。ナックルガード部にはエアインテークスリットも新設された。ヘッドライトユニットはMC21型の横長の二灯式のままとなっていた。

カウル前面のスラントを強め、スクリーンもコンパクト化してスパルタンなイメージを強調。ナックルガード部にはエアインテークスリットも新設された。ヘッドライトユニットはMC21型の横長の二灯式のままとなっていた。

画像: 上下高を高く設定したMC21型壌りの「目」の字構造の異形五角断面アルミツインチューブフレームは、プロアームの採用に合わせて各部の剛性バランスを最適化。

上下高を高く設定したMC21型壌りの「目」の字構造の異形五角断面アルミツインチューブフレームは、プロアームの採用に合わせて各部の剛性バランスを最適化。

画像: 世界初のメモリーカード式イグニッション用。デジタルメーター裏のスロットに差し込むことでシリアルナンバーが照合され、主電源やECUが起動した。

世界初のメモリーカード式イグニッション用。デジタルメーター裏のスロットに差し込むことでシリアルナンバーが照合され、主電源やECUが起動した。

画像: 内部に仕切り板を入れた「日」の字断面構造とすることで、十分な横剛性とねじれ剛性を確保。エンド部のエキセントリックカラーを回転させることで、チェーン張り調整が素早く正確に行えるのも利点。

内部に仕切り板を入れた「日」の字断面構造とすることで、十分な横剛性とねじれ剛性を確保。エンド部のエキセントリックカラーを回転させることで、チェーン張り調整が素早く正確に行えるのも利点。

画像: チェーンラインの関係から、ワークスNSR250や市販レーサーRS250Rとは逆の左支持式プロアームを採用。高剛性化、急制動時の安定性向上、チャンバー設計の自由度、ホイール着脱の簡便化といったメリットがあった。

チェーンラインの関係から、ワークスNSR250や市販レーサーRS250Rとは逆の左支持式プロアームを採用。高剛性化、急制動時の安定性向上、チャンバー設計の自由度、ホイール着脱の簡便化といったメリットがあった。

画像: MC21と比較してタンク全長が25mm短くなり、シートの幅を広げ前傾斜も弱めたことにより、着座位置の自由度が増したシート。ステップも前方に10mm、下方に5mm移動してライディングポジションが楽になった。

MC21と比較してタンク全長が25mm短くなり、シートの幅を広げ前傾斜も弱めたことにより、着座位置の自由度が増したシート。ステップも前方に10mm、下方に5mm移動してライディングポジションが楽になった。

ホンダ「NSR250R」(MC28・1993年)の主なスペック・販売当時価格

全長×全幅×全高1970×650×1045mm
ホイールベース1340mm
シート高770mm
車両重量153kg
エンジン形式水冷2ストローク・ケースリードバルブ90度V型2気筒
総排気量249cc
ボア×ストローク54.0×54.5mm
圧縮比7.4
最高出力40PS/9000rpm
最大トルク3.3kgf・m/8500rpm
キャスター角23°00′
トレール量85mm
燃料タンク容量16L
変速機形式6速リターン
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ(前・後)110/70-17・150/60-R17
乗車定員2人
販売当時価格(1993年)68万円

文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING

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