文:ノアセレン/写真:南 孝幸
Astemo 開発者インタビュー

(左から)櫻井辰佳氏/Astemo株式会社モーターサイクル事業部営業戦略本部本部長、鈴木克昌氏/Astemo株式会社コーポレートオフィサー モーターサイクル事業部グローバル設計統括本部 統括本部長、佐々木朋春氏/Astemo株式会社モーターサイクル事業部 グローバル設計統括本部副統括本部長
機能の細分化と小型化で幅広い車種に普及を目指す
3人のキーパーソンにAstemoが見据える未来の二輪を伺った。3人とも現役バイク乗りであり、ライダーとしての熱量も非常に高かった。
お話しをする上でどうしても頭が切り替わりにくいのは、こういった技術が「後付けのものであること」「プレミアムなカスタムパーツであること」といった潜在意識があるからだろう。
しかし、Astemoが行っているのはそういったピンポイントなものではなく、あくまで量産を前提としたものであり、よって性能も何かに特化というよりはいかに幅広いことができるかが重視される。
実際に試乗した感想は「非常に良くできた電子制御サス」だった。しかしこれらのサスは既に実用化されている。そんな中、Astemoのアピールを伺った。
「まずはフロントも高度な制御ができていることでしょう。ギヤポンプを使ってフロントフォークを制御するのは世界初の技術。リアだけではなくフロントにも減衰機能と車高調機能がついたことで、アクティブサスとしてもライドハイト機能としてもやれることが大幅に増えました」

フロントとリアが同時に車高調整されるのは、確かに異次元のライドフィールだった。あくまでスムーズに車体全体が上下するため「車高調感」がとても少ないのだ。そのスムーズさは既存モデルの同系システムを優に超えるものだった。
「そう言っていただけると嬉しいですね。これまではメーカーに言われたものを最高の状態で納めるといった姿勢でしたが、Astemoはそこから脱して、むしろメーカーに独自の提案をしていきたいと考えています。我々の技術や提案が車両にプラスされればAstemoの付加価値も高まるでしょう」
車両メーカーに対して「あらゆることが可能です」とアピールしても、最終的な味付けは車両メーカーが決定すること。しかし、今回のような高度な制御を最初に提案することができれば、それを超えてくるのはなかなか難しいだろう。Astemoの底力を見せられた想いだ。
もうひとつ、Gen2に進化してからは、機能の細分化を進めたことでより幅広い車種に対応できるということだ。コンセプトの中に「小型バイクや小排気量スクーターもターゲットとしている」とあるように、ECUの小型化、及びサス本体との一体化によってスペースに制約のあるバイクにも搭載しやすくなっている。

「減衰調整とライドハイト、これは切り離して考えるべき機能ですが、そのどちらかだけを搭載することもできます。それに加えてリアだけ、フロントだけ、減衰調整だけ、ライドハイトだけなど、車両メーカーには車両の性格に合わせて、あるいはコストに合わせて必要な機能を選んでいただけます」
小排気量に搭載されるようになれば出荷する数が飛躍的に増えることでコストをさらに下げることができる。これまでも広く量産をしてきたAstemoはピンポイントな機能だけでなく、そういった視点も重視して開発しているのが印象的だ。
非常に高度なことをしているにもかかわらず、「買える人だけが買えばいい」という姿勢ではなく、メーカーと協力していかに普及させていくかという目標を掲げているので、あらゆるライダーがいずれはこういった技術に触れることができるようになるだろう。
サス、ブレーキ、パワーユニットの制御にADASも加え開発と提案を続け、「電子制御ってそういうことですから」とさらりと出た言葉に、“未来を見据えるAstemo”を感じることができた。

表舞台へと躍り出たAstemo、電子制御の未来はすぐそこに!
文:ノアセレン/写真:南 孝幸