夏休み中に嬉しいニュースが続々!
約1ヶ月のサマーブレイクを挟んで開幕したオーストリアGP。ライダーやチームにとっては貴重なリフレッシュ期間であり、ファンにとっては少し寂しい期間といえるだろう。しかし、8月1日から3日にかけて鈴鹿サーキットで行われた鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、ヨハン・ザルコやジャック・ミラーといった現役のGPライダーが参戦。世界トップレベルの速さをみせてくれたこともあり、熱い暑いレースは大盛況となった。
サマーブレイク中に我々日本人にとってうれしいニュースが続いた。7月23日、ドルナスポーツは、モビリティリゾートもてぎで2030年まで日本GPを開催すると発表。これまで開催が決まっていた2026年からさらに5年間の継続開催が決定した。
そんな日本GPも開催まであと1ヶ月と迫る中、9月24日に東京新宿の歌舞伎町シネシティ広場で『MotoGP in Tokyo』が開催される。このプレイベントは総勢15名の現役ライダーが登壇するアピアランスステージや、レッドカーペットが敷かれた「歌舞伎町ヒーローウォーク」、グランプリマシン展示などを実施予定だ。
また、8月7日に文部科学省は、東京都内にて『令和7年度スポーツ功労者顕彰及び国際競技大会優秀者等表彰等に係る文部科学大臣顕彰及び表彰式』を開催。昨年、Moto2クラスで年間王者に輝いた小椋藍(Trackhouse MotoGP Team)がスポーツ功労者として顕彰され、スポーツ庁の室伏広治長官から顕彰状が贈呈された。

スポーツ功労者として顕彰された小椋藍。
www.motogp.comこのスポーツ功労者顕彰とは、世界的規模のスポーツの競技会において優れた成果を挙げる、また、多年にわたりスポーツの向上発展に貢献することにより、日本のスポーツの振興に貢献した方々に文部科学省が顕彰するもの。
過去には小椋は同じく中量級で世界チャンピオンに輝いた加藤大治郎氏、青山博一氏が受賞しており、同チャンピオンシップからの受賞は15年ぶりとなった。
マルク・マルケスが幸先よくスプリントレースを制す
スプリント前に行われた予選ではマルコ・ベッツェッキ(Aprilia Racing)が2年ぶり、そしてアプリリアに移籍して初となるポールポジションを獲得。2番手にアレックス・マルケス(BK8 Gresini Racing MotoGP)、3番手にフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)となった。
ポイントリーダーのマルク・マルケスは予選で転倒があり4番グリッド。小椋は19番手から巻き返しを図る。
気温29度、路面温度43度のドライコンディションのなか、14周のスプリントレースがスタート。3番グリッドのバニャイアと6番グリッドのフェルミン・アルデゲル(BK8 Gresini Racing MotoGP)がローンチの不具合かミスなのか、うまくスタートを決めることができず後退してしまう。

スタートに失敗したバニャイアは一気に後方へ。
ホールショットを奪ったのはアレックス・マルケスで、マルク・マルケスが続く。ベッツェッキは3番手に後退し、2周目には7番グリッドスタートから一気にポジションをあげたペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)にも抜かれ4番手になってしまった。
トップ争いは早くもマルケス兄弟とアコスタに絞られ、序盤は順位の変動なく、0.5秒ほどの等間隔で周回を重ねていく。
チームのお膝元でなんとか勝ちたいアコスタだったが、中盤に差し掛かるとマルケス兄弟から徐々に遅れ始める。今回もマルケス兄弟による一騎打ちとなった優勝争い。
どちらかといえば抜くタイミングをうかがっていたマルク・マルケスが、10周目に弟を抜きトップに浮上。前に出てからは自身のペースで周回し、2位以下との差を開いていった。
最終的に2位に対して1秒差をつけたマルク・マルケスがスプリント優勝。決勝に向けて順調な滑り出しとなった。2位にアレックス・マルケス、3位にはアコスタが入った。

マルケス兄弟に続いたのはチームの地元で躍動したアコスタ。
スタートで出遅れたバニャイアはレースでも苦戦。タイヤにトラブルが発生し、9周目にはピットインしてリタイアとなっている。
小椋は入賞とはならなかったが4つポジションをあげ15位でフィニッシュしている。
マルク・マルケスがついにレッドブルリンクで初優勝!
迎えた決勝日は土曜日と同じく雲が多いものの晴れ。グリッド順はスプリント同様にベッツェッキ、アレックス・マルケス、バニャイア、そしてマルク・マルケスの順となっている。
気温24度、路面温度32度のドライコンディションのなか、28周の決勝レースがスタート。決勝ではベッツェッキがホールショットを奪い、前日ローンチで後退したバニャイアが2番手、マルク・マルケスが3番手につける。

序盤はドゥカティワークスの2台が熾烈なバトルを展開。
スタート直後はドゥカティワークスの2台が激しくバトルを展開するが、ここはバニャイアが2番手を死守。その後ろではアレックス・マルケス、アコスタ、そしてエネア・バスティアニーニ(Red Bull KTM Tech3)が4番手をめぐるバトルを繰り広げていた。
トップのベッツェッキが逃げにかかる中、マルク・マルケスは2周目にバニャイアを攻略し2番手に浮上。一方、アレックス・マルケスが前戦チェコGPでジョアン・ミル(Honda HRC Castrol)を巻き込んだクラッシュにより科されたロングラップペナルティを4周目に消化し、11番手までポジションを下げている。
トップのベッツェッキと2番手に上がったマルク・マルケスの差は約0.7秒だが、お互いに動きはなし。この状態が中盤に入っても続いた。
折り返し時点となる14周目、ホルヘ・マルティン(アプリリア)がターン7で転倒。さらなるケガが心配されたが、事なきを得ている。
タイヤの内圧を意識してか、一時ベッツェッキとの距離を離していたマルク・マルケスだったが、18周目にペースを上げベッツェッキに迫る。そして翌19周目のターン3でベッツェッキに並びかけるとターン4でオーバーテイク。

序盤から先頭を走るベッツェッキに迫るマルク・マルケス。
しかしベッツェッキも負けてはいない。ターン5から6にかけてベッツェッキがマルク・マルケスを抜き返し再びトップへ。ただ余裕のあるマルク・マルケスは20周目のターン1で仕掛けトップに浮上。トップに躍り出たマルク・マルケスは一気にペースを上げ、ベッツェッキを引き離しにかかった。
後方に目を移すとバニャイアが今回も苦しんでいた。18周目にはアルデゲルにパスされるとその後もパスされ6番手に後退。一方、バニャイアをパスし、アコスタとのバトルも制し3番手に上がったアルデゲルのペースが良く、2番手のベッツェッキにも迫っていく。
そして残り5周のターン3でベッツェッキを捕らえ、ついに2番手に浮上した。初優勝が見えてきたアルデゲルはペースを緩めることなくマルク・マルケスを猛追していく。しかし余力があり、ペースをコントロールしていたマルク・マルケスはアルデゲルの接近を許さなかった。
ベッツェッキとのバトルを制したマルク・マルケスがトップチェッカー。ついにオーストリアで初優勝となった。アルデゲルは自己最高位を更新する2位、3位にはベッツェッキが入った。
アレックス・マルケスはロングラップペナルティが響き10位、バニャイアは最終的に8位に終わったため、ランキング首位のマルク・マルケスとのポイント差はさらに拡大。アレックス・マルケスが142ポイント、バニャイアが197ポイントのビハインドとなっている。
小椋はスプリント同様にポジションをあげ14位でフィニッシュ。入賞し、2ポイントを獲得している。
次戦は8月22日から24日にかけて行われるハンガリーGP。舞台は初開催となるバラトンパーク・サーキットだ。すでにスーパーバイク世界選手権が行われているが、走行したライダーたち曰く路面はかなりグリップするとのこと。
しかし、ターン1やターン2など狭く切り返しが連続するところでは多重クラッシュも発生しており、MotoGPでも注意が必要だろう。
初開催だけにあれる可能性も高いが、テクニカルなサーキットなだけに激しくもライダーの技が光るレースが展開されるのではないだろうか。シリーズの流れが変わる可能性もある次戦も目が離せない。
2025 MotoGP 第13戦オーストリアGP 決勝結果

オーストリアGPで初めて表彰台の中央に上がったマルク・マルケス。

レポート:河村大志